非モフモフの癖に一々可愛い件
僕ことエドワード・レインワーズは今日もモフモフを求めて友人のラインハルトの従魔の銀色狼のシルバーに顔を埋めていた。名前がド直球なのはご愛嬌って奴だ。
「あぁー、モフモフぅ……」
少しゴワついているが中々のモフリティだ。この毛並みに一流モフラーの太鼓判を進呈だ。
「エドワード、俺のシルバーに顔埋めるなって、お前が欲求不満なのは分かるけどさ」
ラインハルトは僕にモフモフを止めさせると今度は自分がモフモフし始めた。
何を隠そう、ラインハルトも僕と同じモフラーなのだ。と言うか、僕が布教してモフラーにした。
「それでエドワードの方はどうなんだ? その……なんとも言えない見た目のモンスターだけど」
「そう言えばあいつ最近あまり世話して無いな……」
最後に会ったのはかれこれ三日前だ。草葉をやや多めに与えて小屋に入れていたから多分大丈夫だろうがそれでも少し気になる。
「それはダメだって。従魔の育成放棄はモンスターテイマー失格だぞ」
「それもそうだよな。モフモフじゃ無いとは言え僕の従魔だもんな」
♪ ♪ ♪
放課後、僕はイモムシを放置している小屋にいた。
だが、その様は三日前とは大きく変わっていた。
「嘘だろ、あれだけ用意した餌がもうゼロ!? 大食漢にも程があるだろ!?」
そこには茎しか無かったのだ。
当のイモムシは俺が来た事で『ご主人〜お腹すいた〜!!』と目を輝かせている……ように見える。
字面だけ見れば可愛げがあるが、残念イモムシだ。
「取り敢えず辺りの雑草で良いんだったよな」
僕は仕方ないと辺り雑草を摘む。何だか酷く惨めな気分になる。
僕は清掃員のおじさんだった……?
「良し、これくらいで良いか」
非モフモフ、大食漢、緑色の吐瀉物。
……僕は一体何をやっているのだろうか。
僕はこんな惨めな気分になる為にモンスターテイマーを志望したのか?
僕はモフモフしたかっただけなんだ。
小屋に戻るとイモムシが『待ってましたぁ!』とばかりに超スピードで迫って来た。
……どんだけ餌が欲しいんだよ。
「キュイ! キュイ!」
「あー分かった分かったから。ちょっと落ち着いてくれよ……」
雑草を渡すと何かこう……雑草を脚で器用に合掌みたいな感じでホールドしてもしゃもしゃ草を食ってる。
「何だかな……モフモフじゃ無いし、モフリティ皆無なのにこうして落ち着いて見てみると愛嬌は……やっぱ無いわ」
「キュイ?」
「何でもないから取り敢えず食っとけよ。腹減ってたんだろ?」
「キュイィィ!!」
雑草を食みながら何かめちゃくちゃ感謝してるっぽい。……なんか、うん。庇護欲と言うか。
臆病で、温厚で、そんでもってお世話しないと簡単に死んでしまいそうなか弱いモンスターってのも、案外悪くないかもしれない。
「今日からはしっかり世話しよう。そうしよう」
モフモフじゃないけどモンスターテイマーとしてお世話は大事だよね。うん。別に可愛いとか思い始めてる訳じゃないし、別に……。
「よし、取り敢えずもう少し雑草摘むか」
この行動にも他意は無い。本当だ。