第9話 「ショパンのエチュード」
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「ただいまぁ〜」
『おかえりなさい、今日は早かったのね』
「練習の途中で気分が悪くなっちゃって、保健の先生が、今日は帰りなさいって」
『まぁ、大丈夫なの?』
「大丈夫、大丈夫。ただの貧血よ」
『そう。お願いだから、ちょっとでも体調が悪くなったらすぐに教えてね』
「わかってるって」
「ピアノ弾いてくるね」
「ママってば、睦っちの事以来すっかり健康にうるさくなったの」
〈心配かけちゃったね〉
「さてと、1日1回で2時間以内ってことは、今16:30だから、ちょうど夕ご飯まで弾けるわね」
〈いいの?〉
「いいに決まってるわよ」
「弾きたかったんでしょ?」
〈うん、じゃ乗り移るね〉
その瞬間、萌の霊体が外に出た。
〈何これ、すっごーい。私浮かんでいるわ〉
「萌、ありがとう。時間まで弾かせてもらうね」
「まずはショパンっと」
ショパンのエチュードを次々に弾いていく。
〈懐かしい、睦っちのメロディーだ。〉
〈すぐに睦っちの演奏ってわかるわ〉
すると突然、お母さんが部屋に入ってきた。
〈ひっ〉
びっくりしたのは萌だった。
『萌、今、萌が弾いてたの?』
「そうよ、もしかして下手になってた?」
『違うの、睦月が弾いているのかと思って』
『やっぱり双子ね。ありがとう、睦月の弾き方を大事にしてくれて』
『ご飯を作りながら、聞いているわね』
〈びっくりしたぁ。ママには私が見えないんだ。〉
〈それにしても、ピアノを聴くだけで睦月とわかるなんて、さすがママ〉
〈どうしたの睦っち、泣いているの?〉
「ううん、いつも私のピアノを、聴いてくれてたんだなぁと思って、嬉しくなっちゃった」
〈ホラ、あと30分しかないよ〉
〈どんどん弾いて〉
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夕食の時間に、お母さんがお父さんと大地に向かって話している。
『萌のピアノすごいのよ。睦月と同じ、いえ超えるわ、天国で睦月もきっと喜ぶわ』
『今度の定期演奏会、萌が弾くのよね?』
『お母さん、絶対に聞きに行くわ』
睦月といえば、天国に行きそびれて、隣に座ってるんだけどね。
睦っち、みんなと一緒で嬉しそう。
家族全員で話せたらもっと楽しいだろうな。
夕食後、睦っちは、天国への案内人、アンナさんの所に用事があるとかで、飛んでった。
明日の朝も起こしてくれるそうだ。
嬉しい。
明日土曜日、午後はオケの練習だ。
明日は何を弾いてもらおうかな?