第8話 「プリンは甘かった」
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目がさめると、ベッドに寝ていた。
この白い天井見たことがある。
ここは保健室だ。
確か、オケの練習でピアノを弾いていて、となりに睦っちが。
「睦っち!いるの?」
「いるのなら返事して!」
私は両手を握り、祈った。
〈萌、萌ごめんね、驚かせて〉
「睦っちなの? 本当に睦っちなの?」
〈うん〉
「どこにいるの?」
〈見ても驚かないでね〉
枕元に、半透明の睦月が確かに立っていた。
「睦っち」
萌は思わず抱きしめた。
「会いたかった。話したかったよう」
「なんであんなにすぐに逝っちゃったの?」
〈ごめんね〉
本当はあのダメアンナのせいなんだけどね。
保険の先生が戻ってきた。
『あら、星野さん、具合は良さそうね』
「ご心配おかけしました」
保険の先生には、睦っちが見えないみたいだ。
『起きれるかしら?』
「は、はい。もう大丈夫です」
〈よかった〉
「ありがとう」
『えっ、何か言った?』
「ありがとうございます。と」
『いいのよ、これが私の仕事だから』
〈萌、心で思うだけで私と会話出来るわ〉
「本当? だとしたらとても便利ね。ウフッ」
〈練習に戻らなくていいの?〉
「先生、練習に戻っていいですか?」
『そうねぇ、元気にはなったけど今日はやめて、家に帰ってゆっくり休みなさい』
「はい」
『指揮の斉藤君には、私から伝えておくわ』
「ありがとうございます。失礼します」
「ねぇ睦っち、いつから私のそばにいたの?」
〈今朝から〉
「やっぱり、プリン楽しみにしてたもんね」
〈濃厚な味で、甘くて〉
「やっぱり2口目の時に乗り移ってたの?」
〈クチだけよ〉
「私に乗り移れるの?」
〈萌の許可があればね〉
「プリンは?」
〈う、ごめんなさい〉
〈でも、1日1回、2時間以内の縛りがあるの〉
「じゃあ、明日の英語のテスト、代わってもらおうかな?」
「でも、ずっとこのままなの?」
萌と睦月は肩を並べて帰り道を歩いていた。
「お父さん、お母さん、大地とは話せないの?」
〈そうなの。双子で、霊質がすごく近いから、萌とは話せるみたいなの〉
〈あと、〉
「何?」
〈こうしてられるのも、あと3ヶ月だけ〉
〈12月24日には、天国への門が開くから、天国へ行かなくちゃいけないの〉
「3ヶ月、たったの3ヶ月だけなの?」
〈ううん、いいの。今、こうしてられるのも、萌のおかげなの〉
〈私のことを本気で信じてくれたから。ありがとう〉
「そうだ、ねぇ、私に乗り移って何がしたい?」
〈ピアノ弾きたいな。あとは…〉
「俊介ね。任せて。毎週末は、睦っちにデートさせてあげる」
〈ありがとう〉
「とにかく早く帰ってピアノを弾こうか」
〈うん〉