第6話 「ピアノが弾きたいっ」
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「ここはどこ? 真っ白い部屋」
『睦月ちゃん』
「だれ? どこにいるの? ここはどこ?」
『ここはね、あなた達の世界の言葉で言えば、天国への入口かしら』
「天国? 私、死んだのね」
「コンチェルトが終わって」
「ベッドで萌と話して」
「それで死んじゃったのよね」
『そうよ。でもあなたは、本当はもっと早く寿命がきてたはずなの』
『あなたのコンチェルトを弾きたいという思いが、あなたの死にそうな身体を動かしていたの。3ヶ月間もの長い間』
『でね、ぶっちゃけて言うとね、その3ヶ月のうちに、あなたの天国への門が閉まっちゃったのよ』
『アハハ。それで次に開くのは3ヶ月後なのよ』
「その間、私はどうしてればいいの?」
『ここで、じっとしていてもいいし、下界を散歩してきてもいいわよ』
『本当はね、もっと早くここに呼びたかったのだけど、あなたの熱意と愛に引き込まれちゃったの、ごめんね。決して忘れてた訳じゃないのよ』
絶対忘れてたな。こいつ。
「ピアノ弾きたいなぁ」
『ピアノ弾きたいの? 弾く方法はあるわよ』
「どうすればいいの?」
『あなたと双子の萌ちゃん、霊媒までそっくりだから、魂を交換するのは簡単よ』
「でもそれじゃあ、萌が死んじゃうんじゃないの?」
『普通だとそうなるね』
『だから影響のない方法として、1日1回、2時間以内なら、彼女の身体を借りることは出来るわよ』
『ただし、彼女、萌ちゃんの合意が必ず必要よ』
「でもどうやって合意なんて?」
『あなた達は心で会話ができるわ。いわゆるテレパシーね』
『それと、萌ちゃんがあなたを認識すれば、あなたが見えるようになるわ。半透明だけどね』
「わかったわ、萌に話しかけてみる」
『あっ、でも急に話しかけても、怖がられるだけよ』
『それに怖がられすぎて、あなたのこと、つまり霊体を否定されたら、2度とあなたを認識しなくなるわ』
「そんなぁ。どうすればいいの?」
『まぁかせて、何度も同じようなお助けをしたことがあるから』
「何度も閉門に間に合わせられなかった「尻拭い」でなくて?」
『ゴホンッ、まぁ、それは置いといて』
『大船に乗った気分で、私に、まぁかせなさいっ』
泥舟のような気分が。
「で、今までの成功率は?」
『失礼な、先月1回成功したわよっ』
『20回目にしてようやくだけども』
「はぁ、大丈夫かしら。でもそれ以外にあてがないし」
「あなたのことを何て呼べばいいの?」
『名前はないわ。天国への案内人だから』
『「アンナ」って呼んで』
「アンナ、まずはどうすればいいの?」
『まずは、「モーニングコール」作戦よっ』