第4話 「モーツァルト ピアノコンチェルト 第20番」
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10月11日(日曜日)
学園祭2日目、オーケストラ部の演奏会だ。
開演は16時から。
曲目は
・序曲:
学園歌 編曲指揮:斉藤俊介
・サブ:
モーツァルト ピアノコンチェルト第20番
指揮:斉藤俊介、ソリスト:星野睦月
・メイン:
ベートーヴェン 交響曲第3番 「英雄」
指揮:山本公一
私はチェロでメインに乗る予定だ。
3番なら何度か弾いたことがある。
楽勝だ。
睦っちはピアノコンチェルト一本に絞ってる。
愛を表現することへの気迫が違う。
でもそれが睦っちらしい。
14時まで軽く通し練習をして会場だ。
15時開演までのこの時間がワクワクする。
袖の裏から客席を覗く。
客入りはどうかしら?
知っている人はどこに座っているのか?
みんなして覗いている。
あっお父さんだ。
えっ、一番前の真ん中?
何よそれ、睦っち狙いがあからさまよ。
『ビーッ』
開演10分前のブザーが鳴った。
睦っちは、上座裏の私の隣で座っていた。
「お父さん、睦っちの真ん前に座ってるわよ」
『お父さん、毎回そうだからねぇ』
『今日は寝ないで欲しいな。ふふふ』
照明の点いていない、暗い演奏者席
に、徐々にメンバーが座っていく。
開演の時間になった。
舞台と観客席の照明が反転して、コンサートミストレスが入場して来た。
パラパラと拍手が起きる。
これからチューニングだ。
コンミスが、ピアノの「ラ」の音を鳴らす。
コンミスが自分のバイオリンの「ラ」の音を合わして、弦楽器、木管楽器そして金管楽器に「ラ」の音が引き継がれて行く。
チューニングが終わると、指揮者の斉藤俊介が颯爽と現れた。
大きな拍手が響いた。
隣の睦っちはといえば、もう目がハートだ。
俊介は指揮台に立ち、指揮棒を振り上げる。
振り下げた瞬間に演奏が始まった。
この学園歌、まるっきりの現代曲。
客席の半分は寝るとみた。
全部の弦楽器に、ハーモニック演奏させるなよ、まだ中学生だぞ、私たち。
私もウトウトし始めた頃、演奏が終わった。
客席も、今、拍手して良いのか迷っているようだ。
「さあ睦月、出番よ」
『うん、ねえ萌、これが終わったら、告白っていいかな?』
「えっ、い、いいんじゃないかな」
「っていうか、まだだったの?」
『うん、萌に言ってからって思ってたから』
睦月は立ち上がり、ステージに向かった。
睦月の肌は透き通るような白さで、薄い赤色のドレスが良く似合っていた。
ピアノコンチェルトは、立ち見が出るほどの盛況だった。
オケを、ピアノを、睦月を、ホールにいる誰もが聞き惚れていた。
第3
楽章の終盤、睦月は指揮を見つめ、一心不乱に、演奏している。
そして最後の和音。演奏は終わった。
スタンディングオベーションだ。
俊介と睦月が握手をし、俊介が客席に礼をした。
次に、睦月が前を向いて客席に礼をした時、それは起こった。
睦月が、崩れるように倒れたのだった。
「睦月っ」私は拍手の最中であるにもかかわらず、飛び出して睦月を抱えた。
お父さんもステージに上がって来た。
冷たい、息が弱い、「だれかっ救急車を、救急車を呼んで」
会場内がざわつき始めた。
次回、ファンタジーが書けたらなと思っています