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睦月と萌  作者: 乙 君
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第16話 「演奏会が終わって」

ついに演奏会の日がやってきた。


午後7時、ホールに開演のブザーが響き渡る。


『睦っち、いよいよ本番だね。』


〈萌、今までありがとう。頑張って演奏するね。〉


『さあ、乗り移って』


序曲の演奏が始まった。


『この演奏会が終わると、睦っちとお別れなんだよね。』


『私、そんなのイヤだ。もっと睦っちと一緒にいたい。グスッ』


〈私もよ。私も萌とずっと一緒にいたい。〉


〈でも時間がないの、だから泣かないで。〉


〈萌と俊介の記憶に残るような演奏をするわ。〉


〈2人の記憶に、私のことを忘れないように。〉


『そんな、忘れるわけないじゃない』


〈ふふ、ほら、涙を拭いて。せっかくの化粧がくずれちゃうわ。〉


〈3人で最高の演奏をするんでしょ?〉


『グスッ、わかったわ。』


『一生忘れられない演奏会にしなくちゃね。』



序曲が終わり、舞台が暗くなっていく。


奏者が入れ替わりながら、スタンウェイのグランドピアノが舞台中央に運ばれていく。


『さあ、出番よ』


舞台上が明るくなり、睦っちがピアノに向かって行く。


ホールいる誰も、奏者が睦っちだとは知らない。


指揮者の俊介を除いて。


その俊介が舞台にやってきた。


俊介は観客席に挨拶をすると、睦っちとアイコンタクト。


『睦っち、頑張って』


そんな私は、俊介と睦っちの間に、半透明なまま体育座り。


睦っちと俊介の間で演奏を聴けるなんて、なんて幸せ。



演奏が始まった。


弦楽器のシンコペーションから木管、金管へとメロディが引き継がれていく。


もうじきピアノだ。最初は軽やかに優しく。



楽しい時間はあっという間に過ぎ去ってゆく。


気がつけば三楽章後半、次第にオケのボルテージが上がっていく。



睦っち、幸せそう。


姿形は私だけれども、睦っちのオーラが溢れている。


そして最後の和音とともに演奏が終了した。


睦っちは俊介に手を取られながら、客席に向かって挨拶をした。



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