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睦月と萌  作者: 乙 君
10/16

第10話 「睦っちはすごいのよ」

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翌朝、私は睦月の声で起こされた。


ものすごい幸せ


〈萌、起きて、朝よ〉

〈今日は、オケの練習よ〉

〈早く起きなさい〉

〈消しゴムはポケットの中よ〉


「なにっ」

ガバッと起きた。


『ジリリリー』


目覚ましを止めて、睦っちに問いかける。


「消しゴム隠したの、睦っちだったのね」


〈隠したのはアンナ、でも黙っててゴメンね〉


「ダメアンナね」


〈萌もそう思う?〉


「まあね」


「〈ふふふっ〉」


〈さあ、起きましょう。おはよう、萌〉


「おはよう、睦っち」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



リビングでは、すでにお父さんが起きて新聞を読んでいた。


「おはよう。お父さん、お母さん」


『おはよう』


『おはよう、今日は早いのね。練習は午後からでしょ?』


「うん、ちょっとピアノを練習しておきたくて」


食後、ピアノ部屋に向かった私は睦っちに聞いた。


「睦っち、今弾く? それともオケの練習で弾く?」


〈えっ、オケの練習で弾いていいの?〉


「もちろん、オケで弾いてみよう」


〈うん、ありがとう〉


「今日の練習は、13時から15時までがピアノコンチェルト。2時間だからちょうどいいね。今日は第1楽章よ」



〈萌は練習しないの?〉


「今からするわ」


今日の練習箇所である第1楽章を弾き始める。


右横に睦っちが座って、右手を重ねてくる。


「2時間しかダメなんじゃないの?」


身体(からだ)の一部のシンクロなら、霊体を追い出さないから、負担は無く大丈夫なんだって〉


昨日、ダメアンナに聞いてきた。


「アンナねぇ、会ったことないけど、痛い人みたいね。ウフッ」


「ここの所、一緒に弾いてみて」


「いつも指が回らず、転んじゃうんだ」


〈私も去年の今頃かな、ゆっくりと毎日100回は弾いたわ〉


うわぁ、そこまで練習したことない。

差がつくはずだわ。

バスケのシュート練習ならできるかも。



睦っちと一緒に弾く。


「わぁ、指が回る。転ばないで弾けてるわ」


私は睦っちに、マンツーマンでピアノを教わっているかのように、ピアノに没頭した。


「萌、そろそろ時間よ」


お母さんの声で我に返った。


もう12時だ。3時間も延々と弾いていた。


こんなに楽しく弾いたのはなん年ぶりだろう。


「睦っち、行こう」


〈うん〉


萌はさんどいを頬張り、睦月と学校に向かった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



『ポーン』


ホールにピアノの「ラ」音が響く。


ピアノからコンミスへ。


コンミスのヴァイオリンから弦楽器、そして管楽器へと、音が紡がれてゆく。


チューニングは儀式のようだ。


演奏前のお祈りをしているかのようだ。


俊介が指揮台に乗り、話し始めた。


『今日は、木曜日に通せなかった第1楽章を通します。』


『落ちても、必ず復活してついてきてください』


『じゃあ、萌、用意はいいかい?』


睦月は頷いた。



『みんなも、天国にいる睦月に届くように、心を込めて』


だから、睦っちはここにいるってば。


指揮棒が振られると、弦楽器のシンコペーションから曲は始まった。


管楽器が重なり、重厚な和音で第一主題が終わった。


ピアノが入ってくる。


あっ、睦っちのピアノだ。


学園祭の時と変わらない。



第1楽章の通しが終わった。


指揮の俊介が何か言いたそうだ


オケメンバー全員が、不思議な顔をしている。



〈ねぇ萌、やりすぎたかなあ?〉


〈ううん、とっても素敵だったよ〉


〈俊介に、「調子がいいので第3楽章まで通しましょう」って言ってみたら?〉



「斉藤先輩、調子がいいので第3楽章まで通しませんか?」


「あ、ああ、みんなはどうだ?」


オケメンバーも文句は無い


「よし、2楽章から」



やった、睦っちのピアノがまた聴ける。



でも、これからの練習、これと比べられるのか。辛いな。

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