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第九話 想い

気ままに旅をする退魔師青年と純粋な魔法少女の道中記です

人と距離をおきなかなか心を開かない退魔師レナード、事情を知る唯一の相棒の白狐ココ、まだ駆け出し中であるが、魔法薬で人々を治す夢を持つイーナ。

この2人と1匹が出会い共に歩む中、あるときは人の陰謀や悪意と闘ったり、あるときは退魔師としての使命の中、人々の想いにふれる様々な内容を描きたいと思っています

イーナとココは人間の身体に戻ろうとするレナードをみて、傍にいつづけた。そしてレナードはその想いに応えるように目覚める。

レナード一行は体調を回復し、この先をどうするか相談していたが・・・。

※初めてなので内容が乱雑になるかもしれません。長い目で見守ってください

 あれから1週間が過ぎ、イーナの腕が治り、やっと自由に動けるようになった。

その間、イーナとココは毎日、レナードのお見舞いに部屋に訪れる。

その度にベゾンナに抱きつかれるイーナ。

そして今日もイーナとココはレナードのいる部屋に訪れる。

「イーナちゃ〜ん!?」

部屋に入った瞬間、またいつものように抱きつくベゾンナ。

「せん・・・ベゾンナさん。」

「イーナちゃんイーナちゃん!?今日も来てくれて嬉しいな。」

「え・・・えぇどうも。」

終始困惑するイーナ。

「ではベゾンナさん。また今日も・・・。」

と言ってレナードの傍に歩みよる。

「いいわよ。私は別のところで研究してるから。」

とベゾンナはそう言って部屋をでていった。

落ち着いたところでココが思い出すように話しかける。

「そういえばあのベゾンナって人、イーナのこと、『我が子』とか言わなかったっけ?」

「はぁ・・・。先生と私は親子じゃないよ。あの人、お気に入りの人見るとそういうふうに言う口癖だから・・・気にしないで。」

とイーナはため息混じりにそう話す。

そしてイーナはレナードの手を、今度は両手で包み込んだ。

「レナード・・・、お願い、目を覚まして。」

そう言って目を閉じ、祈り続けた。

「イーナ・・・。」

そんな様子をココは心配そうにみる。

 すると、

「!?」

レナードの手が動き出すことにイーナは驚く。

「レナード!?・・・イーナです。お願い!目を開けて!?」

身を乗り出すイーナ。

「どうしたのイーナ?」

「今・・・。レナードの手が動いたの!?」

「え!?」

「レナード!?」

「レナード!?起きて!」

イーナとココは必死に呼び続ける。

そして・・・。

「うぅ・・・。」

レナードが意識を取り戻す。

「レナード!?」

「レナード!?」

イーナとココはレナードの顔を覗き込む。

「・・・おはよう。イーナ、ココ。」

と返事をすると、イーナはレナードを抱きしめる。

「よかった・・・。本当によかった。」

とイーナの目に涙が溢れる。

「レナード!?気分はどう?」

とココも半泣きの状態で話しかける。

「えっと・・・イーナ。」

「レナード・・・レナード・・・うぅ・・・ぐすっ。」

そんなイーナを見て、レナードはイーナの頭を優しく撫でる。

「心配・・・かけちゃったな。ごめんなイーナ。」

「いいの・・・。私はレナードがいればそれで・・・。」

「俺・・・なんだか長い夢を見てたんだ。必死に戦っても・・・敵わない相手がいたんだ。諦めかけた時、イーナが・・・来てくれたんだ。イーナの顔を見たら、何だか元気がでて・・・。」

「もうしゃべらないでレナード・・・。今はゆっくり休んで。」

「うん・・・。だけど、もう少し・・・ここにいて。」

とレナードは弱々しくイーナにお願いする。

「いつまでもいるよ。」

「あり・・・が・・・と。」

お礼を言い終わる前にレナードは眠りについた。

「レナード?レナード!?」

「眠ってるだけだよ、イーナ。」

とココはイーナをなだめる。

「そう・・・よかった。」

そう言ってイーナもレナードの身体に寄り添いながら眠った。

「ふぅ・・・。私も一緒にねよう。」

とココも一緒に寝だした。

(懐かしいな・・・。)

ココはそう思った。

 翌日、レナードが目覚め、本調子を取り戻すため、レナードはイーナ達の元に歩きだす。

「おはよう、イーナ、ココ。」

そこにはイーナとココがレナードを出迎えていた。

「おはようレナード。」

「おはようレナード。」

3人は久しぶりの再会を喜んだ。

「俺たち、なんでこんなところに?」

とレナードが話すと、

「それは私が皆をここまで転送したの。」

「転送?」

レナードは聞き返すと、イーナはあのとき掲げたバッジを見せる。

「これは卒業生の証で、何か困ったときにこれを掲げると、卒業したこの魔法学校に転送できるの。」

とイーナは説明する。

「じゃあここはイーナがいた。」

「そう。私はここの学生だったの。」

とイーナは言った。

「ここが・・・イーナの。」

「でも私はここ好きになれない。」

とココはうんざりした顔でそう言った。

「仕方ないよココちゃん。人間だったら私達と同じ扱いするけど、ココちゃんは狐だからね。」

となだめようとするが、

「イーナ〜。イーナはわかる?檻の中から私をみる人間の目を。」

とココは心境を言う。

「あの得体の知れないものを見る目、私すごく怖かったんだから。」

とココは瞳をうるうるさせて言った。

「ココちゃん・・・。ごめんね。気づいてあげれなくて。」

「うぅ・・・。」

謝るイーナを見て何も言えなくなるココ。

「それで・・・。あれからどれくらいたったんだ?」

レナードは話しをそらすようにイーナに尋ねる。

「もう1ヶ月は経ったね。」

「1ヶ月も!!!」

イーナの言葉にレナードは驚く。

そしてレナードの顔が青ざめる。

「ここで1ヶ月もいて・・・治療もしてもらって・・・。お金は・・・?」

とお金に困り出すレナード。

「・・・。」

「イーナ・・・?」

「・・・ごめんね。まだそのことは話してないんだ。」

とイーナは苦笑いしながら言う。

「イーナはここの人間だからいいけど・・・、俺たちは部外者だぞ!?一体いくら取られるんだろう・・・。」

と心配するレナード。

「だったら聞きに行く?」

とイーナは提案する。

「誰に?」

「この学校の校長に。」

「校長?」

「うん。事情は皆知ってるから。」

とイーナはそう言うと、

「よし。今すぐ会いに行こう。」

とレナードは立ち上がる。

「い・・・今から!?」

「そうだ!善は急げというじゃないか。」

とレナードは歩きだす。

「ま・・・まって!?私も行く。」

そう言って部屋をでていった。

そして『校長室』という物々しい感じのドアの前にたち、

コンコンッとノックをするレナード。

「すいません。校長という方はいませんか?」

声をかけると、

「どなたですか?」

と返事がかえってきた。

その声にやや緊張するイーナが声をかける。

「い・・・イーナ・アランと、そそのお連れがまい、参りました。」

その言葉を聞いて、

「おいっ・・・イーナ、大丈夫?」

とココが心配する。

「おぉあのときの人たちか。入りたまえ。」

そう返事がかえると、レナードはドアをあけ、入っていった。

「失礼します。・・・この度は急な訪問に1ヶ月も滞在し、さらに治療までさせていただき、ありがとうございます。」

とレナードは深々と頭をさげる。

「いいんだよ、そんなことは。」

と校長はレナードの対応をみて、会釈する。

「単刀直入にお聞きします。治療費と滞在費はいくらほどになりますか?」

とレナードが尋ねると、

「いえ、もとは我が教え子の不始末がしでかしたこと。こちらが謝るべきところです。申し訳なかった。」

と校長が逆にレナードに頭を下げた。

「いえ、自分も至らない点があったからこうなったのです。私にも責任があります。せめて私達ができることをさせてほしいです。」

とレナードは頼み込む。

「そっか・・・。実は正直なことを言うと、君たちの治療でいろいろと薬品を使って、不足しちゃったんだ。」

「では自分がその薬品となる材料を・・・。」

とレナードが言いかけたとき。

「聞くところによると、あなたは魔法に関しては素人じゃな?そんな人では薬品を精製することができないだろ。」

「確かに私は魔法使いではありません。」

「じゃがそこのイーナは我が魔法学校の卒業生、イーナが不足した薬品を精製するのであればわしらは助かる。」

「私ですか!?」

と驚くイーナ。

「イーナは我が校でもずば抜けた優秀な成績の持ち主です。イーナなら簡単に揃えることができる。」

「でも・・・。いいんですか?校長先生。」

「わしはイーナを信じてるよ。」

「・・・わかりました。校長先生がそこまで仰るのでしたら、やらせていただきます。」

イーナはこれを承諾した。

「私からも何か手伝わせてください。」

とレナードは頼み込む。

「う〜ん・・・。確かレナードと言いましたよね?」

と校長は確認するように尋ねる。

「はい。」

「確か南のミミネイアという学校でレナードという人がその学校で組手をされたという情報を耳にしたんじゃが・・・。それはあなたですか?」

「ミミネイア・・・!?はいそうです。」

「そこで組手に立ち会った先生が言うには、素手で組手をしたというがそれは真か?」

「はい。」

「なら、イーナが薬品を精製する間、ここの生徒達に戦い方を教えて差し上げていただけませんか?」

「・・・私が教える範囲なら。」

と少し考えたレナード。

「ならばお願いします。レナード先生。」

「・・・。」

話しを終え、3人は部屋をあとにした。

「・・・なんだかお互いすごい大役任されちゃったね。」

とイーナは不安になりながら話す。

「・・・。」

レナードは少し後悔した。

「レナード?」

「・・・。」

レナードの代わりにココがしゃべりだす。

「レナード・・・。剣を使わない方法で教えればいいんだよ。」

とアドバイスするココ。

その言葉を聞いてレナードはしゃべりだす。

「・・・そうだな。剣を使わなければ。」

その言葉を聞いてイーナは尋ねる。

「ねぇ?どうして剣を使わないの?」

「俺の剣技は特殊なんだ・・・。その技を知ってる人がいたら、俺を殺しに来るかもと思って、今まで封印してるんだ。」

「殺しに?誰が?」

「恐らく・・・退魔師。」

とレナードは予想した。

イーナはふとレナードにお願いする。

「・・・ねぇレナード。」

「なに?イーナ。」

「私にも戦い方を教えて!」

「え!?」

「私だって、レナードを守りたいの!」

「でも・・・。」

「お願い!?」

イーナの必死な訴えに負けるレナード。

「わかった・・・。でも辛いぞ?戦いたくないときでも戦わなくちゃいけないこともあるんだ。その覚悟はある?」

「・・・ある。」

「わかった。イーナの好きな時間に指導する。それでいいね。」

「お願いします。レナード先生。」

とイーナはそう言って、腕にしがみつく。

そしてイーナはベゾンナに、レナードとココは訓練室に向かった。

 イーナはベゾンナのいる部屋に訪れた。

「はぁ・・・。」

とため息をつき、部屋に入ると、

「イーナちゃ〜ん!?今日はラッキーだな!イーナちゃんが私のもとに来てくれるなんて〜。」

とかなりハイテンションのベゾンナ。

「ベゾンナさん・・・。私校長先生の指示で薬品を精製することになったんです。」

「うんうん知ってるよ〜。」

「それで、必要な薬品はなんですか?」

と尋ねると、

「ちょっとまってね。」

とベゾンナはそう言って本の山から数枚の紙をイーナに手渡す。

「はい、これ。」

イーナは手渡れた紙に目を通すと、

「・・・!?こんなに!?一体何に使ったんですか?」

イーナは驚き、ベゾンナに問い詰める。

「えっとね・・・。狐ちゃんに治癒布を10枚に・・・、凝固剤を5つに・・・。」

とだんだんベゾンナの顔が歪み、イーナの顔をそらす。

「・・・ベゾンナ先生。」

イーナの顔も歪みだす。

それをみたベゾンナは、

「い・・・イーナちゃん。ごめん。」

と言い終わるか終わらないかの瞬間に部屋をでようとするベゾンナ。

だがその行動を予想してドアの前に立ちふさがるイーナ。

「ベゾンナさん!!!」

イーナは鬼の形相でベゾンナを怒る。

「ひぃ〜ごめんなさ〜い。」

とベゾンナは泣きながら謝りだした。

「この書類の5分の1はベゾンナ先生が研究のために使った材料や薬品ばかりじゃないですか?」

「えっと・・・どこにそんな証拠が。」

「証拠?じゃあこの蠍のトゲと毒は一体なんの治療でつかったんですか?」

「それは・・・治療するときの麻酔として・・・。」

「いいえ!蠍のトゲはトゲの中の分泌成分、すなわち強烈な毒をつくるためのもの、蠍の毒は毒液と毒消しをつくるためのもの、どれも治療に必要ないものばかり。」

「い・・・イーナちゃん。」

「まだあるわ!この鮫の鱗はなんですか?これも治療につかったというなら説明してください先生!?」

「え・・・と・・・、それはレナードの外傷を治すために鮫の鱗の成分を使って・・・。」

「先生!?ホントにそんなことにつかったんですか?鮫の鱗の成分には人間には危険な寄生虫がいるのは先生だってご存知のはず。寄生虫を調べるためでしょ先生!?」

「う・・・うぅ・・・ごめんなさいイーナちゃん!?ほとんど私が研究や実験で使いました。」

と圧倒的なイーナの博識と気迫でベゾンナはついに泣き出した。

「・・・卒業生になって、なんでまた先生の後始末を。」

と肩をおとすイーナだった。

 一方レナード達は、まだ生徒らしき人影がない訓練室にいた。

「とはいっても・・・、俺まだ本調子じゃないからな〜。」

と困惑するレナード、

「じゃあ久々に訓練しよう。」

とココはそう言って飛び降りる。

「そうだな・・・。ココ!ここに並んでる武器を俺に飛ばしてくれ。」

と訓練用に置かれてある、剣や槍、斧に矢と様々な武器が並んでいた。

「は〜い。」

とココは身構える。

「いつでもいいぞ!?」

とレナードはそう言うと、

「う〜・・・やぁ!!!」

ココが声をあげると、並んでいた武器が宙に舞い、レナード目がけて飛来する。

レナードは手にした木刀を使い、

「はっ、はっ、やっ!?」

と飛来する武器を全て叩き落とし始めた。全て落としきると、

「はぁ・・・はぁ・・・ありがとうココ。」

と礼を言うレナード。

「ふぅ〜私も久々に力を使えたから気持ちいいわ。」

とココは身体を振って、綺麗な毛並みを靡かせた。

「よしっ!次は。」

とレナードは叩き落とした武器に集中すると、また武器が宙に舞った。

今度は一本一本意志があるように武器を動かし始めた。

するとココが、

「レナード!?あの槍妙な動きしてるよ。」

と指摘するココ。

レナードはそこに若干意識を持っていき、指摘された槍は意志を持つように動き出す。

そしてしばらくして武器達は静かに下ろされる。

「ふぅ〜しばらく寝ていたからちょっと調子外れたな。」

とレナードがそうつぶやくと、

パチパチパチパチ・・・。

訓練室に入室しようとした生徒や先生がレナードの訓練をみて拍手をする。

「すご〜い。今のなんですか?」

「今の魔法ですか?教えてください。」

と生徒達はレナードを取り囲んで質問攻めをする。

「えっと・・・これは魔法じゃなくて。」

と説明しようとするレナード。

すると、

「は〜い、全員そこに並んで座って。」

と先生が生徒達に指示をし、それに従って生徒達はきれいに並んで座り出す。

「あなたがレナードさんですよね?校長から話しは伺っています。こちらにどうぞ。」

と先生に言われるままレナードはついていった。

「皆!?今日からしばらく外で魔物や対人に対しての戦い方を急遽指導することになった、レナード先生です。」

と先生は生徒達にレナードを紹介する。

パチパチパチパチ・・・、

生徒たちは歓迎するかのように拍手をする。

「ではレナードさん、あなたからも何か言ってあげてください。」

と先生はレナードに促す。

「え!?・・・はぁ。」

とレナードは困惑する。

そして口を開く、

「えっと・・・俺は、魔物との戦い方は教えないつもりです。」

「えぇ〜!?」

とレナードの言葉に驚く生徒達。

「だが、人と対峙する時の戦い方をみっちり教える所存です。他に何か聞きたいことは?」

と質問するレナードに、生徒達は我先にと挙手をして返事をする。

「・・・。」

レナードは生徒達からくる『気』を感じ、

「俺とイーナの関係、あとさっきの術以外の質問なら受ける。」

と言うと約半数が手を下げた。

「では・・・そこの君!?」

と指を差すレナード。

呼ばれた生徒は立ち上がり、

「どうして魔物との戦いを教えてくれませんか?」

と質問する。

「うん。俺は外にでて旅をしてる者だが、俺は1度も魔物と戦ったことがないからだ。」

堂々と質問に応えるレナード。

「なぜ戦ったことないんですか?」

「魔物が怖いから逃げてるんですか?」

と様々な意見をする生徒達。

「・・・、なぜ魔物と戦わないか、それは魔物もこの世に生をもってるからだ。こちらから手を出さない限り、魔物も襲ってこない。」

「もし襲ってきたらどうするんですか?」

とある生徒が意見する。

「もし襲ってきたら?それは襲われる理由を考えるんだ。では逆に聞く、君たちはなぜ魔物を襲う?」

しばらく無言になると、

「魔物は人を襲ったり、食い殺そうとします。」

と応える生徒がいた。

「そう。だから君も魔物を襲うのか?」

とその生徒にまた質問する。

「はい・・・。」

と返事をする。

「では君の言うように人を襲ったり、食い殺そうとするから魔物を襲うと仮定しよう。そうすると襲われた魔物もこう思うはず、『何もしてないのに人間に襲われた。だから人間を襲って食ってやる。』そう思うだろう。」

そういうとその生徒は言葉を失くす。

「魔物も人間と同じで理由がない限り襲わない。襲われるとしたら何かしら理由があるはず。それは人間の考えてることよりもっと単純な理由だ。」

とレナードが続けて話そうとすると、隣にいた先生に止められる。

「あの・・・レナードさん。その話しが長くなるとここでの授業の時間がなくなります。」

その言葉を聞いたレナードは、

「・・・ではこの続きが聞きたかったら、授業の後に俺の元に聞きに来てくれ。」

と言うと、

「じゃあいつものように2人ひと組になって組手をしてください。」

と先生が指示すると

「は〜い」

と生徒達は返事をし、コンビを作り始めた。

「ひと組になった人から始めてください。」

と先生がそう言うと、生徒達は動き出し、訓練用の武器を手に取り、戦い始めた。

レナードは先生に何をすればいいか尋ねる。

「あの・・・俺はなにを?」

「レナードさんはそこでみていて、生徒達の動きを見て、悪いところを指摘してください。」

そう聞いたレナードだったが・・・。

生徒の戦いはレナードからしたらおままごとのように見えて落ち着きがなかった。

するとレナードが堪えきれず、

「やめやめー!」

と生徒達の組手を止めた。

「レナードさん?」

「君たちは何を勉強してそんな動きになるんだ!?」

と生徒に質問する。

「だってこの方が一気にやっつけられるから。」

「僕もこうすると敵に隙を見せずに攻撃できるって。」

と様々な意見が飛び交う。

「君たちの意見がわかった。では今から俺とそこの先生で今から組手をする。」

「えぇ!?なんで僕が?」

と指摘された先生は困惑する。

「あなたはこの生徒の先生ですよね?そしてこの方法を教えてるのはあなたですよね?」

「えぇまぁ・・・。」

「問題ありませんね。俺が勝ったら、俺のやり方で指導します。先生が勝ったらなんでもします。」

その言葉を聞いた生徒達は

「おぉ〜!?」

「レナード先生の指導ってなんだろうね?受けてみたいかも?」

「先生、そんな人ちゃっちゃとやっつけちゃってくださいよ。」

とまたも生徒達が騒ぎ出す。

「わかりました。」

と先生は承諾する。

そして生徒達は訓練室の端によける。

先生は槍を手にする。

「レナードさん、あなたもお好きな武器を。」

と促す先生、

「俺に武器はいらない。」

と宣言する。

「なに!?」

驚く先生。

「うわ〜カッコイイ〜『俺に武器はいらない』だって。」

と真似をする生徒もいた。

そして訓練室の真ん中にたつ。

「ルールを説明します。時間無制限の相手が倒れるか、『参った』というまでの一本勝負。」

と審判役の生徒が説明する。

「先生方は指定の位置についてください。」

そう言われ、お互い指定の位置に立ち、身構える。

それを確認する審判は

「・・・始め!」

と合図をする。

動き出したのは先生からだ。

先生は槍を構えたままレナードに飛びかかる。

先生は槍の矛先をレナードの足元目がけて突く。

レナードは軽く後ずさりすると、槍で突いたところが、なにやら粘つき出す。

レナードはそれを確認すると、またも先生の槍がレナードの足元目がけて突く。

レナードは一歩後ずさりすると、槍はまたも突いたところが粘つき出す。

そして槍の矛が先生の元に戻る前にレナードは槍を足で押さえ、もう片方の足で蹴りを放つ。

「!?」

それを見切った先生は片腕でレナードの蹴りを受け止めた。

だが、受け止められた蹴りの反動で宙で止まるレナードだが、すぐに受け止めた手を掴み、レナードの元に引き寄せた。

先生はそのままの体勢のまま引きづられた。

そしてレナードは渾身の拳を引き寄せられた先生の腹部に突き出す。

そして先生は飛ばされ腹を抑えて倒れる。

「勝負あり。」

と審判が試合終了のかけ声をする。

驚く生徒達、レナードは先生の元に行き、

「いい試合でした。」

と手を差し伸べる。

「本気で・・・殴らなくてもいいじゃないか。」

と先生はレナードの手をとりたちあがる。

レナードは生徒達に振り向き、

「今の戦いでなにか気づいたことはあるか?」

と質問するレナード。

魔法の槍を使った先生と素手のレナード。

その質問に誰も答えようとする生徒はいなかった。

「では今から説明しよう。」

と生徒達に近づくレナード。

「先生が負けた原因、それは魔法の武器に頼った戦い方をしてることだ。でも先生も生徒に教える立場、先生も肉体の修練は積んでいた。だが負けた。それは魔法に依存してるからだ。」

とレナードは先生の負けた原因を分析する。

「それに比べて俺に戦いはどうだった?わかる人はいるか?」

と質問するレナード。

これも答える生徒はいなかった。

「俺は魔法の武器の特性は何もしらない。それにこの槍も魔法の武器とも知らないし、ましてやどんな魔法かも知らなかった。・・・まず人と対峙する時、どんな戦法、癖等、観察するところからだ。先生が槍を突き、魔法を発動させたことで、その武器を知った。そして、先生は俺の動きを止めようとするばかりに気を取られ、足元ばかりを狙った、これが先生の戦法、癖。そこまでわかったところで俺は攻撃をしかけた。足で槍の動きを封じれば、魔法は発動しない。そして止めに蹴りで決着するつもりだった。だが先生はそれを見切り、受け止めた。ここまでは俺も予想はついてた、そこであの体勢から手を掴み、先生の体勢を崩した。崩された相手は整えるまでの間は無防備状態、そこで今度こそ止めの拳をついた。」

とレナードの分析結果を生徒に話す。

「まずどんな敵でも観察することだ。そして相手の動きを見切ったところで行動を起こす。これが俺のやり方の基本だ。」

と講義を終えると、

「す・・・すごい。」

と生徒は一言漏らす。

すると、授業終了のチャイムがなった。

「・・・ではここまでだ。次からは俺の指導の元、みっちりしごいてやるからな。」

と笑顔で言うレナードだが、生徒達はレナードの気迫に押されて怯え出す。

そして生徒達は逃げるように部屋から出ていってしまった。

「ちょっとレナード〜!?脅しすぎじゃない?」

と終始頭にしがみついたココが意見する。

「・・・やっぱり脅しすぎかな?」

と苦笑いするレナードだった。

 「・・・えっとこれとこれで・・・・・・それからこれが・・・」

とイーナはせっせと散らかしっぱなしのベゾンナの部屋を片付けをする。

「ベゾンナさん!?ちゃんとやってますか?」

と目をキッとするイーナ。

「はーい・・・やってます。」

ベゾンナはすっかりイーナの手足となって動かされていた。

そしてベゾンナの部屋の片付けが終わると、

「じゃあ次、隣の研究室の片付けね!」

と元気に言うイーナ。

「えぇ〜もう疲れた〜休も〜。」

と座り込むベゾンナだが、

「何言ってるんですか?薬品を陳列するためには片付けをしてスペースを確保しなきゃいけないでしょ?」

とイーナから発してるとは思えない気を放ちながらにこやかに話すイーナ。

「う・・・わかりました。」

「終わったらベゾンナ先生の大好きな紅茶と果物もってあげるから、それまで頑張りましょう。」

イーナが言うと、

「やった〜イーナちゃんの淹れる紅茶久々に飲めれるんだ〜!」

とはしゃぎ出すベゾンナ。

「・・・。」

イーナの眼力で落ち着くベゾンナ。

研究室に入ると、そこは足の踏み場もないくらい散らかしてあった。

「・・・さぁがんばりましょうね!?」

とイーナの迫力のこもった声を聞いたベゾンナは怯えながら作業に取り組んだ。

そして授業開始のチャイムが鳴るとベゾンナは、

「あ!?これから大切な授業があったんだ〜。」

と逃げるベゾンナだが。

「授業?先生いつからそんな教論するような職についたんですか?」

とイーナはまたもドアの前にたつ。

「え・・・えっと。イーナちゃんが卒業してからすぐ・・・。」

「へえ〜じゃあどこの教室でどんな科目を教えてるんですか?」

「えっと・・・魔法薬実験室で生物科目を。」

「じゃあ今から別の先生に頼んで『ベゾンナ先生は大切な用事で授業できません』と伝えにいってきます。」

と言いながらドアをあけようとする。

「ま・・・まってイーナちゃん!?」

「な〜にベゾンナ先生?今更嘘でしたなんていいませんよね?」

とイーナはベゾンナの嘘を見抜いていた。

「う・・・ごめんなさい。嘘です」

「じゃあ片付けに戻りましょうね。あ!嘘ついたから紅茶と果物はなしね!」

とにこやかに話す。

「え〜!?」

「では片付けしましょうか。」

とイーナとベゾンナは研究室の片付けを始める。

・・・しばらくすると研究室は綺麗になり、棚も研究項目別に分けられ、道具もピカピカに掃除された。

「はぁ〜もう動けない・・・。」

とベゾンナは自室でだらける。

するとイーナが紅茶と一口サイズに切った梨をもって部屋に入る。

「お疲れ様ベゾンナさん。・・・がんばったご褒美に紅茶と果物ですよ。」

と言いながらテーブルに紅茶と果物を置き始める。

「え・・・!?いいの?」

きょとんとするベゾンナ。

「せっかく頑張ったんですからね。」

とイーナは満面な笑みでベゾンナを勞った。

「う〜ん!?だからイーナちゃん大好き!?キスしたいくらい大好き!?」

と抱きつくベゾンナ。

「ベゾンナさんやめてください、紅茶が溢れちゃいます。」

とじゃれあう2人。

どっちが保護者かと突っ込みたくなる光景だ・・・。

すると思い出すようにベゾンナは話し出す。

「懐かしいな・・・イーナ。」

「なにが?」

「イーナが初めてこの部屋に入ったときさ、私は研究でむしゃくしゃしてたとき、助手と間違えてイーナに当たったんだよな。」

「そうでしたね・・・。あの時は本当に怖かったですもの。」

「でも今は立場が逆だろ?私が叱られ、イーナが叱る。」

「ベゾンナさんはもう少し清潔にしないといつまでたっても貰い手がいないままですよ。」

「私はもう手遅れだよ。イーナはどうだ?」

「私?」

「あのレナードとかいう彼とはできてるのか?」

「・・・!?何考えてるんですか!?」

「お前達を治療してる間うわごとのように言ってたそうだぞ?」

「え・・・!?」

「私は治療班を割り振って、あの狐を治療して、そのあと彼の治療に駆けつけたさ。あいつ、麻酔で意識がなくなってるのに、ミーミの手を離そうとしなかったそうだ。」

「・・・。」

「でも、治療を任せた人からは、ミーミを掴んだままイーナの名前をずっといってたよ。」

「・・・。」

「彼はイーナを、イーナは彼の名前を呼び続けるなんて、ロマンチックじゃないか。」

「・・・。」

「本当のところ、イーナはどう思ってるんだ?」

「・・・好きだよ。」

「じゃあその気持ちを彼に伝えちゃえよ。」

「彼は・・・私よりもっと相応しい人がいますよ。」

「そうかな?」

「私がいると迷惑かけちゃうし、足手まといにだから。」

「イーナ!」

「わかってる・・・。でもいつかは、気持ちを伝えようとおもう。でもそれは今じゃないって思うんだ。」

「・・・式挙げるときは私を呼んでよ。」

「そのときは少しはマシな格好できてくださいよ。」

と2人だけの女子会は終わろうとする。

「そろそろ休憩は終わりにして、片付けを再会しましょ?」

と紅茶を片付けると、

「え〜もう動けない。」

「・・・。」

片付けながらイーナは視線をベゾンナに向けると、

「はい・・・がんばります。」

と言って片付けを再会する。

 そして一日が終わり、3人は部屋で休んでいた。

「お疲れ様イーナ。」

「お疲れ様レナード。ココちゃん。」

「お疲れ様イーナ。ていっても私は何もしてないけどね。」

とお互い労いの言葉をする。

「イーナ、薬品の精製はいつ頃終わりそう?」

とレナードが尋ねる。

「・・・それだけどね。薬品を精製する書類に目を通したけど、ほとんどベゾンナ先生の研究材料やその研究につかう薬品ばっかりで、いつ終わるかまだ・・・。」

「そうか・・・。」

「レナードこそ、生徒達に組手したんでしょ?」

「・・・。」

「どうしたの?」

とイーナは尋ねると、かわりにココがしゃべりだす。

「ふふふ、レナードったらまた教鞭語っちゃったのよ。」

と笑いながら話すココ。

「またなのレナード?生徒達ひかなかった?」

「ひくどころか、すっかり怯えちゃってさ。」

「何話したのよ?レナード。」

とイーナがレナードに近づくと、

「う・・・いや・・・。」

イーナの顔が近づき、顔を赤くするレナード。

「イーナ違うのよ。レナードが組手担当の先生と試合して、ギタギタにやっつけちゃったから、それで怯えてるんだよ。」

ココは事情を説明する。

「レナードったら・・・。私にもそう教えるつもり?」

「い・・・いや。」

と顔をそらすと、

「じゃあ今から稽古して!?」

「え!?今から?」

「そう!レナード先生の稽古、私も受けてみたい。」

「・・・わかった。じゃあ訓練室の鍵をとりにいこう。」

と言って3人は部屋をでる。

訓練室の鍵をイーナは手に取り、鍵をあけ、訓練室にはいる。

その部屋は不気味なくらい静かだった。

イーナは訓練室を明るくする。

「じゃあレナード先生、よろしくお願いします。」

とイーナはお辞儀をする。

「よ・・・よろしくお願いします。」

とレナードは慌ててお辞儀をする。

「レナードはどんな武器を使うの?やっぱり剣?」

尋ねるイーナ。

「俺は武器は使わない。イーナは好きな武器を使っていいよ。」

とレナードは促す。

「う〜ん・・・。戦いって苦手だからな〜。」

と武器を選ぶイーナ。

「武器選びのコツは自分が手に取って、手に馴染むかどうかでもいいし、武器に憧れて選ぶのでもいいよ。」

とレナードは1つの武器を手に取りながらイーナにアドバイスする。

「う〜ん・・・。」

考えるイーナ。

するとふとレナードを助けたときの夢を思い出す。そして、

「私・・・これにする。」

とイーナは剣を手に取る。

「剣か・・・。」

つぶやくレナード。

「だめ・・・かな?」

「イーナがそれでいいなら、文句は言わないよ。」

とレナードは微笑みながら言う。

「じゃあまず『構え』からやってみて。」

とレナードはイーナに指示する。

「・・・こう?」

とイーナの精一杯の構えをとる。するとレナードは近づき、

「・・・力が入りすぎだよ。それだと戦う前からバテちゃうよ。」

「はい!」

と返事をするイーナ。

「俺が手本を見せるね。」

とレナードは腰に差してる剣を抜き、構える。

「まず剣の構えは目はまっすぐ相手を見る、そして剣も相手にあわせる。体の力は抜く。足は肩幅くらいにあけるか、足を前後に開くのでも、それはどっちでもいい。」

構えを見せながら話しの要所要所、構えを変えながら説明するレナード。

「やってみて。」

「はい!」

イーナはレナードの説明通り構える。

体の力を抜き、目はレナードをみて、剣もレナードの動きにあわせて、構え、足は肩幅くらいに開く。

レナードはイーナの構えをじっと見て、確認する。

「構えはできるようになったね。・・・まだ続ける?」

「もう少し続けたいです。」

とイーナは言う。

「では次は___」

と2人っきりの稽古は続く。

そして・・・。

「・・・よしここまでにしよう。」

とレナードは終えようとするが、

「もう少し・・・付き合ってください。」

とイーナは肩で呼吸していた。

するとレナードはイーナの剣をとり、

「疲れた体では体得することもできないよ。」

とレナードは剣を片付ける。

「イーナ・・・今日一日クタクタだろ?今日はもう寝よう。」

とレナードは部屋をでようとすると、

「!?イーナ?」

とレナードの背中からイーナは抱きついてきた。

「どうしたんだ!?イーナ?」

「・・・わからない。今はこうしていたいの。」

イーナの体が震えているのを感じた。

「イーナ・・・。何をそんなに怯えてるんだい?」

「私が・・・怯えてる?」

「イーナ・・・、イーナには武器は似合わないよ。」

「私にとって・・・レナードはなに?」

「え?」

「私はいつまでもレナードの傍にいたい。レナードに釣り合う人になりたいの!」

そう言い出すとイーナの瞳から涙がでてくる。

「・・・だから稽古しようっていったの?」

「・・・。」

「俺にとって・・・イーナは。」

と言ってレナードは振り返り、イーナの目をじっとみつめた。

「俺にとってイーナは、かけがえのない人だ。」

「!?」

「俺はイーナの純粋な気持ちに触れて、守りたいっと思った。この純粋を汚したくないって思ったんだ。」

「レナード・・・。」

「だから・・・イーナに武器は似合わない。・・・イーナ。好きだ。」

「レナード・・・。」

「俺は・・・イーナにはずっと俺の傍にいてほしいんだ!」

「レナード・・・。私も・・・好き。・・・私、レナードがずっと眠ったままのとき、ずっと後悔してたんだよ。・・・私が強ければ、レナードやココちゃんだって傷つかなくてよかったかもしれないって。・・・でもやっぱり私・・・人を傷つけるようなことできない!レナードを守りたいって思ってるのに、剣を持てばレナードの気持ち、少しわかると思ったのに・・・守るために人を傷つけることなんて・・・わたしにはできない!」

「できなくていい。俺は剣を持って戦うイーナより、薬を作って、皆を癒してるイーナの方が好きだ。」

「私だって・・・霊を浄霊する時のレナードが好きだよ。あの時のレナードの顔・・・優しい顔してるんだもん。その顔してるレナードが一番好きだもん。」

「う・・・うぅ・・・。」

2人は想い続けた気持ちが膨らんだ風船が破裂するように、イーナはレナードに、レナードはイーナに想いをぶつけた。

そして・・・今度こそ一日が終わろうとした。

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