表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/44

第六話 絆

第六話は、先日の白き魔物ことココの事件があったミミネイア、2人のことを心配するイーナだったがココとレナードは気丈に振る舞う。その姿をみてイーナは元気になる。一方プライドを傷つけられた火鯉 宗太はレナードのことを調べようと図書館で本を漁るとある本をみつける。


 翌日、白き魔物ことココの事件が過ぎ、レナードとココは堂々と町中を歩く。イーナもその様子をみて一緒に歩いていた。先日の学校の屋上で初めてみせたレナードの涙、不安に怯えた一面。普通の人とは思えないような力をもったレナードを見て、所々怯えてたイーナだったが、新たに発見した一面をみて、レナードも私達と同じ人としての感情や苦悩があると思い始めた。

「ねぇねぇイーナ!? ここの名物料理ってな〜に?」

昨日のことが嘘のように振る舞うココ、

「ここの名物料理ね〜…う〜ん」

「イーナ。ココに名物料理を言っても無駄だよ」

レナードが割ってはいった。

「え?」

「ココの口に入ればみんな名物料理になっちゃうからな!」

「レナードのまずい料理だけは名物料理には入らないわ」

茶化すレナードにココも負けじと言う。

「俺の料理が名物料理として並んだら面白いな」

「やめて…、そしたらみんなの味覚を私疑うわ」

ココとレナードは気丈に振舞っていた。

―2人とも昨日のこと引きずってるかとおもったけど、思い過ごしみたいね。

イーナは2人の振る舞いをみてバカバカしく思えて会話に入る。

「そうね〜、レナードがだす料理が名物になったら、私とココで断固として講義しましょ!」

「俺の料理で遊ぶな!?」

「ふふふ」

「くすっ」

「アハハハ!」

一行は笑いながら町の中を散策し始めた。

「でも本当に美味そうな料理をだしてる店知らないか?」

改めてレナードはイーナに聞く。

「魔法学校があるのと道具が売ってることしか知らないから、どこで食べれるかなんて私も知らないわよ」

「はぁ〜…ご飯〜」

皆目検討つかないイーナはそう話すとココがレナードの頭でうなだれる。

 すると目の前にミーミが歩いているのをイーナが見つける。

「そうだ、ミーミなら知ってるかも?」

イーナはミーミの元に駆け寄った。

「ミーミ!?」

「あっ! イーナ!?」

「ねぇミーミ、この辺で美味しい料理があるとこ知らない?」

イーナはミーミに尋ねる。

「この辺だったら、たしかこの道をまっすぐいくと美味しい豚肉料理があるよ」

ミーミは指を差して説明する。

「もしかして今から食べに行くの?」

今度はミーミが尋ねた。

「えぇ私のお連れがとっても食いしん坊さんがいるからね」

ココをみるイーナ。

「きゃん〜(イーナ〜)!?」

不満そうな声をだすココ。するとミーミは

「この人が?」

ココではなくレナードをみて言った。

「はっ!?俺?」

大食いではないレナードは驚きもにた感じできょとんとする。

「きゃん(私じゃない)!」

ミーミの勘違いでココも驚く。

「ははは…まぁそんなところかな」

イーナは苦笑いしてこの場を収める。

「俺は大食いじゃ―――」

「いいねー!? いっぱい食べる人好きだよ」

訂正するレナードの言葉はかき消され、ミーミはレナードをじっとみた。

「は…はぁ」

「じゃ、あたいもご一緒させてもらおっかな」

呆れるレナードに一行に加わろうとするミーミ。

「え!?」

「実を言うと…道具を買い漁ってたら、手持ちのお金がすっからかんで…」

驚くレナードとイーナにミーミは苦笑いしながら事情を説明する。

「全く…いい年してお金の管理もできないの?」

「いや〜その…あははは」

イーナは呆れながら話すと言い訳する言葉もなくただ笑うミーミ。

「…いいわ、一緒にたべましょ。お金のことならレナードがなんとかしてくれるよ」

「おい!? 俺もお金もってないぞ」

イーナの話しの矛先をレナードに向けられて驚くレナード。

「…イーナ、あんた大丈夫?」

ミーミは心配そうにイーナをみる。

「ふふっ冗談よ、お金の管理は私がしてるけど、でもレナードがいると、お金に困ることはないのはホントよ」

イーナがそう言うと、ミーミはレナードをみつめる。

「ふ〜ん、彼がね〜。彼が何するの? やっぱりギルドとかの報酬とか?」

お金の出処を想像するミーミ。

「ギルドは本当にお金に困ってる時しか頼らないよ」

「じゃあ…一体どうやってお金稼ぎしてるの?」

ミーミはレナードに問い詰める。

「それは秘密」

レナードがそう言うと、今度は話しをイーナに向ける。

「ねぇねぇイーナ!? イーナなら教えてくれるよね?」

お菓子をねだる子供のように目をキラキラさせてミーミは尋ねる。

「レナードが秘密って言ってるから、私の口からは言えないわ」

イーナも固く口を閉ざす。それをみたレナードは笑顔になる。

「え〜2人ともいいじゃん、ケチ」

「ごめんね、いじわるで言ってるんじゃないから」

「わかってるよ、少しイーナを困らせてみたかったんだ」

いじけるミーミにイーナはなだめるように話す。

「・・・。」

レナードはミーミをじっとみつめた。それをみたココはそっと首に巻きつけた尻尾に少し力がはいった。

「最近ミーミは何してるの?」

話題をかえるイーナ。

「あたいは自分の腕を磨く修行するため、町から町へとてんてんと動いて、その町のギルドの討伐依頼をこなしながら旅をしてるよ」

ミーミは拳にぎゅっと力をいれて語りだした。

「相変わらず戦うの好きだね」

「そっちこそ何してるの? まだ師匠がつくろうとしてた材料を探してるの?」

「えぇ…」

ミーミの言葉にイーナは少し暗い表情になった。

「あ!? 着いた、ここだよここ」

ミーミが走り出して、話してたお店を指差す。

「お!? さっそく食べられるな、ココ、イーナ」

先を歩きながら店に入ろうとするレナード。

「そうだね。ココじゃないけどお腹空いた〜」

イーナも店に入る。

「いらっしゃ〜い、適当なところに座ってメニューでもご覧になっててくださ〜い」

そう聞いて適当なテーブルに座るレナード達。

 メニュー表を開き、各々注文をする。

「ご注文は何になさいます?」

「えっと、これが3つ、これを2つ、それとこれを4つ下さい」

レナードがみんなの分を注文する。

「は!? はい…かしこまりました」

注文を取りに来たお兄さんが驚きながらメモをとって奥へ戻る。

「あんた…結構食うんだな」

注文した量にミーミが驚く。

「ん? これ俺の分じゃないよ。俺のこれだけだ」

メニュー表を見せて指をさすレナード。

「え!? あたいはそんなに食べないし、イーナだってあたいより少食だし」

考えるミーミ。そして残ってるのを考えると…ミーミがココを見ると、涎を垂らしながら今か今かと待ち構えてる様子が映る。

「え…!? この小さい狐が残り食べるの?」

驚きを隠しきれずに言った。

「ふふっ」

イーナは微笑む。

 そして注文した品が来ると、物凄い勢いで食べ始めるココ。

「がつがつ…ん〜ま〜い…はむっ…もぐもぐ」

ココの食べっぷりを店内にいた客人は釘付けになる。レナード達はもう慣れた様子で自分の注文した品を食していた。

「あ…あぁぁ!」

レナードとイーナ以外の客人は声をあげた。そしてココによるココのための食戦争が終わった…。

「うぉ〜…」

パチパチパチパチ、と店内全体にココの食べっぷりに見惚れて拍手が響き渡った。


 南側退魔師本部の図書館に、その場所に似つかわしくない人物が必死になってページをめくっていた。

―くそっ…あいつのもってる刀…あの狐…何か書いてないか?

宗太の目は血走っていた。心配する鈴が飲み物を運んできた。

「はいお茶…お兄さん、少し休んだら?」

「うるさい鈴!? …俺は…あいつを許さない、…あいつは俺のプライドを汚したんだ、…絶対許さない」

本を漁る宗太が復讐の炎を燃やす。

「お兄さん…」

「うーん…」

お茶を一口飲み、本に穴が空くほど睨み続ける。

 そしてしばらくすると、

「…ん?『白狐は死神』?」

という項目に目を見張る。

「『白狐…古来より動物の中で1、2を争うほどの霊力、妖力の持ち主、だがその強大な力、封印するものに値するほど。主なき霊獣は一度暴れれば世界の半分は業火にて焼き尽くすほど。業火で焼かれた生物の骸を貪るその姿にて、様々な名称が付けられており、未だ真の名は解明できず』」

宗太は白狐が書かれてある項目を読み始める。

「『白狐…別名。死神の使い』こんなすごい生物をあいつはどこで…」

とまた調べ始める。鈴は宗太のことが恐ろしく思えはじめた。

「お兄さん…鈴達退魔師だよ? 退魔師としてのお勤めをただすればいいだけだよ。それだけで世間のお役にたてれ―――」

「うるさい!」

心配する鈴に宗太は怒鳴る。

「…」

泣きそうになる鈴、だが肉親が兄だけしかいない鈴にとっては宗太だけが生きる全てだった。鈴はただ宗太の傍にいることしかできなかった。

「最後に発見された場所…、くそっ! 肝心なところが書いてないじゃないか」

悔しがる宗太。

「なら刀だ」

今度は刀の項目が書いてある本を読み漁る。

「退魔師なら、空中に浮いている剣を自在に操れないはず。…ならば」

とページをめくる。

「…。あった!『妖刀一覧』この中に…」

また妖刀の一覧のページをめくると、

「よし!? あった」

と言って宗太の顔がだんだん明るくなりだした。

「…よし。この方法でもう一度リベンジしよう」

宗太はそう言うと本を片付け始め、図書館をでていく火鯉兄妹。

 そして詰所にいき巡の元に宗太は一枚の紙を提出する。

「ん?『休暇願』? 一体どうした、宗太?」

巡は宗太の表情を伺う。その顔はなにか思いつめた顔をしてた。

「ここ一週間程実家にいって修行をしようとおもいます、それでは」

お辞儀をすると宗太は詰所をでていってしまった。

「お…おい宗太!? 鈴、何があったんだ?」

「…ごめんなさい」

鈴は謝りながら詰所をでていってしまった。

「…何もなければいいが。」

宗太と鈴の身を案じる巡。


 料理店からでていくレナード達、レナードの手にはお腹いっぱいになって満足したココが抱き抱えられていた。

「ん〜…美味しかった」

ココは今にも破裂しそうなお腹を抑える。

「やっぱりココの食べっぷりはいつみてもすごいな、それに久々に拍手までもらったしな」

レナードはココのこと思い、ゆっくりと歩く。

「私は町の中でココが食べてるところ初めて見るけど、ホントすごいよね」

イーナもレナードの歩く速度に合わせて歩く。

「あたい…凄すぎて言葉がでなかった」

未だ唖然とした表情でだした言葉がこれだった。

「レナード…もう少ししたら動けるようになるから、もうちょっとこのままでいたい」

甘えた口調でみつめるココ。

「うっ…やめろココ、そんな顔するな」

顔を赤くするレナード。

「ココちゃん…なんだかその格好赤ちゃんみたい」

「今は何言われても許そう、私は今は赤ちゃんなのだ〜」

イーナの言葉を聞いてすっかり甘えモードになってしまうココ。

「レナードってホントココに弱いよね」

今度はレナードに話しを向けるイーナ。

「う…うぅ」

何も言えないレナード。

「ほらっ…もう少しで宿につくからそこで一旦休憩しよう」

レナードがココの身を案じながら歩く。

「やだ〜、私もう少しこうしていたい〜」

「・・・恥ずかしいこと言うな」

駄々こねるココにレナードは恥ずかしさでまた顔を赤くする。

「他の人には聞こえないからいいでしょ〜」

「イーナがいるだろう」

「イーナはいいもん。もう旅の仲間だから」

ココの言葉にイーナは笑顔になる。

「…」

一緒についてきてるミーミは何を話してるかわからない様子だった。

 すると突然ミーミがレナード達の前にいき、

「ねぇねぇこのあと暇?」

あとの予定を聞くミーミ。

「一旦宿に戻って休憩したら暇だな」

「じゃあこの町の案内や魔法学校の案内とかどう?」

提案するミーミにイーナが割って入る。

「私も道具とか新調しようかなって考えてるから行くつもりだけど、レナードはどうする」

「俺もいくよ」

即答で答えたレナードにイーナは驚く。

「え!? だってあんなに魔法に関して無関心だったじゃない」

「ココと…約束したから」

顔をそらすレナード。

「やっぱりココちゃんには甘いんだから」

茶化すイーナだった。


 宿に着いた一行はココが動けるようになるまで各々思いの時間を過ごしていた。するとレナードとココがとってる部屋にイーナが近づく。

コンッコンッ…イーナがドアをノックすると、

「イーナです、入ってもいいですか?」

ドアの向こうでいつものレナードが返事をする。

「どうぞ」

と言葉を聞いて、部屋に入るイーナ。するとレナードは何やら調合をしている。

「レナード? 何作ってるの?」

イーナが尋ねる。

「うん? これは剣を清めたり強化するための聖水を作ってるの」

レナードは調合しながらイーナにこたえる。

「せいすい?」

「そう。この4本の剣はある程度の力が持てば抜いて斬ることができるけど、力がない人が抜こうとすると抜けないんだ」

レナードの傍に置いてある4本の剣を差す。

「試しにイーナ、抜いてみて」

とレナードが言う。

「うん…」

返事をしてイーナは剣を1本持つと少しよろめく。

「お…重い」

「意外と重いだろ?」

「うん…うっ! …この!」

剣の重みを実感し、必死に抜こうとするイーナ。だが抜くことはできなかった。

「だろ? 貸して」

「なんか悔しいな…はい」

感想いってレナードに剣を渡す。するとあっさりと抜いて、サーッと刃と鞘の擦れる音が響く。そして収まってた剣先を露にする。

「すごい…力ってやっぱり退魔の?」

「そう。でもこの剣は主を選ぶんだ」

「剣が主を?」

イーナは聞き返す。

「おかしなはなしだろ? 別に謎かけでもなんでもないんだ。ホントに選ぶんだ」

レナードが再び語る。

「じゃあ選ばれなかった人がその剣を抜いたらどうなるの?」

イーナが聞くと、今度はココがしゃべりだす。

「主と認めない剣は暴走し始める。そして抜いた人を殺したらまた剣は鞘に戻る」

話す内容は残酷なのにココはベッドでゴロゴロしながら言う。

「剣自身が人を殺すなんて…」

言葉を呑むイーナ。

「怖いか?」

レナードはイーナに聞く。

「えぇ…ものすごく」

「暴走する剣を退魔の力で押さえ、その力を認めた剣は真の力を発揮する、『斬る』剣が『守る』剣になるんだ」

レナードはどこか誇らしげに語った。

「斬る剣が守る…」

「とかいってるけど、本当は俺もよくわからないんだ。だけど感じるんだ」

レナードは剣を見入る。

 すると調合が一段落ついたか次の段階に取り掛かろうとする。

「よしっ! 次はこの液体を…」

と言って、刃がない剣を抜き、鞘の中に先程調合した聖水を流し込んだ。

「それは?」

イーナが尋ねると、レナードは無言になり集中する。

「今から清めて強化するんだ、少し静かにしてみてて」

代わりにココが説明する。鞘の中に注ぎきると剣を収め降り始める。すると剣から煙があがる。煙があがると剣を抜いて、4本あるうちの1本を取り剣を抜いて、剣先を露にする。

「…」

レナードは鞘にいれた聖水を少しづつ剣先に垂らす。その液体は調合した水水しさはなく、ドロドロになっていた。剣が半分かかったところで注ぐのをやめ、布で丁寧に磨き始める。イーナはその様子に釘付けになる。

 ドロドロの液体がなくなるまで磨くとその剣はまた元気を取り戻したようにキラキラと光りだした。

「すごい…きれい」

イーナはその剣に見入ってしまった。

「きれいだろ、昔は『妖刀』と恐れられた剣だけど、生き物でも、道具でも、愛情を注げばきれいになるんだよ」

そう言ってレナードは磨いた剣を鞘に収め、次の剣の清めと強化を移る。

「昔は『妖刀』だったんですか?」

作業中のレナードに代わり、ココに尋ねた。

「そう。剣自体は無害な物だけど、以前の持ち主がその剣の切れ味、特性に惚れて、亡くなる時に剣の本質を見抜けないコレクターや愛剣家から守るために呪いをかけたんだ。それが『妖刀』と呼ばれるようになったんだ」

「へぇ〜」

「イーナだって大切な道具とかは大切にして欲しい人に使われて欲しいと思うでしょ?」

「うん」

「それと一緒なんだよ。レナードも1人の剣士、剣のことはわかってるからこそ、その剣を大切にしてるんだ。こうやって、手入れを欠かせないんだ」

そう言ってるとレナードは4本目に手を付けようとした。

「すごいね、レナードって。…ココちゃんのこと、退魔師としても、剣士としても」

改めてレナードの凄さを実感する。するとレナードが口を開いた、

「イーナだって、薬をつくれるじゃないか。それだけでもすごいよ」

レナードもイーナの作る調合技術を褒める。

 手入れを終えたレナードは出かける準備をする。

「よしっ! ココ、動けるよな?」

「私はもうすでに動けれますよ〜」

ココはベッドの上で立ち上がる。

「イーナもいいかい?」

「うん、いつでも」

と言ってイーナも立ち上がる。宿を出るとそこにはミーミが待っていた。

「あ!? 休憩はおわり?」

ミーミが笑顔で声をかける。

「ごめん、またせちゃって、…もしかしてずっとここで待ってたの?」

レナードは尋ねる。

「え…いや、あたいも用事済ませてさっき来たばっかだよ」

焦りながらミーミは応える。

「そっか。じゃあ町と学校、どっちから行く?」

レナードが聞くと、

「買い物したいから町からがいいな」

イーナが言い出す。

「じゃあ町から行こっか。…ミーミ、案内してくれる?」

レナードが案内を頼む。

「いいよ。じゃあ観光スポットから―――」

「いや、町で買い物ができるところでいいよ」

案内しようと場所を提案するミーミにレナードは簡潔に済ませようとする。

「あっ…そうだよね、じゃあ道具とかは大体こっちで売ってるからこっちね」

ミーミは先導する。

「…」

「レナード?」

ココは何か感じたレナードに声をかける。

「いや…なんでもない」

―あの気配…悪い方にいかなければいいが。

レナードは少し不安になる。


 しばらくあると、レナードにとってみたことない道具ばかりが陳列されていた。

「これが調合必須の釜や鍋だよ。…こっちも調合の分量を量る…そしてこっちが…」

ミーミは初めて見るレナードにいろいろと道具の説明をし始める。するとココがするりと降り始める。

「ココ?」

「私、イーナと一緒にいるね。どうも私あの人苦手で…」

と言ってイーナについていく。するとココがいなくなった途端、気のせいかレナードに近づきつつあるミーミ。

「レナードさん、あと知りたいことは?」

「え…えっと。じゃああっちの店―――」

「じゃあ行こう!」

ミーミはレナードの腕を掴んで走っていった。


 一方イーナとココは、

「えっと…あ! あった」

イーナはブラシを手にとると、ココがイーナのスカートを口で引っ張る。

「どうしたのココちゃん? レナードは?」

しゃがんでココに尋ねる。

「レナードはミーミと一緒にどこか行っちゃった」

やや不機嫌そうに言う。

「ミーミは自分勝手に動く子だからね。ココちゃんはレナードのそばにいなくていいの?」

「ホントはいたいけど…あの子とはどうも苦手で…。それにレナードも何か気にしてる様子だし」

ココは思ってることを口走る。

「ココちゃん…もしかして妬いてるの?」

「妬いてるのもあるけど…私、イーナと一緒にいるレナードのほうがいいな。」

ココはこたえる。

「それってどういうこと?」

尋ねるイーナ。

「いってもいい?」

ココは逆にイーナに聞こうとする。

「いってもいいよ。なに?」

にこやかに言うイーナ。

「私…レナードとイーナならお似合いだなって思ってるんだ」

ココは少し顔を赤くして言い出す。その意味を理解したイーナも赤くなる。

「えっと…ココちゃん、今日はどうしたのかな〜?」

はぐらかすイーナ。

「レナード…イーナと会ってからだんだん変わってきたよ。だんだん人を信用し始めてる」

ココがレナードのことを言う。

「そう。レナードが」

そんなココをみてイーナはそうつぶやく。

「どこにもいかないって信じてるよ、私」

ココに笑顔を向けながらこたえるイーナ。

「…そうだよね。ごめんね不安にさせるようなこといって」

「ココちゃんもレナードと一緒だね。」

頭を撫でながらイーナは優しく話す。

「なんで私があんな無粋な…」

意見するココだが、明らかに動揺している。

「レナード…私がいるいないに関わらず、ココちゃんのこと心配そうに気遣ってるじゃない。ココちゃんもレナードと私のこと心配してくれてるでしょ?」

イーナはそう言う。それを聞いたココは顔をそらして、

「私は…レナードの相棒だから」

「ふふふっ、やっぱり一緒だね」

イーナは微笑みながら言う。

「だから一緒じゃ…うわ!?」

話しをしてる途中でココを抱き上げるイーナ。

「今日は私がココちゃんを独占できる日だね」

そう言うとカーッと赤くなるココ。すると抱き上げられたココは動き出し、頭にしがみつき、尻尾を首にまきつかせた。

「…なんだかこっちのほうが大きくみえるな」

ココがボソッと感想を言う。

「仕方ないでしょ。私はレナードみたいに背高くないんだから」

言いながらイーナは歩きだす。

―レナード…ココちゃんとこうしていつも町や外を歩いているんだ。

ちょっとだけレナードになった気分で次の道具屋にいった。


 レナードはミーミに連れ回されてクタクタになっていた。

「み…ミーミ、ちょっと休憩」

レナードは手を膝につき肩で呼吸する。

「男のくせに体力ないな〜」

ミーミはやや小馬鹿にする。

「お前がいろいろ連れ回すからだろう」

レナードは呼吸を整えながら言う。

「あ〜もう店はもういいから、次学校いこ」

レナードが歩こうとする。

「待ってレナード!?」

それを追いかけるように走るミーミ。するとレナードは疑問に思ったことを言う、

「学校って勝手に入っていいの?」

ミーミに尋ねた。

「普通は入れないよ。でも生徒や卒業生同伴だったら入れるよ」

ミーミはこたえる。

「じゃあ俺はミーミがいないと入れない訳か」

「そ。だからあたいがいないとはいれな〜い」

勝ち誇ったように話すミーミ。

「ふ〜ん…。じゃあミーミがいなかったらイーナと一緒にいこ」

レナードがイーナのことを言うと、

「じゃあ今から学校にいこ!?」

レナードの腕を掴んで走り出すミーミ。

「ちょ…走るなって!?」

その言葉は聞き入れてもらえず、学校まで走っていく。

 そして着く頃には、

「はぁ…はぁ…なんか飲み物」

レナードがキョロキョロするとミーミがどこからか飲み物を持ってきた。

「はいっ」

「ありがとうミーミ」

ミーミにもらった飲み物を口につけると、少し異様な感触にレナードは驚きむせ始めた。

「ゲホッ…ゲホッ…なんだこれ、辛い!?」

「ん? それジュースだよ」

「じゅーす? なんだそれ?」

「野菜や果物をぐちゃぐちゃにするとジュースができるの。しらないの?」

「それは知ってるけど、なんか口の中でシュワシュワするし、飲み込むと痛くて飲みづらいんだが」

「それは魔法学校がつくりだした、新感覚のジュース、名づけて『びっくりジュース』」

「なるほど…味は美味しいが飲み物にびっくりはいらない」

レナードはその味覚についていけなかった。

「もういい! 残りあげるよ」

レナードはミーミにびっくりジュースを渡す。

「え!? …これ学校では人気のジュースなのにな〜」

お気に召さない様子のレナードをみて少々がっかりする。

「喉は潤った。学校案内してよ」

急かすレナード。

「はいはい、じゃあ行きましょ」

レナードからもらったジュースを飲み干し、魔法学校に向かう。2人は入門許可書にサインをして学校にはいる。

「えっとね…魔法には―――」

「確か、魔法薬、戦闘魔法、兵器魔法があるんだったよね」

説明しようとするミーミに先にレナードが言った。

「え…よく知ってるね」

「イーナに聞いた。魔法薬ってどこでみれる」

レナードはミーミに尋ねる。

「魔法薬はこっちで見学できるよ。でも近くだと生徒の迷惑になるから窓から見学になる形になるけど」

「勉強してる生徒を邪魔したくないからそれでいい」

レナードは承諾する。そして魔法薬を学んでる部屋に着く。

「ここですよ」

ミーミが案内すると、レナードは食い入るように見学する。本を開き何やらメモをとる人や、覚えた調合を実践する人、数人で話しをする人、様々な方法で勉強する光景をみて少しレナードは憧れる。

「・・・は〜」

と声を漏らす。するとミーミが腕を掴んで、

「今度はあたいの得意分野を案内してあげる」

といって、レナードを連れて歩きだす。レナードを連れてきた場所はさっきの魔法薬と違って、広い部屋に様々な武器、そしてその武器を使って的に思い思いの魔法をあてたり、生徒同士で戦いあっていた。

―一種の道場?

レナードはそう思ったとたん、ミーミは何やら年配の人と話しをしていた。しばらくしてレナードの元に駆け寄り、

「今から魔法使いの戦いをみせてあげるね」

「え!?」

驚いてる間に年配の人は生徒達に呼びかけ、部屋の端で見学する。

「ちょ…俺は?」

レナードがミーミに尋ねると、

「他の生徒みたいにどこか端に行ってあたいの戦い方みててね」

ミーミは前にたつ。仕方なくレナードは端にいって見学する。

「ルールは時間無制限の相手が倒れるか『参った』と言うまでの一本勝負」

部屋の真ん中で年配の人がルール説明をする。ミーミはお気に入りの武器、クラブを手に装着する。相手はミーミに比べるとまだ若い男子生徒、その手は剣をもっていた。

―剣と拳か…魔法使いの戦いってどんなのだろう?

と少し興味が沸くレナード。

「始め!?」

年配の人が合図をする。

 先手を打ったのはミーミからだ。右、左、右と拳を突き立てるミーミ、それに対して相手はその拳を的確に避ける。右、左、時々蹴りもいれ、相手の懐に近づこうとするミーミ。すると相手は一気に後退すると剣を前に突き出し、突進する。

―勝負あったな。

レナードはそう思うとミーミはその突きを避け、相手の剣をもってる手に拳をいれようとした。が、拳を突き出すと、突進した相手の姿が揺らめきだした。

「!?」

気づいたときはとき既に遅かった。相手はミーミの背後に周り、背中を斬りつけた。

―幻影か!?

魔法武器の特製を理解するレナード。そしてミーミはその場で倒れ込んだ。

「勝負あり」

試合終了の掛け声をする。パチパチパチパチ…見学してた生徒達は拍手する。

「いい試合だった。ミーミ!? お前はちっとも成長してないな」

年配の人がミーミに声をかける。

「すいません…先生」

起き上がり肩を落とすミーミ。するとレナードがミーミに駆け寄り、

「もっと相手の動きをみるんだ。それにこれは魔法使いの戦い方だろ? それに対応する戦い方があるはずだ」

ミーミに注意する。

「うぅ…」

返す言葉がないミーミ。するとレナードが年配の人に声をかける。

「俺も参加させてくれませんか?」

「え!?」

レナードの言葉に皆は驚く。

「構わないが、相手は生きてる人間。こちらの使用する武器で戦ってもらいます」

そう提案する年配の人にレナードは

「俺に武器はいらない」

と言うと、それを聞いたある生徒が名乗りをあげる。

「魔法使いじゃないお前がどう戦うんだ!? 普通の人間に勝てないって証明してやる」

喧嘩腰に言い放つ。

「普通の人間? 普通の人間でも勝てれるってこと、俺が証明する」

レナードも啖呵をきる。

 そしてレナードと自信ある生徒が前にでる。その武器は人間と同じくらいかやや小さめの大きな斧を片手でもっていた。

「ルールは先程と同じ、時間無制限、相手が倒れるか『参った』と言うまでの一本勝負」

ルール説明をする。

「俺はレナード。お前は?」

「俺はリックだ」

お互い火花を散らしながら簡単な挨拶をする。

「始め!?」

合図をすると先手を打ったのはリックからだった。

「オラァー!」

気合いの声を吐きながら斧をひと振りすると炎がレナードの前に現れる。

―炎か…。

レナードは構えた状態で相手の動き、武器、癖を読み取ろうとする。リックは炎をだしたあと、すぐにレナードに向かわず横に走りまたも斧をひと振りし、炎をだす。そしてまた横に移動し斧をひと振り、そしてあっという間にレナードの周りは炎で囲まれてしまった。

「レナード!?」

ミーミは思わず叫ぶ。そしてリックの次の一手は頭上高く飛び、レナードの真上に舞い上がった。そしてレナード目がけてひと振りしようと構えた瞬間、

―い…いない!?

炎で取り囲まれて存在するはずがいないことにうろたえているその時、

「戦法はわるくない…だが!?」

レナードも飛び上がって、リックの右横にレナードはいた。レナードはリックの武器を奪い、一回転してその武器で刀背打ちをリックの背中に叩きつけた。そしてリックは為すすべもなく床に叩きつけられた。

「勝負あり」

試合終了の掛け声があがると

「すげー」

「カッコイイ」

各々感想言う生徒達。レナードは武器を先生に返して

「ありがとうございました」

お辞儀をする。次にリックの元に行き、手を差し伸ばす、

「魔法に頼りすぎだな」

と言った。そして

「なかなかよかったぞ、あの斧相当重いだろ? それを何回も振るなんてすごいぞリック」

相手に敬意を表するレナード。

「すまなかった。生意気言って」

リックは差し伸ばされた手をとり立ち上がる。

「う…!?」

急に頭を抱えてレナードはその場で座り込む。

「お…おい」

リックは手をだすと、

「!?」

レナードは急いでその場から逃げるように部屋をでた。

「レナード!?」

追いかけようとするミーミ。そして思い出したかのように振り向き、

「ご指導ありがとうございました。また遊びに来ます」

と早口で言って部屋をでていくミーミ。


 学校中くまなく探すミーミ。だがレナードはみつからない、

「どこいったんだろう?」

心配するミーミ。、レナードはというと屋上にいた。

「はぁ…はぁ…危なかった」

レナードは落ち着かせようと呼吸を整える。

―今のは『悪意』。それも俺に向けられていた。…リックか? それとも他のだれか?

苦しみの原因を突き止めようとするレナードだが答えがみつかることはなかった。

「はぁ…はぁ…だいぶ落ち着いたな」

そして体調を万全か体を動かして確認した。

「よし、大丈夫だな」

戻るレナード。すると

「あっ!? ミーミ」

ミーミのことを今頃になって思い出すレナード。

「探さなきゃ」

レナードもミーミを探しに学校内を歩きだす。

―どこだ? …どこにいる?

カツッカツッカツッ…

廊下や各部屋、どこいってもみつからない。

―そうだ!? 入門許可書だ。

最初に入ってサインしたあそこにいけば何かわかるかも、そう思ったレナードは入口に向かう。

「すいません。俺と一緒に入ったミーミって子を探してるんですがここを通ってないですか?」

「ミーミ? 知らないね。帰ったんじゃない?」

「え…」

その言葉を聞いて思考を停止する。すると、

『これより閉門します。生徒の皆様、見学されてるお客様。お気を付けておかえりなさいませ』 

―これは町内に流した音声だ。…仕方ない、諦めてここからでよう。

レナードは放送を聞いて学校をでていった。

 一足遅くミーミが廊下の奥から入口にむかって走り出す。

「おいっ!? 校内は走っちゃ―――」

「すいません。ここに見慣れない剣士はいませんでしたか?」

入口で見張る警備員に注意されるが、ミーミの必死な表情に押される警備員。何気なく外を見ると、

「!?」

レナードが校内から出て行く姿が映る。

「レナード…」

ミーミは追いかけることもなく、その場で佇んでしまった…。

レナードが扱う剣を紹介します。

レナードの四本の剣は妖刀と呼ばれ以前の持ち主は悪しき者に渡らないために自分の血を剣に吸わせて呪術をかけたことから妖刀と化します。妖刀を自分の手中に収めるためには妖刀に力を示さなければいけません。妖刀を刃こぼれさせる、刀の柄の部分を斬る、退魔術で押さえる、この三つの中のどれかを実践すれば妖刀は新しい主と認め手中に収まることを許します。レナードは妖刀を四本持っているということは相当な手練とお分かりいただけたでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ