俺は俺の信ずる道を行く
新撰組は変わった。
世間の風当たりも、組織も。
どうして時代は変わっていくのか。
どうして人は変わってしまうのだろうか。
どれほど考えても答えは出ぬ……
俺はこの道しかしらぬ。
新撰組と歩んだ、この道しか。
「土方副長、俺はここに残ります」
この、会津の地に。
新撰組を受け入れてくれた、会津公のため、会津の民のために。
「斎藤……」
苦渋の決断だった。
新撰組とともに、この先も戦い続けたい。
土方副長を最後まで支えたい。
だが、おれはここに残ると決めた。
決めたからには、進まねばならぬ。
例え最後の一人になろうとも、この場所は守り抜かねばならぬ。
「俺は、新撰組を信じています。この先、厳しい戦になろうとも、変わらぬものであると」
「ああ、俺たちは変わらねえよ、誠に集った信念だけは、変わらねえ」
副長は言った。
誰かが違った方向に進みそうになった時は、ぶん殴って連れ戻してやると。
ここは大丈夫だ。
手綱を握っていてくれる頭がいる。
「副長、お願いがあります。隊を離れる俺が、こんなことを願うのは勝手かもしれませんが」
「なんだ、言ってみろ」
どこにも行くところがなくて腐っていた俺を拾ってくれた新撰組。
最後まで、一緒に戦っていたい。
「この会津の地で、誠の旗を掲げて戦うことを、許可していただきたい」
そういえば、土方副長は拍子抜けしたような顔をされた。
「改まっていうから何かと思えば、そんなことか。そんなこと、いちいち許可取らなくてもいいだろうが、お前は隊を離れようが新撰組の大事な仲間なんだ、新撰組の隊士が旗掲げて戦うのになんの問題があるってんだ」
そういって笑ってくれた、土方副長。
「副長……ありがとうございます」
「それじゃあな、元気でやれよ、斎藤」
もうすぐ、敵軍が来るかもしれない。
あまり長くこの場所に居座ることはできない。
「はい、今までの時間、一生忘れません。またどこかで会えることを願っています。副長、ご武運を」
「お前もな、斎藤」
そう言って副長は隊を率いて去っていた。
「島田」
「御意、……斎藤組長、本当に離れてしまうのですね……」
今では新撰組一の古株になっている島田。
監察の、頼れる男だ。
「ああ、俺はいなくなるが、副長のことをよろしく頼む」
「もちろんです、死んでも守ります」
そういう島田に、頼もしさも感じる。
「死ぬのは許さん、お前も生きて最後まで戦うんだ。俺が副長を任せれれるのはお前しかいない」
「……承知しました。では、」
「気をつけていけよ」
去っていく、仲間に熱くなる胸を押さえ、会津城に向かって歩き出した。
みな、どうか、武運を。