恋慕
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「お前、浮気しただろ」
「そ、そんな証拠どこにあんだよ!」
「ここだよ、ボケ」
トンと人差し指で机の上に置いてある女と男のツーショットを眺める。ツツ…と女の方を二、三度なぞってからグシャっと片手で丸める。ぽいと後ろに投げればゴミ箱に寸分違わず入った。
この男──宮崎健二は今回含めて五回の浮気をしている。
「タケ〜悪かったって!今回も許してくれよぉ」
ひいひいと泣き真似をして足に擦り寄ってくる。コイツはこういうことをすれば許してもらえるなどと甘ったれた事を考えている。バカバカしい。
そんな考えをお見通しの俺──竹内幸太はいつもの様に小さく溜め息をついた。
「てか同性愛自体が俺の運命の人にとって浮気になる訳で……」
「は?」
「いや、スマン」
同性愛が何だっていうんだ。
「な、許せって……」
「……しょうが、ねえなあ………」
俺達は所詮、世間が偏見を持つ同性同士で恋愛をしている身だ。浮気如きで裁判なんか起こしたら相手の女よりこっちがヒールになってしまう。だから俺は浮気をされても怒るだけにしている。
正直、俺は健二の浮気相手を怒鳴って殺してやりたいくらいには腹が立っている。
(けど、誘われただけで許しちまう俺はアホだな……)なんて、深いキスをしながら思う。
目を開ければ必死に許してもらおうとしてるコイツがいて胸がきゅうと締め付けられる。可愛い。 背中に腕を回すと一瞬体をびくつかせたが戸惑うこともなく健二も俺の背中に腕をやる。
気持ちいい
いつから降り出したのかポツポツと窓に雨が当たる音がする。それは次第に大きくなっていくが今はそんなことも気にならないくらい、深いキスに夢中になっていた。
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