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ローラの護衛

 フリードがダンジョン攻略を終えて戻ってきたのは、公爵邸襲撃事件より二日後の事である。攻略と言っても半ば囮作戦の一環だった為、ダンジョン最下層までは行っていない。別腹の兄弟4人は最下層の魔力だまりまで行こうとしていて、戻ってくるのはあと半月はかかる事と比べると、彼一人だけずいぶん早い。もともと独りで最下層まで行くことなど不可能なので、それはしょうがない事ではあるが。



「では、奴ら(・・)ではないという事ですか。兄様?」

「そうだね。襲撃を撃退した者たちの意見をまとめ、襲撃者自身から得られた情報を加味し、全てを総合的に考えれば誰もが同じ結論を出すよ。あれは“女神の使徒”と関係のない事件だった、とね」


 フリードは公爵邸の襲撃事件について聞かされ、最初に疑ったのが“女神の使徒”の関与である。時期を考えればそれほど不可解な発想ではなく、ごく当たり前の事と言えた。


 しかしそれは絶対にありえないと、得られた情報は否定を投げかける。


 まず、精霊魔法を使った者がいない。

 精霊魔法は“女神の使徒”の大きな特徴であり、戦闘要員が修得していないというのはあり得ない事だと思われた。一人二人であれば適性などの問題から可能性を考えられるが、15人いた襲撃者全員が使えないというのは考えられない。


 次に、襲撃者が自害したという事。前回の捕虜がそういった事をしなかったのに、今回は自害した。その理由は何かという話になる。

 引き出されては拙い情報を持っていた、その可能性は確かにある。前回は必勝を期して挑んだのに対し、今回は嫌がらせというか失敗を加味してそのような手段を選んだという可能性もある。

 それでも違和感は残る。

 こういった事(自害)を行う人間とは、相応の訓練を積んでいることが前提だ。それは勿論、精神的なものも含まれる。つまり最初から自害することも含め、長く修練を積んでいる者なのだ。状況によってする・しないを切り替える音は、普通はしない。


 そして、敵の作戦目標。ローラの誘拐。それは数ヶ月前に起きた事件を彷彿とさせる。前回の事件が終わっていなかった、その可能性が高い。

 また、連れ去るという手順を“女神の使徒”側がするメリットがあまりない。人質として使えるようで使えないからだ。連れ帰れば拠点一つの場所が明るみになるし、地の利と数で劣る使徒側には人質作戦に失敗すれば致命傷になりかねない。それにローラに拘る理由は無いし、むしろメルクリウスをどうにかするほうがチラン側には痛手である。優先順位の付け方がおかしい。



 そうなると、犯人は誰かという話になる。

 前回の調査で、ローラを購入しようとしていた貴族の家を潰した。しかし、その貴族が黒幕ではなかったら? 例えばだが、囚われたローラを、さらにそこから奪うような計画だったら? 真の黒幕は、まだどこかにいるのかもしれない。

 これは考えても分からない事だが、その黒幕にとってローラがどういう存在であるのかも重要だ。奴隷に落してまで手に入れたい、奴隷に落して手に入れたい、似たような言い回しだが、その意味はずいぶん違う。


 追加で調査が必要になるが、その労力が、今のチランには無い。

 “女神の使徒”側を警戒しなければいけない時期を狙ったのか、ただ単に一回失敗した報告を受けてまたすぐに動いたのか、そのあたりも分からない。

 なんにせよ、嫌なタイミングで襲撃を受けたわけである。





 状況整理と未来予測を含めた全ての話を聞き終え、フリードは顔をしかめる。

 ただでさえ“女神の使徒”の件でゴタゴタしている最中である。これ以上敵が増えるのは嬉しくない。可能なら各個撃破したいところだが、どの敵も姿を見せないため、フリードに打てる手はほとんど無い。地道な調査のみである。

 最悪と言っていいかは分からないが、今回襲撃してきた連中の拠点などが引き払われるなどして無くなり、完全に無駄足になる可能性も低くはない。


 メルクリウスもすぐに打てる手は無い。

 前回の事件は元々遠方の貴族が画策したという事情もあり、一々連絡するのに片道1月以上の時間がかかる。現地に人を送り調査するにしても相手のホームでの仕事になり、不利は否めない。遠距離を繋ぐ連絡手段が無いため、たとえ証拠があったとしても現地に人員が付くまでに対処されるかもしれない。

 一応現地にいる人員に調査を依頼したが、その返事が返って来るまでに数ヶ月かかるだろう。



 さて、そうなると問題はローラの処遇である。

 本人に事件解決の能力があるわけでもなく、自衛能力も乏しい。現在の公爵家も手が足りず、これ以上護衛を増やすことは難しい。かといって何もしないわけにはいかない。現段階で護衛の能力が足りていないからだ。

 さすがに見捨てるという選択肢はとれない。

 では、どうするか。


「マキ、だったよね? 彼女に依頼するのが最善かな?」


 メルクリウスの決断は、マキに護衛をやらせるというもの。

 フリードの駒となる事を了承しているマキである。ローラを一度助けた相手でもあるし、顔を合わせた事もある。何より、能力的に申し分ない。

 それに、今回の襲撃に対してマキはローラを守るように動いた。そのまま放置すれば公爵家に打撃を与えることができたのに、である。ここにきてようやくメルクリウスはマキの事を信用し始めていた。


 フリードの同行を断った理由「ウォルターの訓練」というなら、ついでにローラの訓練もやらせるだけである。ある程度相手がごねても情に訴えゴリ押しするだけだとメルクリウスは決めた。

 フリードは相変わらず一緒に行動させるメリットが無いので、そのまま囮任務を続行させる。フリードは1人除け者であるがメルクリウスは気にしない。気にするのはフリードだけである。





 後日、マキとウォルターは謝礼とともにローラ護衛の任務を与えられる。

 二人は特に反対する事も無くそれを了承し、マキたちは3人でダンジョン攻略をしつつ、戦闘訓練をすることになった。

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