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ウォルターへのプロファイリング

 チランが公爵の死とテロリスト“女神の使徒”の話題で持ちきりとなる中、ウォルターとマキは平常運転のまま、ダンジョン攻略に勤しんでいた。


「ウォルは話題のテロリストたちを捕まえようとしませんの?」


 ダンジョンからの帰り道、マキはウォルターにそう切り出した。

 公爵が死のうと、テロリストが暗躍しようと、生きていくにはお金が必要である。ダンジョンに潜り、魔核を得、売却した資金で食いつなぐのは討伐者にとって当たり前の話だった。

 だから休暇を終えた二人がダンジョンに潜るのは当たり前の話だ。

 だが、落ち着いた様子のウォルターに、ここまで変化が無いというのも不思議な話とマキは考えたのだ。


「え? どうやってですか?」


 マキの質問に対し、ウォルターは本当に不思議そうにマキに聞き返した。


「さすがに、テロリストの相手なんてできませんよ。そりゃあ、誰かが襲われている現場に出くわせば戦うかも(・・)しれませんけど、自分から戦いに行くとか、さすがに無いです」


 ウォルターにしてみれば、今回の件は完全に他人事だ。そしてもう終わってしまった話でもある。

 テロリストが潜伏しているのかもしれないが、それを探す手段はないし、自分から探してまでどうにかする理由もない。やるべきは公爵家の面々であり、要請もされていないのに首を突っ込む理由などどこにも無かった。

 なおテロリストが精霊魔法を使うという情報も出回っており、興味を示した討伐者が動き回っているらしいが、結果は出ていないようである。いや、出ているのかもしれないが、隠蔽されているのかそれらしい話は流れていない。


「治安維持は人助けですわよ? それでもですの?」


 だが、マキは食い下がってみる。

 「人を助けたい」という願いを知っている身としてはどうにも、なんというか心に座りの悪い気持ちがあるのだ。


「出来ない人助けは、子供のワガママだと思いますよ。共倒れになるだけですからねー。せめて「出来そうかも」って思える事か、後先考えずに突っ走りたい事でもない限り動きませんよ。

 討伐者なんだし、ダンジョン攻略でお手伝い。それでいいじゃないですか」


 ウォルターはそう言ってヘラッと軽く笑った。

 気負う事の無いその言葉は、以前も聞いた内容だ。

 マキの目には、ウォルターがテロリストが潜伏していることを本心から「どうでもいい事」と捉えているように見えた。



 基本的にウォルターはリスクを背負ってまで人助けをしようとしない。

 例外的には緊急の事態としてローラを助けたように熟考しても「助けないと不味そうだから」と動くこともあるが、経営難の孤児院に興味や同情を示さなかったように積極的に助けようとは動かない。

 他のところでは感情任せに動いたバグズの件や大崩壊か何かで岩猿に襲われそうだったパッカーの宿場町のように、「誰かが襲われている・襲われそうである」時には動くわけだが。それが今回のテロリストのように「襲ってくるかもしれない」程度だと動こうとしないのは。マキはウォルター・人助け基準ラインの線引きに頭を悩ませる。


(敵の所在も判断基準の一つという訳ですの? ですが「できないから」と諦めたからと言って、ここまで平常心を保てるのも変な話ですわ。

 出来ないことに対する焦りや苦悩が全く見えないという事は、助けたいとも(・・・・・・)思っていない(・・・・・・)と言い換えることもできますわ。

 人助けは自己承認欲求で、他人に自分を認めさせる手段? 他人を「助けた自分を認める(無価値な)存在」程度に考えて……いえ、だとすれば岩猿の時が説明できませんわ。ああ、あの時はお金を稼ぐために積極的だったと考えれば……?

 強くなるのは、弱かった自分との決別? いえ、討伐者が強さを求めるのは常識でしたわね。単純に職業意識かも知れませんわ。ああ、でも、≪再生≫の魔法を使えるようになりたいことは過去の否定と考えてもよさそうですわ。

 ふぅ。今あれこれ考えても結論は出ませんわね。情報が足りませんわ)


 マキが気にしているのは、ウォルターという人間がよく分からないことだ。

 人助けをしたいというのは、単純に人が善い場合と人に自分を認めさせたいという場合、縁や義理に(しがらみ)といった利益などの繋がりを守る場合の三種類だ。善性、自己承認欲求、打算という訳だが、ウォルターの場合はそのどれに当てはめればいいのかをマキは図りかねている。目の前であれば本能的に、衝動的に動くが、それ以外は打算。それでも説明はできる気がするが、前提を一つ覆すべきかと考えてしまう。

 浮かび上がる疑問は「そもそも本当に人助けがしたいのか」というもの。

 人助けという行為の意味をマキとは違う視点でとらえている可能性もあるが、だとすれば何を目的に動いているのかよく分からない。


 現状を考えれば、精霊魔法が使えるマキとウォルターはテロリスト一味と間違われても仕方がない位置にいる。

 そんな状況であるからこそ、マキは仲間の考えを正しく理解して協力し合っていきたいのだが。

 ウォルターの根っこ(・・・)を理解できず、マキは落ち着かない気持ちになる。


(ワタシ自身、ウォルには隠し事をしていますし。言えない事もありますわ。こちらの本心を隠したままの関係というのが良くないのかもしれませんわね。今のうちに今後の方針も含めて話し合うために、ある程度の情報開示を以って関係の進展を望むべきですわね)


 単純に、ウォルターが自分で自分の考え方の歪さに気が付けていないという可能性もある。それでも話し合う事が無駄になるわけではない。一歩一歩、互いを理解し歩み寄らねばならないのだ。

 マキはウォルターとの打ち合わせを夜の予定に入れて、ほんの少しだが、自分の秘密を打ち明けることにするのだった。

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