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コルテスカ地下宮殿・地底湖エリア

 シュバルツらが来てから数日後。

 ウォルターとマキは、【コルテスカ地下宮殿】の上層5層目、地底湖に来ていた。

 同じ場所や同じ相手と戦い続ける事で状況に慣れてしまい、気持ちが緩んでしまうのを防ぐ為だ。

 地底湖に出没するモンスターの情報はしっかり集めているので、事前の準備は万全だ。


 地底湖エリアである上層5層目は、巨大な湖でなく小さな泉がいくつもある洞窟だ。泉は全て繋がっていて、洞窟の一部が湧きあがった水で浸水してできた物だ。水を嫌って巨大ミミズなどは生息しておらず、出るのは迷宮鰐ぐらいの場所である。


 地底湖に出て来るのは迷宮鰐ダンジョンアリゲーター。体長5mと、なかなか大きいワニである。全身が白く、地面に擬態することもある厄介な相手だ。

 戦い方としては単純で、噛みつきと尻尾の振り回し。戦法としては水中に隠れたり地面に擬態したりと、不意打ちを好む。

 その皮は鉄よりも固く、並みの武器では攻撃が通用しない。また、巨体に見合わぬ素早さを有しており、巨大ミミズよりも厄介なモンスターと言われている。だが、その分は素材に旨味がある。肉は巨大ミミズと比較にならないほど上質で、討伐者にはかなり人気がある。皮の方も動きを妨げないという柔軟性を維持しつつ鉄を超える硬さから、防具に向いている。非常に使い勝手が良かった。


 倒し方は、主に罠だ。“口封じ”と呼ばれる罠を使い、その名の通り口を開かないようにする。ワニの口は閉じる方には強いのだが、開く方にはそこまで強くない。そうして口を封じた後は無軌道に暴れまわり罠を外そうとする迷宮鰐をひっくり返し、無防備な腹に剣や槍を突き立てるというもの。罠が無くともひっくり返せば何とかなるのだが、口が開くときは隙が小さく、難易度が跳ね上がるのだ。



 ウォルターたちは罠を使わずに戦うつもりである。

 もちろん周囲に人がいない場所を選び、全力で討伐する気だ。


 最初はマキから口出しをせず、ウォルターだけにやらせる。

 周囲に人がいない事を確認するが、どこに鰐が潜んでいるかは教えない。マキの索敵能力は迷宮鰐の姿を正確にとらえているが、ウォルターにそこまでの芸当を求めるのは酷だ。だが、いつまでも「できない」では済まされないという事もあり、今回は特に索敵能力の強化を目的にしている。

 土中を行く巨大ミミズと違い、静かに潜む迷宮鰐を探し当てるのには別の感覚が必要になる。生き物である以上呼吸が必要なので不自然な空気の流れが発生するし、心臓が鼓動を刻む微かな音といった、気のせいと言ってしまいそうなモノを察知しなければならない。

 普通の場所ではそんなものを見分ける訓練など出来ないが、ここは幸いにも吸血蝙蝠などがおらず、迷宮鰐しかいないエリアだ。潜んでいることが前提で訓練できる。

 なお、ウォルターが自身の感覚を研ぎ澄ますため、巨大鼠達は戦闘になるまで呼んではいけない事になっている。



顕現せよ(マテリアライズ)! ≪精霊化≫! 火炎鼠」


 ウォルターが地底湖周辺を歩いていると、地面の一部に不自然と思われる塊があった。事前情報で聞いていた迷宮鰐の大きさと一致したため、ウォルターは巨大鼠を顕現させ、火炎鼠へと変化させる。

 火炎鼠を使うのは、相手の硬さが鉄以上という事で、攻撃に使えそうなバリエーションが他に思いつかなかったからだ。毒鼠という手もあるにはあるが、できれば肉を確保したいウォルターはそれを選択しなかった。


 火炎鼠は頭や尻尾といった部分を避け、胴体の半ばを目指し進んでいく。迷宮鰐は手足の短さもあり、胴体部分を狙うのが一番安全だ。足の速さといった不確定要素もあったが、移動というワンクッションがある分、いきなり攻撃される頭や尻尾の方よりは対応しやすい。だが。


「残念。ハズレですわよ」


 それもこれも、気になった塊が迷宮鰐であればこそだ。

 火炎鼠は無駄に岩を熱するだけで、そのまま送り帰された。



「……難しいよ」

「仕方ありませんわ。でも、不意を打たれるよりは、勘違いでも行動するほうがまだマシですわ。精進なさい」

「はい」


 ウォルターが外れを引くのは、これが最初ではない。ここまで何度も失敗している。

 しかし、稀に成功することもあり、なおかつ不意を打たれたことは一度も無かった。少々慎重が過ぎるように感じられるかもしれないが、マキの言うとおり不意を打たれない事の方が重要であり、臆病と思われる程度で良かった。

 もっとも、顕現させた分の魔力消費などを考えると、無駄に顕現させない方が良いのは確かなのだが。


 索敵には風の魔法を使い、空気の流れや小さな音を拾うのだが、例えば岩が笛のようになり、ウォルターを誤認させたりするので難しい事は確かだ。こればかりは経験を積むしかなく、簡単にはいかない。



 周囲の安全を確認すると、2人はそのまま野営の準備を始める。

 ここに来るまでに狩ったモンスターは迷宮鰐が3体。うち1体はマキが見本に狩ったもので、残りはウォルターの仕事だ。かなりのハイペースである。普通はこの倍以上の人数で同じ数を狩る。

 同じ階層にある休憩場を使わないのは余計な詮索などを避けるため。人数が少ないことで同行を申し出てくるギルドがあるかもしれないし、悪意をもった者もいるかもしれない。それに何より、ダンジョン内ということで利用には少なくないお金を要求される。利用する理由は無かった。

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