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とある一般的な討伐者たち

 公都チランにおいて、ランク4ダンジョンはメインの狩り場であると言える。

 というのも、上層までは物理攻撃がメインで十二分にやっていけるからだ。破魔札が必要になるのは下層、宮殿部分に入ってからの事である。上と下で棲み分けができ、中には休憩所までの護衛を主任務にする討伐者ギルドができるほどである。

 そうであれば当然、ランク4のダンジョンにこもる討伐者は数多くいる。中には人の来ない場所で狩ることをメインにする者も――



 討伐者ギルド【瑠璃色の剣】はチランに引っ越しをしたばかりのギルドである。

 以前に居を構えていたウーツの町にあったダンジョンが何故か機能しなくなったために公都まで足を運ばざるを得なかったのだ。いや、他にも候補に挙がった都市はあったのだが、ギルドマスターにしてギルド最強の討伐者シュバルツが「どうせなら公都にしようぜ!」と言い出したがために公都に決まったのだ。

 ランク1ダンジョンは来て早々に片を付け、ランク4ダンジョンが適正な、実力に見合ったダンジョンだと判断して挑み続けている。本当はもう一つ上のダンジョンに挑もうという話もあったのだが、上昇する危険度に見合う報酬を得られないのでランク4に留まっていた。例え数倍の報酬を得られるとしても、仲間を使い潰すことになれば収支はマイナスだからだ。長期的に安定した収入を得るのが、討伐者の基本姿勢である。無駄に冒険などしないのだ。



「……前方に反応があります! あと5秒後に下から! 2匹です!!」


 警告を発したのは、顕現魔法担当のドライゼ。感知能力の高い「紅玉獣(カーバンクル)」というモンスターを顕現していたため、他の誰よりも早く気が付いたのだ。


「全員配置に着け! 迎え撃つ!!」


 ドライゼの警告を受け、シュバルツが号令を下す。

 そうやって指示を受けると、全員が反射的に動き出す。瑠璃色の剣のメンバーは元々隊列を組んで動いていたこともあるが、ほんの数秒で迎撃態勢を整える。シュバルツを囮に、他の者は槍や弓といった間合いを確保できる武器を構え、顕現魔法で戦力の水増しをする。


「来るぞ!!」


 1人だけ突出して最前線に立つシュバルツはハンマーを構えながら、大きくバックステップ。そしてさっきまでシュバルツがいた空間を巨大ミミズが呑み込んだ。


「甘いんだよ!!」


 シュバルツはハンマーを横に振り切る。ハンマーは巨大ミミズを捉え、その巨体をぶち抜き、大きな穴をあける。巨大ミミズの体液が飛び散り、足場を濡らした。

 シュバルツが使うハンマーは1mの柄の先に100㎏の鉄塊が付いた、戦鎚(ウォーハンマー)だ。鉄塊には棘などが付いていて、打撃力に加え貫通力が追加されている。巨大ミミズぐらいなら余裕でその外皮を食い破る。


 シュバルツが巨大ミミズを怯ませると、他のメンバーも一斉に動き出す。槍を持った戦士、リッツァは走る勢いを槍に乗せ、突撃(チャージ)を敢行。体ごとぶつかるように巨大ミミズを貫いた。

 他のメンバーの攻撃も、巨大ミミズに少なくない傷を与えていく。相手の身体が大きい分、互いの攻撃に巻き込まれないように立ち回るのは難しくない。それぞれが武器の“得意な距離”をずらしていることもあるが、何より長年共に戦ってきたメンバーでの戦闘だ。自分の攻撃に仲間を攻撃に巻き込むといった、初歩的なミスなどしない。シュバルツも2撃、3激と攻撃を重ね、着実に相手の生命力を削る。



「ギャウン!!」


 そんな戦場の周囲に配備された戦狼の悲鳴が洞窟に響いた。

 もう一匹の巨大ミミズに喰いつかれたためだ。戦狼は飲み込まれ、その存在を維持できなくなって消滅した。


「やれやれ、複数相手は面倒ですね……!」


 複数の敵がいる時、ドライゼは抑え役として立ち回ることになっている。

 戦狼といった顕現するコストの小さいモンスターを選んだのはそのためだ。複数の戦狼を操り巨大ミミズの注意を引きつけ、最初の1匹が倒されるまで時間を稼ぐ。と言っても、巨大ミミズ相手に時間を稼ぐことはそう難しくない。巨大ミミズは飲み込み攻撃を仕掛けてくるものの、一回一回の攻撃に大きく間がある。その一回を喰らってしまえば死ぬだけなのだが、回避すれば10秒20秒と安全な時間ができる。そして喰らっても構わない戦狼であれば、特に問題なく囮に使えるのだ。


「前へ!」


 初撃を喰らってしまったが、2回目3回目の喰らいつきは回避して見せる。足を止めずに走り続ければ移動先を予測して喰らいつく巨大ミミズであるが、止まっている相手には現在位置を攻撃箇所にと決めている。

 その習性に合わせ、足に力を入れていた戦狼たちは攻撃の寸前に動くことで回避を行う。

 そして戦狼が3回目の攻撃を躱した時、ようやく彼らの出番は終わる。


「さっさと終わらせるぞ!」

「「ウォォオオォォーー!!」」


 1匹目の巨大ミミズを倒したシュバルツらが参戦したのだ。

 同様の手順を踏み、2匹目も難なく下した。





「ようっし! 剥ぎ取り行って来い!!」


 巨大ミミズの体液を浴び、汚れた体を拭いながらシュバルツは控えのメンバーに声をかける。

 彼ら控えメンバーは非戦闘員だ。その仕事は倒したモンスターから素材を回収する事。群がる様に巨大ミミズに取りつき、その肉を回収する。


 巨大ミミズの肉は、チランで最もありふれた食材だ。穀物よりも多く消費され、住人の腹を満たしている。モンスターの肉でも、このチラン界隈に出現するものの中では巨大ミミズぐらいしか食用に適さない。他のモンスターは味が悪いか、ランク8ダンジョンの超高難易度討伐対象しかいない。それに、巨大ミミズは一匹剥ぎ取れば数百㎏どころか数tの食肉が確保できる。10万以上いるチランの住人の腹を満たすには、こちらの方が都合が良かった。


「よし! 帰るぞ!!」


 そんな巨大ミミズ討伐を終えれば、帰還は当然の選択である。大八車のような荷車に3tものミミズ肉を積み終えた彼らは、チランへ向かう。

 荷車を押しての移動となれば行軍速度は低くなるが、それでも彼らは日帰りでダンジョン攻略を終えた。


 なお、この巨大ミミズの肉は腐りにくい。また、ダンジョン上層が洞窟という事もあり、保存に向いた環境であることも手伝い、より大規模な食肉確保部隊が編成される。倒した巨大ミミズからさらに10t以上の肉が回収され、瑠璃色の剣は3日の仕事で金貨数枚を稼ぐことになる。もちろんギルドの収入なので、個人の手には銀貨10枚から20枚が支給されるだけだ。だが、一般的な生活をする人間の半月分の収入を稼いだ計算になる。


 ダンジョンで命を懸けて戦った代価として稼いだ金ではあるが、それが適正かどうかは分からない。

 だが、それでも彼らはダンジョンに挑み続けるのだった。

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