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幕間 精霊魔法と世界の秘密

読まなくても問題ありません。

本編には何の関係もありませんので。

「そう言えば、今更なんですけど。僕は≪再生≫の魔法を覚えたかっただけなのに、なんで精霊魔法を覚えようとしているんですか?」


 それは、パッカーの村を出てしばらくたった、ある日の事だった。

 ウォルターは移動中は身体強化の魔法を使い続け、その練習時間に中てている。身体強化の魔法は生体操作関係の魔法であり、回復魔法に通ずる魔法系統である。よって、ウォルターが身体強化魔法の練習をするのにはちゃんとした理由がある。

 だが、そのついでとばかりに行われる精霊魔法の練習については理由が全く分からず、今更であるが――練習開始からすでに3ヶ月経過している――疑問をぶつけてみる事にしたのだ。

 アルヴィース相手であれば無条件の信頼から質問の一つもせずに黙々と練習に励んでいたのだろうが、マキ相手では信頼が足りていない。だから疑問を持ち、ぶつける事になったのだった。



「本当に今更ですわね。

 魔法にはランクがありますわ。下級、中級、上級、最上級と4段階で分けているのですけど、≪再生≫の魔法は中級の魔法なのですわ。そして中級の魔法を覚えるには、複数の系統の下級魔法を使える必要がありますの。

 だから精霊魔法を覚える理由の一つは簡単ですわね。『覚えるための条件を満たすため』ですわ」

「へー」


 呆れた表情であったが、よどみなくウォルターの質問に答えるマキ。疑問そのものは本当に簡単な内容だったので、特に詰まることは無い。

 ウォルターはその内容の一部に少し疑問を抱いたが、あえて無視することにした。「精霊魔法じゃなくてもいいんですか?」と言いそうになったが、今から他の魔法を習熟するのは無駄が大きすぎる。まずは目標である≪再生≫の習得をクリアし、その後にでも手を出せばいいと考えた。


「一応、ワタシの目的である顕現魔法の練習も兼ねていますから、他の魔法に手を出す余裕なんてありませんわよ」


 ウォルターの思考を呼んだマキが付け加える。

 ちなみに精霊魔法の習熟が顕現魔法の≪精霊化≫の習熟とリンクしているので、マキは精霊魔法の練習を重視している。移動中は片手間でできる身体強化の魔法だが、野営の準備が終わった後に行う本格的な練習は精霊魔法である。



「それにしても、なんでマキの世界の精霊魔法が僕が使えるんでしょうね?」


 疑問が一つ解決すると、すぐに次の疑問が浮かんでくる。

 今度の質問についてはマキも正しい回答を知らないので、わずかに教える内容を頭の中で整理する。


マスター(アルヴィース)が言うには、『世界の根源(イベント・ホライゾン)』を同じくするから、ですわ」

「世界の根源?」

「ええ。私も詳しくは知りませんわ。

 マスターが言うには、並行して存在する世界、因果律の影響し合った宇宙(せかい)、それらはたった一つの根源より生まれ出でた子供の様なもの、らしいですの。親の因子を受け継ぐが故に互いの法を、律を世界の奥底に内包し、『どこか一つの世界にある物は他のすべての世界にも含まれる』ために、ワタシの精霊魔法も『ワタシの世界に存在しているから』『これまで存在しなかったはずのこの世界にも存在し得る』という理屈が成り立つそうですの。

 この「内包された全ての可能性」を『世界の根源(イベント・ホライゾン)』と称するのですわ。

 ――全ての世界は繋がっている――

 この一点に関してはすでに実証されている(・・・・・・・)ので仮説の一つとしては最も説得力があるのですけれど。マスターのアイテムボックスが使えなかったことを省みれば、法を内包しつつも持ち込まれただけで全てが(つまび)らかになるわけではなさそうですわよね。ただ似たような世界を移動しただけでは使える状態だったことを考えると、「アイテムボックスを持ち込めなかった」ではなく「アイテムボックスが開かなかった」だけでしょうけど、違いを判断するには情報が足りませんわよね。それに精霊魔法がこの世界に元々あった可能性も否定できませんし。

 とにかく、世界の根源については本当かどうかなんて知りませんわよ? あくまで、マスターからそう聞いたという話ですわ」


 今度の質問に対する返答は歯切れが悪い。知っている事であればいざ知らず、知らないというか、本当かどうか未検証の話をするにはマキも自信が持てないので、やや言葉を濁すような喋り方となってしまう。

 一応ではあるが答えを聞いたウォルターは、その内容を把握しきれずに口を閉ざす。言われた内容の半分も理解できておらず、知らない単語が多い。無論それはマキがわざとそうしたのであり、分からないように説明したという側面もある。


「分からなくても問題ありませんわ」


 マキからそう言われ、ウォルターは考えるのを止めた。





 それから1月近くの間、特に何があるわけでもなく。二人はチランに辿り着いた。

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