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最終決戦 新ダンジョン⑤

 ダンジョン【氷獄(コキュートス)】に対応していても、魔法≪氷獄(ニブルヘイム)≫には対応できなかった皇帝の外法兵と武器型。

 おそらくこのダンジョンでの使用を前提に作られていたであろうモンスターも、精霊魔法の不条理には叶わなかった。一矢報いる事無く散っていったため、氷のオブジェさえ片付けてしまえば、ウォルターが起きた時には痕跡一つ残さず全てが終わっていた。



 二人は何事も無かったようにダンジョン奥へと進む。

 前日と違い外法兵らは一切出現せず、さほど時間を掛けずに奥へと到達した。


「意外と浅いダンジョンですわね」

「ランクの高いダンジョンって、普通は何日もかけて潜るもんね。【宵闇の聖域】も10日以上かかったし」


 【氷獄】攻略に当たり、二人しかいなかったことで倍以上の速さで進んだマキとウォルター。それでもたった2日でダンジョン奥と思わしき場所までたどり着いたのは異常なまでに速いペースだ。

 難易度をランク8以上に想定していたため、最低でも7日は必要になると考えていたのだ。


「もしかすると、ダンジョン内に複数の魔力だまりがあるのかもしれませんわね」

「え? そんなダンジョン、前例が無いよ?」

「それを言ったら、このダンジョンの環境やモンスター不在というのも前例がありませんわ。何もかもが初めてのダンジョンと思いなさい」


 ただ、それでも最悪を想定することは忘れない。

 今いる場所をダンジョン奥と判断したのは、近くに魔力だまりの反応があるからだ。逆に言えば、ダンジョンの奥以外に魔力だまりがあればそこを奥と誤認することもある。そこで魔力だまりが複数あるという今までにないダンジョンを想定し、「もう奥にたどり着いた」という前提を覆す。


 しかし、奥ではないと想定することで逆に皇帝がいるかもしれないという緊張感が削がれる可能性もある。

 念のために気を引き締めるように注意を促した。



 喋りながらも足を止めずに先へと進めば、思った通り、魔力だまりがある。

 いかにも洞穴といった道中と違い、魔力だまりの場所は部屋のような広い空間である。その部屋の真ん中にある魔力だまりはそれなりの規模であり、ランク4ダンジョンでもすぐに大崩壊といかない程度だが、無視できない量の魔力を溜めこんでいた。


 ウォルターはそれを散らしながら周囲を見渡す。


「皇帝の反応は無いよね?」

「ええ。ここよりさらに奥があり、そこに潜んでいるのでしょう。

 念のためにここから魔力を吸収しておきますわ。枯らす勢いで魔力を吸収すれば、しばらく使い物にならなくなる筈ですわ」


 マキの想定が当たっていたのか。皇帝の姿だけでなく、周囲に他の何かがいるという事も無い。

 そんな中、ウォルターはふと思い出したように収納袋を取り出した。


「マキ、あの石ころで皇帝のいる場所を確認できないか試そうと思うんだけど。大丈夫だと思う?」

「……いい考えだと思いますわ。やってみなさい」


 ウォルターは収納袋から例の黒い石を取り出す。

 皇帝に魔力を供給していたであろうその石から、流れる魔力を見る事で、皇帝の位置を割り出そうというのだ。


 魔力だまりの魔力を散らし、ダンジョンから限界まで魔力を吸い出した後なので、石の魔力が周囲の魔力と混じる事は無い。石から流れる魔力を見るのは簡単だ。


「マキ、おかしい。魔力がダンジョンの外に向かってる!」

「え? あ! あの下種が! 逃げたのですわ!!」


 魔力を見たウォルターは、自分たちが通ってきた方向に魔力が流れるのを見て声を上げた。

 マキはウォルターの言葉を聞き、その意味するところを考え、声を荒げた。



 皇帝は、マキとウォルターと戦う事を避け、逃げ出した。


 考え付いた答えにマキは怒りを覚え激昂する。

 ここまで事態を引っ掻き回し、命を(もてあそ)び、悪の美学を見せる事無く命惜しさに敵前逃亡。

 到底許せることではなかった。



「細かい事は後で構いませんわ! 追いますわよ!!」

「うん!!」


 二人はここでやるべきことを後回しにして、全力でダンジョンからの脱出を目指し駆け出す。

 皇帝の逃げ足の速さがどれほどかは分からないが、ダンジョンの出口付近には仲間がいて、警戒していようが戦いになれば相当な被害がでる。最大戦力の二人がおらず、フリードのような戦士もいない。女神の使徒がいるのが不幸中の幸いだが、それでも楽観視できる話ではない。


 焦る気持ちを押さえながら、二人は皇帝を追う。

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