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最終決戦 新ダンジョン①

 地下水道を探索していくと、途中で吸血蝙蝠が気になる場所を見つけた。


「反響探査では、地下水道のさらに下があるという結果が出ています。城の周辺に反応が集中してますので、出入り口もその近辺かと」

「面倒、厄介ですわね。

 地下水道の下にある空洞。その上に城を建てた、そう考えてしまいそうですわ」


 報告を聞いたマキは眉を顰める。

 かなり嫌な想像をしてしまったためだ。


「ははは、それは無いでしょう。もしそうなら、これまで話が出なかった訳がありませんからな。

 ダンジョンを攻略するのに必要な兵士と物資、そのどちらも聞いたことがありません」


 そんなマキを大隊長は笑って否定する。他の部隊長らも大隊長と似たような意見だ。

 そう、マキは帝国の皇城が作られた場所にダンジョンが隠されているのではないかと考えたのだ。半ばダンジョンモンスターのような皇帝の拠点だけに、ダンジョンが相応しいと思うのは自然な事だ。


 ただ、普通に考えるとそれは無い。

 ダンジョンは定期的に攻略しないと大崩壊というモンスター大量放出を行う。それゆえに人の領域にあるダンジョンは全て管理され、討伐者を配置するのだ。

 つまり、もしも皇城にダンジョンがあるなら、定期的な討伐をしているはずだし、その兆候から存在が露見すると考えられる。

 これがランク1ダンジョンのような簡単な物ならそんな事も無いだろう。しかし状況と今までの経験から予測すると、あるとすれば高ランクダンジョンの可能性が高い。そうであれば必ず誰かから情報が洩れると断言できる。


 大隊長は常識で考え、有り得ないと笑っているのだ。



 ただ。


 この手の話は。


 有り得ない(・・・・・)事ほど(・・・)起こりやすい(・・・・・・)――





「報告します! 地下水道の下、ダンジョンを発見しました!

 かなり高ランクのダンジョンと推測され、顕現モンスターだけでなく、兵士による調査が必要と思われます!」

「馬鹿な!?」


 翌日。

 昼過ぎごろ、兵士たちから新しい報告が届く。

 そしてその有り得ない報告を聞いて大隊長らは驚き、思わず腰を浮かせた。


「そんなはずは無い! 城の下に高ランクダンジョン? 一体なぜ、今まで見つからなかったというんだ!」

「そんなことを言っても、見つかったものは仕方がありませんわ。もしかしたらですけど、皇帝が作った可能性もありますし」

「う、うむ。そうだな」


 経験則から有り得ないと切って捨てた可能性を拾われて動揺する大隊長らと違い、マキはこの世界の常識が無い分だけ発想が柔軟だ。予想外の事態でも常識が揺らぐことは無い。

 むしろ今回は予想通りという話である。



「とりあえずは斥候を放ち、ダンジョンの難易度を確認するのが先決ですわ。

 念のため、今回はワタシが出ます」


 発見されたダンジョンがあり、その奥に皇帝がいる可能性が高いのであれば、攻略しないという選択肢は無い。


 攻略しようというなら、まずはダンジョンのランクと傾向を把握するのは急務だ。何をするにしても、情報が無いと始まらない。

 できるだけ早く終わらせたいという事もあり、先ずはマキが1人で先行することになった。


 なお、リスク回避のために中ボス相当の敵を倒したら帰還する予定である。



 そのダンジョンはただの洞窟に見えるが一般的な洞窟とは違った。

 一般的な洞窟は夏は涼しく冬は暖かいと、地中の閉鎖空間として保温された状態であることが多い。やや暖かい方に傾くが、年間を通して気温の変動が少ないのである。


 しかし、このダンジョンはひたすら寒い。

 マキは氷系の魔法を得意とする手前、寒さにかなり強い。そのマキでもマイナス100度の世界は“異世界”だ。体の表面に氷が張って動きを阻害し、息をするだけで肺が凍りつく。

 そのくせダンジョンから一歩でも出ると気温が元に戻り、内外で熱移動が無いことを証明している。

 最初に足を踏み入れようとした兵士は、指先がダンジョン内に入った途端、耐え難い痛みを感じてすぐさま逃げた。そのおかげで凍傷にならず、指を切り落とさずに済んでいる。



「結界、封印? ……まだ分かりませんわ。情報が少なすぎます」


 マキは出入り口の軽く状況を確認すると、ダンジョン奥を目指して歩き始める。


 ダンジョンの構造はごく普通の洞窟で、10人が並んで歩ける程度の広さを持つ。足場は最初から平らで歩くのに支障はない。

 天井はそこそこ高いが鍾乳石が垂れており低く感じるが、大体の場所は3mは何もない空間なので、移動時に頭をぶつけるといった事は無いだろう。軽くジャンプすることもできる。


 障害となるのはやはり寒さで、マキ以外でこの中に入れるとしたら。


「ウォルと二人きりでダンジョン攻略ですわね」


 普通の人間は論外、精霊魔法に熟達した女神の使徒だって危険だ。

 その点、人間という規格から逸脱しつつあるウォルターなら何とかなるだろう。マキはそのように判断した。

 その正論の中に、ほんの少しの我儘が混じった事に気が付きもせず。



 ダンジョンに入って2時間が経過した。

 何も起きない道に歩を進めながら、マキはそれがダンジョンにあるまじき事態であると理解し、違和感を強くしていく。


「おかしいですわ。モンスターがいません」


 マキの仕事はダンジョンの傾向を調べる事と、モンスターの種類を把握することだ。その為に周辺一帯の気配を探っているが、生き物の反応が全くない。


 マキは単独行動という意味も含め身軽なので、この2時間で10㎞以上進んでいる。なのにモンスターと出くわさないのは異常の一言。

 枯れたダンジョンなのかと考えたが、それでは出入り口の不思議な現象に説明が付かなくなる。

 マキは最初のうちだけ気にしていなかったが、1時間たったあたりで違和感を覚え、たまに全力で走ったりしながら敵の姿を探すがそれでも敵はいない。


「もう2時間だけ進み、撤収しましょうか」


 マキは少し考え、当面の目標を打ち出す。



 結局マキは4時間ほど使い20㎞以上歩いたがそれでも雑魚一体すら見つけられず、ダンジョンの構造を把握するだけで調査を終えた。

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