表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/208

【アキュリス大峡谷】攻略①

「ワタシ、皇帝の性格の悪さだけは認めてもいいと思いますわ」

「俺も、同感だね。趣味が悪すぎる」



 【アキュリス大峡谷】はその名が示す通り、長大な峡谷だ。流れる川に沿って存在する順路はたった一本で、脇道など無い。崖の高さは500mもあり、見る者に威圧感を与えるほどである。

 川があるが強い毒性がある為、その水は飲用に適さない。草木は生えておらず、渇いた草の玉が転がっているような、岩と砂の峡谷である。

 一見すると簡単なダンジョンに見えるが、峡谷という形を利用するかのように切り立った崖の上に敵が存在するため難易度はかなり高い。敵の強さが問題ではなく、敵の倒し難さが厄介なダンジョンだ。


 毒槍ハゲワシ(ポイズンヴァルチャー)

 その名の通り毒を持ったハゲワシで、外見は普通のハゲワシとそう変わらない。急降下からの嘴攻撃を槍に準えて毒槍と呼ばれる。嘴と爪の両方に毒があるため、倒した後に素材で怪我をして死ぬものも稀にいる。


 岩落猿(フォールエイプ)

 体長1.2m程度の毛の長い猿。これは臆病で狡猾な猿で、崖の上からしか攻撃してこない。攻撃手段はもちろん岩を落とす事。直接戦闘を避ける習性をもち、崖の上にいるという事もあり倒すのは非常に面倒くさい。


 吸血草(ヴァンパイアウィード)

 高さ30㎝程度の渇いた草の玉。ダンジョン内のそこらじゅうを転がっている。一見ただの丸まった草に見えるが、人間の足元に近寄ると体をほどいて絡みつく。そしてその生き血を吸うという凶悪な草だ。草の葉は鎧の隙間から侵入するため、


 まともに戦闘になるのは毒槍ハゲワシだけで、岩落猿は崖の上から降りてこないし、吸血草は戦闘というより駆除の領域だ。運が悪ければ岩落猿の落とした岩によって順路がふさがれる事があるし、川が堰き止められるとたまに鉄砲水になり、そうなると逃げ場がないので普通は死ぬ。

 休憩に適した場所が無いので夜寝る場所の確保も大変だ。ごつごつとした岩場、しかも毒水の川が近いとあっては体が休まるわけも無い。



 ただし、それらは事前情報のとおりであり、特に問題のある話では無かった。

 もともとランク4のダンジョンだ。難易度は高めであるが、そこまで珍しいものでもない。


 問題は、ダンジョン内に出現する皇帝の兵たちだった。



「ウォルの顔をしていればいいというものでもありませんわ!」


 マキは視界に入ったウォルターの(・・・・・・)顔をしている(・・・・・・)外法兵を氷の槍で串刺しにする。


 そう。

 出てくる外法兵の顔が常にウォルターの顔だったのだ。体の方はバラバラだが、顔だけはウォルター。

 これにはマキだけでなく隣にいるフリードや兵士たちも不快感をあらわにしている。

 川の中からも襲い掛かってくるのでこの外法兵は多くの兵士が目の当たりにしており、敵と分かっていても攻撃する兵士の手が緩むのは仕方のない話だった。



 嫌がらせのように出て来る偽ウォルター。

 マキはその顔を見ると瞬時に殺すことを繰り返しており、主に顔面破壊を行っている。


 厄介な事がもう一つあり、それは外法兵が使っている「武器」だった。

 川の中から現れる外法兵をとある兵士が倒した後の事だが、その体が魔力の粒子に戻っていくのに何故か剣だけは残ったので、兵士の一人が戦利品だとばかりに回収した。


 最初は特に問題なかったのだが、次の戦闘でその剣を持った兵士は近くにいた仲間を切り殺した。

 切った本人は剣が勝手に動いて仲間を切ったと主張するわけだが、そんな言葉を信じられない仲間は(くだん)の兵士を切り捨てた。

 似たようなことが何度かあれば次第に原因に気が付く者も出てきて、拾った武器が実はモンスターで皇帝の罠だったことが発覚すると、武器を拾った仲間を殺した兵士たちは一様に青ざめた。無実、とは言い切れないかもしれないが、操られただけの仲間を切り殺したのだから仕方が無い。

 仲間への疑心暗鬼と罪悪感。軍の中はそれらが奇妙にまじりあった空気になった。





 ただそれでもマキたちの進軍を遅らせることは出来ていない。

 一本道ゆえに搦め手の難しいダンジョンを、マキたちは着実に、素早く進んでいった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ