Ⅴ
ある日、ふたりのよく似た少女が森に迷いこみました。ふたりは両手いっぱいにお花をかかえています。そしてひとりは泣き、もうひとりは辺りをきょろきょろと見渡しています。黄金の蝶はふたりのもとに舞いました。
「わあ! なんてきれいな蝶なんでしょう」
泣いていた少女はぴたりと泣き止み、蝶にみとれました。少女たちは、かつての王女さまにとてもよく似ているのでした。
蝶はふたりをつれて、森の出口へ舞いました。そこで蝶は力尽きて、地面へとひらひら落ちていきました。ふたりは蝶を優しく手ですくい、お城へつれていきました。
少女たちは、蝶をあるお部屋にいれました。大きなベッドがひとつあり、そのまん中にはとてもおだやかそうな女のひとがおりました。なんだかつかれているようなお顔でした。
「お母さまみて! ちょうちょさんがたすけてくれたのよ」
「金色なの! とってもきれいでしょう?」
少女が女のひとの両わきをかこみ、元気いっぱいにいいます。そのすがたは愛くるしく、女のひとは目をほそめて少女たちの頭をなでました。まあ、ほんとうにきれいねと少女たちをほめました。
ひとしきりしゃべったあと、少女たちはあきてしまったのか蝶をおいてどこかへ遊びにいってしまいました。
蝶は女のひとの指先にとまりました。その指には、朽ち果てた花の環がはめられていました。蝶をみる女のひとの目は、あのお転婆娘の元気で美しい王女さまの目をしていたので、蝶はもう悲しくありませんでした。
そして蝶は一度だけ、大きくその黄金の羽をはばたかせました。
さいごに女のひとは蝶にキスをして、安心して眠りにおちていきました。女のひとは、少女の顔でほほ笑んでいました。