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Ⅱ
少年の名は、王女さまがアルフォンスと名づけました。その理由は、そのころ王女さまがたいへん可愛がっていた犬が死んでしまい、代わりになれと王女さまがその犬の名をとって少年にあげてしまったのです。少年はほとほと困りましたが、優しい心の持ち主なのでその名を受けとり、王女さまはアルと呼ぶようになりました。
それから王女さまとアルは毎日のようにこのお花畑で逢瀬を重ねました。花摘みをしたりおままごとをしたり、夜空をみあげたりして、たくさんの想い出がつくりだされました。
この国は、あまり雨が降らないかわりに霧がたくさんでるので、ふたりはこの場所で会うことができたのです。
ある真っ青な空の日のこと、王女さまとアルは花を摘んで花かんむりをつくって結婚式のまねごとをして遊んでいました。
「ねえアル、大きくなったら、わたしをお嫁さんにしてくれるんでしょう?」
王女さまは不安になり、アルにたずねました。アルは返事をせずに、おだやかな顔で王女さまの頭をなでました。
王女さまはアルが大さ好きですが、アルのことはなにも知りませんでした。