5,いきなりの告白・そして想い
苦情等は受け付けません。
羽柴に呼び止められた。
「ちょっと、こっち。」
…ついて来いと言う事だろうか。何?と聞いても羽柴は返事をしようとはしない。私はため息をつき、仕方なくついて行った。
「…で、何?」
羽柴が足を止めたのは一年生の教室のある四階つきあたり、視聴覚室の前だった。羽柴は私の質問には答えずに、制服のポケットから鍵を取り出した。多分、職員室からもらって来たのだろう。
「鍵…。」
「職員室で借りて来た。昼休み、生徒会の会議あったから忘れ物したって言って。」
やっぱり。羽柴は副会長だから、先生もすんなり渡したんだろう。
ガチャ、と鍵の開く音がした。
「入って。」
羽柴は私にそう言って、電気のついていない視聴覚室に入って行った。私も渋々入って行く。
私が視聴覚室に入ると羽柴は視聴覚室のドアを閉めた。
…コイツ、まさか襲う気じゃないでしょうね。
私が警戒していると羽柴が気づいたらしく、顔をしかめて言った。
「何ビビってるわけ?」
「別にビビってないし。」
「ふーん。あっそ。」
「何で私をここに?」
私が聞くと、羽柴は言いにくそうな顔をして口を開いた。
「…お前さ、本命にあげたわけ?チョコ。」
「何でそんな事言わなきゃいけないの?」
「渡したのかって聞いてんだけど。」
「……渡したよ。」
「誰に?」
何で聞くかな…。私はため息をついてから羽柴を睨み気味に見て言った。
「そんな事言うわけないでしょ。羽柴に教える義務なんてない。」
羽柴は何か言いたそうだったが、ぐっと堪えたみたいだった。そしてすぐさま私に言った。
「…俺はお前が好きだ。」
「ハァ?」
あまりにいきなりすぎて間抜けな声を出してしまった。
「何それ…そんな事言われたって…。」
羽柴は戸惑った様子の私の肩を掴んだ。
「好きなんだよ。付き合って欲しい。」
「いや…だから私には好きな人が…。」
「どうせ片思いなんだろ。じゃあいいじゃん…。」
「いいわけないでしょ!!」
私は羽柴の腕を振り払う。すると羽柴は彼の名前を口にした。
「…佐々木?」
「っ!!」
予想外だったから肩が上がってしまった。これじゃあ、佐々木が好きって言ってるようなモノじゃない…!!
「やっぱそうなんだ。お前、佐々木が好きなんだろ?」
「ち、違うッ!!何よ、私が誰を好きだろうと羽柴には関係ないでしょ?!」私はそう言って、視聴覚室を飛び出した。