4,バレンタインデー
苦情等は受け付けません。
『俺、お前からチョコ欲しいんだけど。くれない?』
「…はぁ?」
何この図々しい内容。っていうかあんたにあげたら佐々木とか、他の人に勘違いされるかもなんですけど。それは困る。それに私から欲しいって…告白とかのつもり?意味分かんない。
『ゴメン、私本命いるから無理。』取りあえず断りのメールを打ち、送信ボタンを押した。
返事は、返って来なかった。
「ただいま〜。」
お昼頃、お母さんと妹が帰って来た。
「おかえり。どこ行ってたの?」
「近くのスーパー。お昼ご飯にたこ焼き買って来たんだよ。」
妹の小雪がたこ焼きの入った袋を突き出して言った。たこ焼きのいい匂いがする。
「美味しそう!!早く食べたい!!」
スキップの入った歩き方でたこ焼きの袋をコタツへ置きに行く。いい匂いに待ちきれなくて袋をあさり始めた。
羽柴からのメールの事は、既に私の頭から消えていた。それ程、深く気にしてなかったから。
バレンタイン当日。
りーちゃんと一緒に買いに行ったラッピンググッズで可愛くラッピングしたチョコを袋に入れて持って行く。放課後に渡すと決めたものの、朝からずっとドキドキしっぱなし。
「ねえねえ、チョコはどこで渡す気?」
「え…き、教室?やっぱさ、さりげなく渡したいからねー…。」
へへ、と苦笑してりーちゃんを見る。りーちゃんは頑張ってね、と応援してくれた。
刻々と時間が過ぎて行く。ああ…どうしよう、このホームルームさえ終われば放課後だ。ヤバい、緊張してきた…。
「起立、礼。」
『さようなら。』
……うわ、来ちゃった。どうしよう…もうちょっと人気がなくなってから渡そう…、そう考えているとき
「佐々木、これあげる。」
泉の声だ。視線の先には泉が差し出したチョコらしきモノを佐々木が受け取っている。
「おう、サンキュ。」
そして泉はそそくさと帰って行った。…何か微妙な気持ち。
改めて好きな人がかぶってるって認識する。
そして自分が最近、泉とかの声に敏感になってしまった事に気づいた。
彼女だって1人の女。
当たり前に恋だってするだろう。
相手がかぶってたとしてもおかしくはない。
私にどうこう言う資格なんてない。
佐々木はまだ残っている。人気もなくなってきた。そろそろ…渡そう。そして早く帰ろう…。
「さっ…佐々木!!これっ、あげる…。」
佐々木の目の前でチョコが入った袋を突き出した。佐々木は一瞬きょとん、としたがいつもみたく笑って
「ありがとう。」
と受け取ってくれた。
きゃーーーーっ!!!!渡せた!!受け取ってくれた!!今ここで飛び跳ねそう!!叫びそう!!緊張した…ドキドキした…。でもきっちり渡した!!
さあ、帰ろう!!!と鞄を持つと、声をかけられた。
「おい、」
――――羽柴。
出来れば評価頂きたいです。