プロローグ
苦情等は受け付けません。
例えば私以外の誰かにとって、この想いがどうでもいい事だとしても。
周りの『おとな』にとって、くだらない事でも。
私にとってのこの気持ちは苦しいくらいに愛しくて、
小さな体にとって物凄く重い気持ちなの―…
朝が始まればまた学校へ行く。ハッキリ言うと行きたい気持ちもあるが行きたくない気持ちもある。
現在中学生の私は、それぞれのいろんな部分にそれぞれの悩みを抱えている。恋愛・勉強・人間関係―…。考えてしまえば学校なんぞに行きたくない気持ちに襲われる。
行きたいと思えるのは“あのヒト”に会える、と考えた時だ。
時間ギリギリで着替え始める。適当に朝食をとって身だしなみを整えて教科書が入った重いリュックと本が入ったサブバックを手に持ち、家を出た。
家から学校まで約30分。電車通学の私は電車に間に合うか間に合わないか、という時間に出たので少し走りが入った歩きで駅へと向かう。
――今日は間に合った。まぁ、この電車に乗らないと学校に遅刻スレスレで着く事になるからヤバいんだけどね。
(もう来てるかな?来てたら絶対に挨拶しないとっ!!)
少しでも良い印象を与えるために挨拶は出来るだけしたほうがいい。
笑顔で、爽やかに…。とあのヒトが来ている事を前提に教室へ続く階段を一段、一段上がっていく。
教室のドアは開いていた。来ている事を期待しつつも来ていない事を望みながら教室へ入る。
――いない。
「おはよう、奈々子。」
「あッ、おはよう!りーちゃん!!」
最近つるんでいるグループの中の1人、鈴島 りみ(スズシマ リミ)…通称りーちゃんに挨拶され挨拶を返す。
「美奈子もおはよう!」
近くにいた同じグループにいる高山 美奈子にも挨拶をする。
「ん、おはよう。まだ来てないよ。亮くん。」
「あー、うん…。」
私…山中 奈々子の好きな佐々木 亮の空席を見てガッカリしたのか安心したのかため息を漏らした。
――ため息したら幸せが逃げるんだった!!
何かの漫画に書いてあった言葉を思い出し、逃げた幸せを戻すように息を吸った。…私って単純。
そんな事を思いつつ、2人から離れ自分の席へと荷物を置きに足を向かわせた。
私の前の前の席にたむろしている松山 泉のグループ…月下 詩織と山崎 夏美と浜崎 夏希にチラリと視線を向ける、と泉と目が合い睨まれた。
――ついこの前まで同じグループで楽しく話してたのに。
悲しくて、何か寂しくて、その事に悔しくて目を反らした。
その時、あのヒトが来た。
「あ、亮!!おはよう!!」
「よッ!!」
登校して来た佐々木に挨拶をする男子達。
佐々木が段々と近づいてくるのを目で追いながら気持ちを落ち着ける。
「お、おはよう佐々木!!」
「山中。おはよう。昨日はメール途中で止めちゃってごめんな。寝ちゃって…。」
「いいよ!!私もそう思ってたし、わざわざ相手してもらったんだから。」それに返って来ない時点で寝ちゃったんだ、って思ってたから。と言うと佐々木はアハハ、ごめんな。って笑った。
毎日メールを一件はする。そして一件は絶対に返ってくる。優しい佐々木は何でも聞いてくれる。泉達に陰口を言われたりした時も、嫌な思いが心にあるときも、恋が終わった時だって、ちゃんと聞いてくれた。慰めてくれた。共感してくれた。そこが、他の男子と違うところ。
私の好きになった佐々木の一番好きなところ。