時計
短編ですv短いので見て下さい
カチッカチッカチッ。
バッ!
午前7時00分
俺はこの時間に必ず目が覚める。
23年間生きていて、記憶がある中で7時00分以外に起きたことはない。常に7時00分に起きる。
その他、俺の体は全てが時間通りに動く。
会社は歩いて15分の所にある。
7時45分に出て必ず8時00分に着く。
昼、腹が空いたならその時刻は12時だ。
食事も決まった定食を頼み、15分で全て食べ終える。朝食夕食も決まった時間で食べ終える。
全ての仕事が終了するのが5時だ。残業などしない。自分の分が終れば直ぐ帰宅する。
夜、眠くなったので時刻は11時。
そして一日を終える。また次の日同じ事を繰り返す。
俺は時計がいらない。頭の中に時計が有るのと一緒だから。なので家には一個も時計が置いてない。
そして今日も同じ日が始まるはずだったが、今日は違った。
いつも通り起きた。頭の中の時計はもちろん7時00分だ。朝の準備を済ませ7時45分に出て8時00分に会社に着いたはずだが、会社に着いたのは8時05分だった。
気づいたのは会社に着いて同僚の鈴木に言われたからだ。
『珍しいな、時間通りのお前が5分も遅刻するなんて』
普通の人なら5分の遅刻なんて何も思わないだろう。
だが俺にとって5分は異常だ。現に鈴木も心配している。これが俺ではなく別の人なら誰も何も心配はしないだろう。しかし、俺だから心配される。絶対狂うはずのない時計が初めて誤差が出来たのと同じ事なんだ。
しかしどこで狂ったのだ。起きた時に既に5分過ぎていたのか?それとも家を出る時刻?会社までの道のり?何れも本物の時計を見ていないのでわからない。
その日俺は頭の中の時計は5分遅いまま過ごした。次の日もその次の日も俺の頭の中の時計は5分遅れたままだった。
休日俺は病院へ行った。しかし普通の病院なら、こんな症状追い返すだろう。
だから俺は普通とは違う病院に行く。病院といっても表向きは只の古びた雑貨屋である。しかし、裏では病院を営んでいる。客は俺ぐらいだが。
この病院は幼い頃から調子が悪くなると通っている。親の知り合いらしい。
『今日はどうしたんだ?』
この人が店長兼院長の黒森先生。一般的に言えば容姿は美人だ。だが性格は決して美しくはない。
『いえ、実はちょっと調子が悪いんで』
俺は今の状況を話した。
『ふむ、そんなに心配なら診てやってもいいが?』
顔はいいが言葉遣いは悪い。そして俺のことを客としては扱わないようだ。
『はい是非診て下さい』
『では診察室へ行くぞ。若葉!若葉!』
若葉とは定員兼、黒森先生の助手である。俺より年上だが正直頼りないし、とても年上には見えない。
『ハイ!黒森先生お呼びでしょうか?』
『この男を診察するぞ。準備をしろ』
『あ〜青森君じゃないですか。久しぶりですね』
『早く準備しろ!』
若葉さんは軽く叩かれた。
診察室へ向かう。俺は昔からここに来ているが診察室に入っている時の記憶がない。気づいたらもう診察は終わっている。
今日もいつもと同じだ。記憶がなくなる………………。
『やはり故障かな』
『そうですかね〜。もうあれから20年経つわけですから』
『そうだな』
『たしか、青森君が事故にあって意識不明の重体。なんとか一命は取り留めたが、脳に大きな損傷があり、一生意識が戻らないかもしれなかったんですよね』
『あぁ』
『それで青森君のご両親とお知りあいの黒森先生が脳を改造、半分を機械にしたんですね』
『あの人達も悩んでいたがな、自分の息子が改造されるなんていい気持はしないだろうからな』
『でも結局頼まれたんですね』
『私自身もあまり勧めはしなかったがな』『青森君はこれで幸せだったんですかね?計画通り動く完璧人間ですが、やはり人間っぽさが失われている見たいで…』
『………………。』
『すみません』
『いや、いい。とにかく修理をするか』
薄れゆく意識の中そんな会話が聞こえた気がした。
俺は人間じゃないんだ。
ありきたりな感じですねιι