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最終話

「ふぅ…」

(楽しい一日やったな)

「少し疲れたけどな」


縁側に出て夜空を見上げる。

家の中では打ち上げという名の飲み会が開かれている。

今年結婚したマリちゃんとヒトミちゃん、もうすぐ赤ちゃんが生まれるトモさん。

その他諸々のお祝い事をいっぺんに片付けようということらしい。


「お兄~、お疲れっ」

「おう、お前もがんばったな」

「ねえ、いいもの見せてあげる」

「なんだよ」

ユウは俺の手をとって一枚の手紙を握らせた。

それを開くと見覚えのある文字が目に飛び込んできた。



二人のお兄ちゃんへ

大事なときに帰れなくてゴメンね

今、僕は仕事で遠いところに居ます


どこだと思う?


ジャジャーン!

なんと、

「宇宙」です!



「はああっ?」

「ね、すごいでしょ。ナオキ今度は宇宙に行くんだって」

「いや、すごいっつーか、なんで?」



今度僕は、

自由惑星同盟の提督として

銀河帝国との戦いに挑みます


すごいっしょ?



じゃあまた手紙書きますね~

  

宇宙より ナオキ



「いやいや、もうちょっと事情を詳しく…」

「かっこいいなー。俺たち兄弟で一番の出世頭だよね」

「ん…まぁ、そうなるかな?」

「……」

「……」

「…ぶははっ、お兄、なんにも知らないんだね」

「どういうことだよ」

「また今度、教えてあげる。じゃあ俺、そろそろ寝るわ。おやすみー」

「おいっ、ちょっと待てよユウ!」


三男のナオキは役者を目指して上京したはずだった。それがなんで…

「役者、宇宙…あっ!……舞台…」

(気づくの遅っ!)

「だってこんな書き方されたら」

(お前ホンマに騙されやすいなあ)

「ウチの人間は手が込んでるんだよっ!」

(まあ、そういうことにしといたるわ)


「……」

(なっ、なんや?)

「いや、なんでもない。今日の俺は機嫌がいい。何も聞かないよ」

(悪役みたいな言い方やなあ。まあエエわ。ゆっくり寝ろや)

「はいはい、お休み」


おそらくあの衣装の件はコイツの仕業だろう。酔ったアキオ叔父さんの体を操るなどたやすいはずだ。

それでもなお、疑問は残る。


そもそもなぜ、あの衣装が用意してあったのか?


答えはひとつしかなかった。母が持ってきたのだ。

俺たちにあの衣装を着せたくて用意したのだ。

確か大人用の衣装は決められた人数分しかなかったはずだ。と、いうことは…

「母さんが縫い直してくれたんだろうな。まったく、いつもの調子でストレートに言ってくれれば…」


それは嘘だった。保存会の人と町内会の役員、大人が衣装を身に纏うのはそれぐらいだった。

普通に言われたぐらいでは恥ずかしくて断っていたかもしれない。

それが分かっていたからこそ、母は…


「今回は、アイツに感謝、かな?」

明日は早めの電車で帰らなくてはならない。寝る前に荷物を整理しようとかばんを手に取った。


「ゲッ!」

俺のかばんの中にあのヘンテコ人形が押し込められていた。

「アイツ…こんなもの持って帰れってのかよ!」


振り返るがアイツはいない。遠くで蝉の鳴き声が聞こえる。

「もう蝉の季節は終わりだ!さっさと消えろ!」

俺を馬鹿にするかのように鳴き声が大きくなり、そして消えていった。

「ちくしょう!さっきの感謝は取り消しだ!いつか絶対退治してやるからな!」

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