やってやる
「はーい。もう少し笑ってみましょうかー。はい、そうそう。いい感じです」
なんだよ、これ……。
この画像が世界中にばら撒かれるの?
死んでも嫌だ。
サッカーがしたい。ただ、それだけなのに。
ユニフォームを着てボールを持って笑ったり、
腕を組んで笑ったり、
振り返って笑ったり。
プロって、こんなことまでやるんだな。
プロフィール撮影が終わると、広報の人が言った。
「今日中にホームページへ掲載されます。SNSでも発信しますので、シェアしていただけるとうれしいです」
SNS?
自分で自分を宣伝しろってこと?
ゴールで目立つならわかる。
プレーで覚えてもらうならわかる。
でも、笑顔を発信するのは、まだ慣れない。
これも仕事なんだ。
サッカーをするためだ。
だから我慢する。
でも、これだけはあいつに見られたくなかった。
だからプロフィールの存在は誰にも言わない。
……そう決めてたのに。
一番見つかっちゃいけないヤツに見つかった。
「るぅ!見たよー!プロフィール!かっこいいじゃん!律から聞いたんだけど…」
「律から教えてもらった!るぅ、よく撮れてるじゃん!」
「律に聞いたんだけど…」
アップ初日からバカスカLINEがきた…
律のヤツ!ただじゃおかない!
「世界中に発信してるんだから仕方ないじゃーん」
ニヤニヤしてるのが目に浮かぶ。許さないから!
これがなかったら律は、あの時、私に殺されてたかもしれない。
「これ見て元気もらった。
ドラゴンマスクより」
ドイツから届いた、一通のメール。
あれで私は律への拳を下ろした。
そっか。ドイツでも見られるんだよな。
ドラゴンマスクって!w
見られたくなかったけど、元気が出るならいっか。
そのうちカールスルーエのHPにも同じようにプロフィールが出るんだろうな。
それを見て、私も元気をもらおう。
まずは、自分をアピールしてスタメンを取らなきゃ。
このチームに入って、なぜ私を取ったかが分かった。
FWはベテランと若手の2極で構成されていて、中堅が急に海外に移籍し、穴となっていた。
スタミナ、技術、経験。
バランスのとれた中堅が抜けた穴を私で埋める。
それは都合のいい中継ぎを考えてるのかもしれないけど、残念ながら私はそんな選手じゃない。
あのベテランを差し置いて、あの若手を出し抜いてスタメンを取る。
私は置き去りにされたプレイヤーじゃない。選ばれたプレイヤーなんだ。
カメラの前で笑って終わる訳にはいかない。
仕事も辞めた。
勝利給で、得点給で生きていくんだ。
試合に出られなければゼロ。
ゴールを決めなければ評価は上がらない。
プロって、残酷だ。
でも、嫌いじゃない。
数字ではっきり勝負できる。
私は、そのためにここへ来た。
そして、先に全てをやり切ってドイツに行ってやる。
待ってて。
先にやり切るのは、私だよw




