花散る春
「行くよ、夏」そう声をかける男「すぐ行く」と返す幼女。そして、玄関で「行って来ます」と言って男の手を取り歩き出す。
ゴールデンウィークも終わりが近づき、いつしか梅雨が来る。毎年この時期に男は想う(又、彼女の居ない夏が来る)
僕と彼女の出会いは小学生の時、周りの人たちがグループを作る中で僕は一人で席に座り俯いていた。そんな僕に「ねぇ、ドッチしよう」声を掛ける彼女、僕は戸惑いながらも顔を上げた。
声をかけられた事に嬉しくなり彼女を見て「うん」大きく返事をしてしまった。
思っていたより大きな声が出た事で恥ずかしくなり顔を赤面させまた俯いた。
教室は結期の声が気にならないほど盛り上がっていた。そんな中で聞こえる彼女の喜ぶ声、その音に惹かれて顔を上げる。
明るく笑う彼女の表情に知らない感情を感じた。自身の思いも理解できないままに時は流れその気持ちに気づいた時には男と女で別れるようになり、二人の距離は遠くなった。
中学も終わり卒業式の後日、仲の良いメンバーで集まり遊んだ。
そのときはみんな浮かれていたからか親たちから連絡があるまで外で遊び尽くしていた。
その帰りに小春は事故に...
小春の葬式で止めどなく進み僕は涙が流れるが声は一言も出なかった。
葬式が終わった日は現実を受け入れられず、この日何があったのか何をしていたのか一人の部屋で時間が経つにつれ現実が自分を襲い押しつぶされ叫んだ、涙は既に枯れ、声が体を反響させる。叫び声は枯れ、何もかもが泣き続けそのまま眠っていた。
目を覚まし風呂に入る。頭を洗い目を閉じ、小春との思い出が溢れる。思い出に浸る中、小春の声が聞こえた。その声に違和感を感じてシャンプーを流し浴室を見渡した。そこには死んだはずの小春が浮いていて「やっと気づいた」とそれは言う。いろんな感情が渦巻き固まる僕に「おーい、あれ?どうしたの〜...」壊れかけの電子機器に声を掛けるように何度も呼びかけ3分程経った後、少し状況の理解に追いついた僕は泣きそうな笑顔で「おかえり」小春は「ただいま」と笑って返す。
少しの沈黙の後、固まった空気を和ますように小春から「そういえば、一緒にお風呂なんて何年ぶりかな」冗談めかして聞き、結期は恥ずかしさやらなんやらで「うぅ...」そんなうめき声を出し大事なとこを隠す。結期の様子を見ていた小春は「そんな押さえてどうかしたの?」結期は恥ずかしそうな声で「外で待ってて」結期の台詞で小春はハッとして赤面させながら「ごめん」と言って扉を通り抜けて出ていった。小春が出てすぐに顔を洗った結期が風呂からでてきて気まずくなる空気の中、落ち着きと共に出た言葉「おかえり」小春は「それさっきも聞いたよ」少しだけ笑った後、どこか遠い目をしながら「死んじゃったの私?」と何かを確かめるように聞く。「...」結期は声が出なかった。受け入れなきゃいけない現実と突きつける真実どちらも結期には重すぎる荷、苦しくも消え入りそうな声から出た言葉は「...うん」という一言だった。目を閉じ体を伸ばし「ん〜、実感ないなー」何気ないやりとり、結期にはどこか懐かしい感覚。その懐かしさが嬉しく、昔と変わらない彼女の台詞や仕草にクスッと笑っていた。それを見ていた小春は笑顔で「やっと、笑った」その笑顔を前に顔伏せ、また言葉が漏れる「好きです」結期は
言って小春は固まってすぐ、「私も」さっき見せた懐かしい笑顔、好きだったその表情が今はとても辛く苦しいものに変わった。それでも彼女のそばに居たかった結期は「嬉しいよ」笑顔で返す。
小春は唐突に「結期は、幽霊とか信じる」すぐに「信じるよ、小春に会えたから」と返した言葉はどこか寂しさが混じり声色は空にとける。
後の時間は二人で懐かしい日々を話し、いつしか眠りに付いていた。気づいたのは朝、目覚めて小春がいないことであれは夢だと思い至った。
結期の日常は続く。
墓参りで「今年は暑いな」、そうして時間が流れて
夏が墓の前に立ち「また来たよ」という、結期は持ってきた水を墓石にかけて「また来たよ、君のいないこの季節が、」持ってきたブラシで墓石を磨き夏は渡されていたタオルで結期が磨いた箇所を拭き墓石が綺麗になっていく。綺麗になった墓石の前で手を合わせ祈った後に空を見上げ「今年も熱くなりそうだ」




