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家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~  作者: 水瓶シロン
第三章~悪の組織襲撃編~

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第27話 マジカルパワーでクローズドサークルをひとっ飛び!?

「って、もう夜じゃねぇか……」


 それが、テュカとの話を終えて妃菜と共に魔法少女協会から帰ってきた望の第一声だった。


 行きと同じ学園の屋上に降り立って夜空を見上げていると、続くように妃菜もマジカルに光る扉から出てきた。


 役目を終えた扉はフッと跡形もなく消える。


「精密検査、結構時間掛かったからね……」

「あのぉ、それは妃菜さんがずぅっと検査をサボっていたせいでは?」


 望が呆れ混じりに半目を向けると、図星を突かれた妃菜が「うっ」と声を漏らして視線を伏せた。


「ご、ゴメンなさい……」

「まぁ、でも。特に異常なくて良かったよ」

「望くん……」


 安心したような望の笑みを見て、妃菜は望が自分のことを心配してくれていたことが嬉しくて、つい頬を赤くしてしまう。


「さて、どうしたものか。この時間、もう屋上の鍵は……」


 望が屋上に出入りする扉のノブを回して開けようとしてみるが、ガコンガコンと空洞のある金属が重く響くような音がするだけでビクともしない。


 押しても引いても同じ反応なので、押し戸と引き戸を勘違いしているなどと言う天然ボケを披露してしまっているということもないだろう。


 うぅん……と望が唸っていると、妃菜が隣に立って小首を傾げた。


「こじ開ける?」

「え、どうやって?」

「マジカルパワーで?」

「鍵外せるのか?」

「ううん、壊せるだけ」

「……ダメに決まってんじゃん」


 そう。

 天然ボケは望の役目ではなかった。

 そのポジションは妃菜のもので、望はツッコミ要因である。


「だ、だよね……」

「おぉ、良識はあった……」


 言うだけ言ってみただけ、といったような反応を見せた妃菜に、望は少し安堵した。


(んまぁ、俺の家半壊させたときもめっちゃ謝ってたから、基本的に物を壊すのは嫌なんだろうな)


 しかし、そうなると本当に手がない。

 当然扉の隣にある窓にも手を掛けてみたが鍵が掛かっているし、第一開いたところで高校生の身体が通り抜けられるかは微妙なところだ。


(最悪今日は屋上にお泊りコース……って、いや待てよ? 明日から春休みだぞ? 屋上の鍵なんてわざわざ開けに来るか?)


 想像以上に追い詰められた状況であったことに気付き、真顔になる望。


「やっぱ家に帰ってから扉開くべきだったなぁ……」


 魔法少女やその御使いが持っている鍵を使えば、どこからでも妖精の国ひいては魔法少女協会へ通じる扉を出現させられるが、どこへでも帰れるわけではない。


 それが某未来で作られた猫型ロボットの秘密道具と異なる点だ。


 帰ってこられるのは行きで扉を出現させた場所に限定され、今回の場合で言えば、学年の屋上から妖精の国に行ったため、同じ屋上にしか帰ってこられないということになる。


(正直ここまで時間が掛かると思ってなかったから、場所を選ばなかったんだよなぁ……)


 望が今更しても仕方のない後悔をしていると、妃菜はゆっくりとした足取りで屋上の真ん中に向かって歩いていた。


「望くん」

「ん……?」


 望が振り向くと、屋上の真ん中に立ち、夜天に輝く満月から降り注ぐ淡い光を一身に受けている妃菜の姿があった。


(そういえば魔法少女の妃菜と初めて会ったのも満月の夜だったな……あれからもう一ヶ月経ったのか……)


 感慨深さを感じていると、望の視線の先で妃菜も同じことを考えていたようにクスッと微笑んだ。


「あの満月の夜からすべてが始まったよね」

「……だなぁ。まさかこんなこちになるとは思ってなかったけど」


 二人の小さな笑い声が静かな屋上に響く。


「望くんには沢山迷惑掛けて、心配――は掛けられるモノじゃないんだったよね。心配してくれて、助けられてきた」

「どうした急に?」

「ううん。ただ改めて言っておこうと思っただけ」


 一ヶ月の節目だしね、と可笑しそうに妃菜が目を細めた。


「私ね、望くんにお世話されるのなんか良いなぁ~って思ってて……だから、ね? これからも沢山の迷惑を掛けながら、いっぱいお世話になるつもりでいるから、この先もずっと末永くよろしくお願いします……!」


 望はブワッと身体の奥底から何か込み上げてくるモノを感じながらも、よくよく聞いてみればとんでもない内容のお願いで可笑しくなって、半分呆れたように笑った。


「なんだそりゃ。まぁ、でも……こちらこそ、だよ」


 望の返答に満足したのか、妃菜は照れたように頬を朱に染めてから自分の胸の辺りを押さえた。


 すると――――


「おぉっ……!?」


 思わず声を漏らした望の見ている先で、妃菜の身体が蓄えた月光を解き放つように発光する。


 身に纏っていた制服は光の中に溶け消えて、代わりに淡い光がベールとなって妃菜の身体を包み込む。

 肩を露出させたまま二の腕から先に花を咲かせたようにふわっとスリーブが出現し、腰回りにどこからともなく実体を得た布地が折り重なって、フリルのあしらわれたスカートを生み出す。


 白を基調としたオフショルダーの可愛らしくも美しい装束が妃菜を飾った最後に、カツッとヒールで地面を小気味よく鳴らした。


 妃菜の魔法少女姿は何度か見たことがあった望だが、考えてみれば変身をその目で見たのはこれが初めて。


 口を開け広げたまま見入ってしまうトキメキがそこにはあった。


 妃菜は変身の過程で閉じていた目蓋をゆっくりと持ち上げ、その奥にある澄んだ淡紅色の瞳で望を見つめてはにかみ、手を差し伸べた。


「さ、望くん。帰ろうか……私達の家に」

「……え、ちょ、まさか……」


 あれだけ盛り上がっていた気分は、嫌な予感とちょっとしたトラウマによって一気に冷めてしまい――――


「ひ、妃菜、待った……待った待った待ったぁあああ!!」


 望の制止に悪戯っぽい微笑みだけ返した妃菜は、屋上を駆け出すと共に望の身体を楽々と横抱きに抱え上げて、転落防止のフェンスなんて道端の石ころを跨ぐ感覚で飛び越えた。


 もはや密着状態で妃菜の何か柔らかな感触がガッツリ当たってるとか、儚げで可愛い顔が至近距離だとか、良い匂いに包まれてるとか悠長に考えられる状態に、今の望はいなかった。


「あははっ……!」

「浮いてる浮いてる内臓が浮いてるぅううう!!」


 魔法少女と言えど空は飛べない。

 あくまで超常的な跳躍をしているだけ。


 足元を人の営む光が前から後ろへビュンビュン通り過ぎていく様子に、体内で宙ぶらりんになった肝が冷える。


 人知れず、夜空には淡く白い光の放物線と男子高校生の絶叫が織り成されていた――――

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