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家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~  作者: 水瓶シロン
第三章~悪の組織襲撃編~

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第26話 どうやら春休みには一騒動ある予感

「お待たせしましたぁ~」


 望が魔法少女としての精密検査を終えた妃菜と一緒に、魔法少女協会に無数にある庭園の一つで座って待っていると、しばらくしてテュカが戻ってきた。


 移動するには浮遊出来る方が都合がいいようで、ぬいぐるみを思わせる妖精の姿をしている。


 しかし、面と向かって話すのには人型の方が向いているらしく、並んで座る望と妃菜とテーブルを挟んだ対面に腰を下ろすと、ボフッ! とキラキラ光る爆発を起こして幼女の姿に変身。


 相変わらず魔法少女協会の制服に着られているような姿が愛らしい。


 と、望がそんな風に思っているのを敏感に感じ取ったようで、隣から少し冷たい視線を感じた。


「な、何だよ……?」

「ふぅーんだ」

「えぇ……」


 ふいっ、と顔を背けてしまう妃菜に、望は困り眉を作った。


 そんな様子を正面から見ていたテュカは、気まずそうに半目を向けて恐る恐る尋ねてくる。


「あ、あのぉ、今日いらっしゃったときからそんな感じですが……お二人、何かあったんでしょうかぁ……?」


 しなぁ、とチャームポイントのアホ毛が垂れ下がっているテュカに、妃菜は安心させるように笑みを向けた。

 その笑みにどことなく圧を感じるのは気のせいだろう。


「ううん、何でもないの。ただ、望くんには御使いとしてもうちょっと魔法少女にとって乙女心がどれだけ大切かを勉強してほしいかなって思ってるだけだから~」

「な、なるほどぉ……?」


 テュカはよくわかっていなさそうに首を傾げ、妃菜の隣に肩身の狭い心地で座っている望に視線を向けた。


「ま、まぁ、そういうことでしたらテュカにお任せください~。こう見えてお姉さんですから、今度望ちゃんに乙女心とやらを教えて――」

「――ううん、大丈夫だよ」


 妃菜がテュカの提案に言葉を被せた。

 パチクリと瞬きを繰り返すテュカ。


「え、えっとぉ……望ちゃんはまだまだ御使いとしては初心者さんなので、至らないところがあったら一応その辺りの教育もテュカが受け持つんですがぁ……」

「ううん、大丈夫……だよ?」

「あぁ……はいぃ……」


 流石は歴戦の魔法少女。

 妖精の一人や二人はなんのその。


 微動だにしない笑顔の圧力によって、テュカは引き下がるしかなかった。


 それでも仕事は仕事。

 この件は一旦置いておき、テュカは咳払いしてから本題を切り出す。


「コホン。それでは気を取り直してぇ~」


 気を取り直す必要があったんだ、と望は心の中で同情した。


「妃菜ちゃんの精密検査の結果ですが、この通り――」



――――――――――――――――――――

【月ヶ瀬妃菜】

魔力量上限値:30

白魔力量  :16

黒魔力量  :5


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

☆・・・・・・・・・■■■■■

※白魔力:☆ 黒魔力:■ 枯渇:・

――――――――――――――――――――



 テュカがテーブルに広げた妃菜の資料の中には、普段望が額を重ねることで魔力測定して把握出来る情報以外にも、数多くの詳細なデータがあった。


「――以前に比べて、かなり良い状態に戻っていることが確認出来ましたぁ~」


 パチパチ、と喜ばしげに諸手を叩き合わせたあと、テュカは胸を撫で下ろした。


「ふぅ、これであの手この手で協会に報告を誤魔化していたことがバレずに済みますよぉ……」

「悪いな、テュカ。無理させて」


 妃菜の状態の報告をテュカに口止めしていた張本人である望は、申し訳なさそうに笑みを溢して「今度また何か奢るから」と労う。


「もぉう、望くんが勝手に私の状態をテュカに言ったりするからぁ……報告しないって約束したのに……」


 妃菜がわざとらしく拗ねたように唇を尖らせて言ってくるので、望も同じくわざとらしい振る舞いで腕を組んで澄まし顔を作った。


「約束は『魔法少女協会に報告しない』だったからな。プライベートでテュカに相談することは含まれないはずだ」

「そんなの屁理屈だもん……」

「まぁ、それはそうだけど。とはいえ俺も知識がないからさ、テュカに相談しないと妃菜のために何をしてやれるのかがわからなかったんだよ」


 曖昧な笑みを浮かべながら望がそう説明すると、妃菜は瞳を丸くした。


「私の、ため……? そっか、私のためか……えへへ……」


 望の言葉を反芻し、自分の見ていないところでも自分のために頑張ってくれていたことを実感して、どうしようもなく嬉しくなる妃菜。


 先程までのご機嫌斜め具合はどこへやら、今や完全に頬が緩みきっていた。


 テュカはそんな妃菜のコロコロ変わる情緒に戸惑いながらも話を続ける。


「と、ともかく、これならもう魔法少女として戦っても問題ないと思いますぅ。もちろん無理のない範囲で、ですけどねぇ~」


 テーブルに広げた資料を束ねて、トントンと角を揃えるテュカ。


「でもまぁ、こうして妃菜ちゃんが復帰出来たのは幸いでしたぁ。現在、協会としては特に戦力を集めたいのでぇ……」

「ん、と言うと?」


 含みのある発言に望が食い下がると、テュカが少し表情を強張らせて答えた。


「実は最近悪の組織の活動が活発になっておりましてぇ……各地で魔法少女が手を焼かされているのですぅ……」

「いつもの怪異とは違うのか?」

「そうですねぇ。組織が怪異を大量発生させているという状況ももちろん緊急事態ですが、

正直その程度であれば各地の魔法少女の通常戦力で対処出来るんですよぉ……」


 その状況が話の前置きに使われるということは、現在それ以上の危機が訪れようとして――いや、訪れているということだ。


 真剣な表情を浮かべる妃菜の隣で、望は固唾を飲んでテュカの続く言葉に耳を傾けた。


「ただ、恐らく今回は来ています――悪の組織の幹部が」


 幹部――言葉の響きで何となく強敵なのは想像が出来るが、まだ魔法少女が戦う世界のことを深く知らない望は、イマイチその恐ろしさの実感が持てなかった。


「えっと、その幹部ってどれくらいヤバいの?」


 そんな疑問に答えたのは妃菜だ。


「正直、自然発生する怪異を同時に百体相手にする方が楽だよ」


 断言してみせた。

 つまり、妃菜は断言出来る魔法少女なのだ。

 経験者が語る言葉に他ならない。


 望が見る妃菜の横顔は険しく、淡紅色の瞳は何かを睨みつけるように鋭く細められていた。


(前に悪の組織との大規模な戦いで妹が攫われたって言ってたけど、もしかしてそのとき幹部と戦ったのか……?)


 こうまで明らかに怒りを滲ませている妃菜を見たことがないので、理由としてはそれくらいしか思いつかなかった。


 ギリッ、と硬く歯を食い縛った妃菜は、敵に宣戦布告し自分に誓うように一人呟いた…………


「次は絶対消し飛ばしてやるっ……」

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