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家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~  作者: 水瓶シロン
第二章~白魔力回復作戦編~

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第25話 魔法少女が勘違いさせてこようとするんですけど

 日は過ぎ、三月も下旬。

 ここ私立英志院学園では終業式が執り行われ、生徒らは皆、学園長のお決まりとも言える大変ありがた長いお言葉を右耳から左耳に流してから、各自教室に戻っていった。


「はい、それじゃあ一年間お疲れ様! お前ら春休みだからってハメ外すんじゃないぞ~!」

「「「あーい!!」」」


 高等部一年生としての最後の終礼を済ませ、クラスメイトらが担任教師のもとへ寄っていったり、友人同士で写真を取ったり、このあとの予定を楽しげに話し合ったりするのを横目に、望はカバンを持って席を立つ。


 それを見た俊也がバシッと肩を叩いてくる。


「おいおい、もう帰んのかぁ~?」

「んまぁな」

「このあと皆で――つってももちろん行かねぇ奴もいるけど、打ち上げ行こうって話ししてんだよ。望はどうする?」


 俊也が立てた親指で背中を指すので、望もそちらへ視線を向ける。


 流石は学年一位の特待生。

 クラスメイトからの人望も厚く、香澄が中心となって話を取りまとめている様子が見えた。


 もちろん望も行きたくないワケではないが—―――


「悪い、今日はこのあと用事あるんだよ」

「マジかぁ~。バイト?」


 まぁそんなとこ、と望が申し訳なさそうに眉尻を下げて答えると、俊也は残念そうにしながらも「なら、仕方ねぇなぁ」と理解を示してくれた。


 なので、望も断るだけでなく代替案的なフォローを入れておくことにした。


「今日は無理だけど、今までみたいに長期休暇はバイト漬けってワケじゃないから、春休みのどこかで遊びに行くか?」

「おっ、行く行く! なら暇なとき連絡してくれや。俺はいつでも暇だからさ」


 俊也は最後に「じゃ、また来年!」と手を挙げてから打ち上げメンバーへと合流した。


 暇なら勉強した方が良いぞ、と望は心の中でツッコミを入れて微苦笑を溢し、教室をあとにする。


 そのまま帰路に就くのであれば玄関へ向かうところ、望は本校舎の階段を登って最上階まで行くと、屋上の少し重たい扉をガシャンと開けた。


 まだ若干の肌寒さが残るものの、やはりどこか春の息吹を感じられる風を浴びて目を細める望。


「……まだ来てないか」


 望は屋上で待ち合わせている人物の姿がないことを確認し、適当に足を進め、落下防止用の高いフェンスの傍まで寄って高所からの景色を眺める。


 どうせなら桜が満開になっているような風景を所望したかったが、そこは残念ながらまだ蕾が膨れ始めている程度である。


 見るものと言えば、玄関から正門へ向かって流れていくボールのような生徒達の頭。


 意外と飽きずにしばらくぼーっと眺めていると、背後からガチャン! と屋上の扉が開けられる音が聞こえた。


 望のときより、少し音が大きいようだった。


「お、おまたせ、望くん……!」

「おう」


 春風にふわりと白髪を乗せた妃菜は、少し息を切らしている様子で散らばった横髪を耳に掛けた。


「ゴメン、待ったよね……?」

「うんにゃ、別に?」


 隣までやってきた妃菜が申し訳なさそうに見上げてくるので、望は安心させうように頬を緩めた。


「何ならもうちょっとゆっくりしても良かったんだぞ? 絶対クラスメイトから色々誘われただろ?」

「う、うん……」


 学園単位で人気の妃菜だ。

 同じクラスの生徒達からはさらに興味を持たれているに違いない。


 望の頭の中には、妃菜が男女関係なく沢山のクラスメイトから打ち上げに誘われたり、春休みに遊びに行く約束を取りつけられたりしている様子が容易に浮かび上がってきた。


「でも、全部断ってきちゃった……」

「なんで?」

「そ、そりゃ、望くんを待たせちゃってるっていうのもあるし……」


 他人に迷惑を掛けることをやけに心配する妃菜のことだから、望としてもそんな理由だろうとは思った。


(……ん? 『あるし』って、まだあるのか……?)


 他にどんな理由が――と望が静かに視線を向けていると、妃菜は微かに頬を赤らめて、横に垂れる髪の毛を指で巻き取りながら言った。


「望くんに、早く会いたかったから……」

「……っ!?」


 妃菜の言葉に胸の奥にさざ波を立たされる望。

 少し肌寒さを感じていた空気だったが、今はもう少し気温が下がっても良いとさえ思えてしまった。


「お、お前なぁ……そういうこと言ってるから、色んな男子を勘違いさせて余計告白とか受けてるんじゃないのか……?」

「そ、そんなことないよ? 望くんにしか言ってないもん……」


 そういうとこだよ!? とツッコミを入れられるほど、今の望に心の余裕はなかった。


「それとも……」


 妃菜は意図しているのかどうなのか、気恥ずかしさを誤魔化すために顔を背けている望に一歩近付いて、追撃とばかりに至近距離から見つめて尋ねる。


「望くんは、勘違いしちゃう……?」

「い、いやいやいや!? しませんけどっ!?」


 最後声が裏返ってしまったが、望は平静を装うようにコホン、と咳払いを一つ挟む。


「この際だからハッキリ言っておくが、俺は身の程を弁えた男でね。都合よく美少女とハッピーエンドを迎えられるラブコメは好きだし憧れもするが、そんな展開を現実に期待するほど俺はロマンチストじゃないんだよ」


 やれやれ、と半分自分に言い聞かせるためか、望はやや大袈裟に首を横に振ってみせる。


 妃菜はそんな望につまらなさそうなジト目を向けて、不満げに聞かせる気のない呟きを溢した。


「もぅ、そんなんだから今でもちょっと黒魔力が溜まっちゃうんだよ……?」


 もちろん春風に掻き消えるような妃菜の声が聞こえるわけもなく、望はスマホを取り出して時間を確認した。


「あ、そろそろ行った方がいいな。テュカが待ってる」


 今後の妃菜の魔法少女活動についての話などをテュカとするために魔法少女協会へ足を運ばなければならないので、望と妃菜はこうして屋上に集合したのだ。


 妃菜は少し拗ねた様子で「そんなにテュカと会いたいんだ……」と反応しながら、クリスタルのように澄んだ古風な鍵を取り出す。


「テュカ、可愛いもんね?」

「ん? まぁ、可愛いな?」

「望くんはああいう子がタイプなんだぁ」

「おいおい、俺をロリコン呼ばわりか?」

「もぉう、そういうことじゃないもん……」


 じゃあどういうことだよ……? とそんな望の質問に答えてくれることなく、妃菜は先に妖精の国へと通じる扉に入っていったのだった――――

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