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戦力外通告を受けた戦士、無人島でチートスローライフを始めたら英雄になった件

作者: 桜木ひより
掲載日:2025/10/27

これは、ギルドから追放された戦士がいきなり無人島で英雄になった話だ。


「カズマ、お前はクビだ」


十七歳の俺が、ギルドマスターのジジイにそう告げられたのは、冒険者になって三年目のことだった。

理由は単純。戦闘スキルが低すぎて、パーティの足を引っ張るから、だそうだ。


確かに俺は剣も魔法も下手くそだ。


だが、それ以外のスキルなら誰にも負けない自信がある。

採取スキルレベル99、建築スキルレベル99、自然回復レベル99、罠設置レベル99——

戦わない系スキルだけは、なぜか異常に高い。


「無人島行きの船を用意してやった。せいぜい静かに暮らせ」


ジジイはそう言って、俺を小さなボートに放り込んだ。


三日後、俺は本当に無人島に流れ着いた。


「まあ、いいか」


砂浜に寝転がって空を見上げる。

青い空、白い雲、どこまでも広がる海。

ギルドでこき使われるより、こっちの方がよっぽど快適だ。


俺はさっそくスローライフを始めることにした。


まずは住居の確保。

採取スキルを発動すると、目の前の木々がキラキラと輝いて見える。

スキル持ちには素材の良し悪しが一目瞭然なのだ。

最高級の木材だけを選び、建築スキルで組み立てる。


気づけば三時間で、二階建ての立派なログハウスが完成していた。


「うん、我ながら完璧だな」


次は食料。

海辺で釣り竿を垂らすと、五分で巨大な魚が釣れた。

採取スキルのおかげで、魚の居場所が手に取るようにわかるのだ。


さばいて焼いて食べる。うまい。最高だ。


こうして俺の無人島スローライフが始まった。


一週間後、島には立派な菜園と井戸、それに温泉まで完成していた。

地下水脈を探すのも、温泉を掘り当てるのも、採取スキルがあれば簡単だ。


「ああ、天国かここは」


温泉に浸かりながら、俺は心の底から満足していた。


そんな風に生活していたある日、浜辺で見慣れない船を見つけた。

ボロボロの小舟が、流木のように打ち上げられている。


「おい、大丈夫か!」


船の中には、若い女冒険者が倒れていた。

茶色の髪を二つに結んだ、俺と同じくらいの年の少女だ。


「う、うう……」


俺は彼女をログハウスに運び、回復スキルを発動した。

すると彼女の体が淡い光に包まれ、みるみる元気を取り戻していく。


「あ、あれ……私、助かった?」


「ああ、無事だよ。俺はカズマ。ここは無人島だ」


「無人島……って、この立派な家は!?」


彼女の名前はリナというらしい。

リナは目を丸くした。


「俺が建てた。腹減ってるだろ? 飯にするか」


俺は釣ったばかりの魚を料理し、菜園で採れた野菜と一緒に出した。

リナは涙を流しながら食べていた。


「おいひい……こんな美味しいもの、初めて食べました……」


「そうか? 普通だけどな」


実は採取スキルで選んだ食材は、どれも最高品質。

料理スキルも地味に高いので、プロ級の味になるのだ。


リナは事情を話してくれた。

新米冒険者だった彼女は、依頼に失敗してギルドから見放され、流されるようにここへ辿り着いたという。


「じゃあ俺と同じだな」


「カズマさんも……?」


「ああ、戦力外通告を受けてここに来た」


「でも、こんなに立派な家を建てられるなんて……」


「戦う以外のことなら、まあまあ得意なんだ」


その日からリナは俺の島に住むことになった。

彼女は掃除や洗濯を手伝ってくれた。悪くない生活だ。


さらに二週間後、今度は若い男が流れ着いた。名前はユウキ。彼もまた、ギルドから追放された戦士だった。


「すげえ、こんな場所があったのか!」


ユウキは島の設備に感動しまくっていた。

俺は彼にも部屋を貸すことにした。

ユウキは力仕事が得意で、畑を広げるのを手伝ってくれた。


こうして俺の島には、少しずつ仲間が集まり始めた。


そんなある日、島に豪華な船が近づいてきた。

甲板には見覚えのある顔——ギルドの精鋭パーティだ。


「よお、カズマ。元気にしてるか?」


リーダーの男、ダリウスが偉そうに腕を組んでいる。

俺が追放される前も、こうやってよく調子に乗っていた奴らだ。


「何の用だ?」


「噂を聞いてな。無人島に立派な拠点があるって。まさかお前が作ったとはな」


ダリウスは鼻で笑った。


「試しに俺たちと勝負しようぜ。お前が勝ったら、この島を認めてやる。

負けたら……島ごと俺たちのものだ」


「勝負?」


「戦闘じゃねえよ。お前、戦えないもんな。島のサバイバル勝負だ。一週間で、どっちがより快適な生活を送れるか」


リナとユウキが心配そうに俺を見る。

だが俺は笑った。


「いいぜ。やろう」


一週間後、ダリウスたちは完全に参っていた。


「く、くそ……なんでこんなに差がつくんだ……」


彼らのキャンプは雨で崩れ、食料は腐り、メンバー全員が疲弊していた。

一方、俺たちは温泉に入り、豪華な食事を楽しみ、快適なベッドで寝ていた。


「採取スキルがあれば、素材の良し悪しがわかる。

建築スキルがあれば、丈夫な拠点が作れる。戦うだけが冒険者じゃないんだよ」


ダリウスは悔しそうに歯を食いしばった。


「……負けを認める。お前は、俺たちより優れていた」


彼らは素直に船で帰っていった。

リナとユウキが飛び跳ねて喜ぶ。


「やった! カズマさん、すごいです!」


「当然だろ?」


その後も、島にはさまざまな客が訪れた。


怪物の群れが襲ってきたときは、罠設置スキルで簡単に撃退した。

盗賊団が襲撃してきたときは、建築スキルで作った要塞で完封した。

嵐が来たときは、自然回復スキルで傷ついた仲間を全員治した。


気づけば、俺の島は「奇跡の島」と呼ばれるようになっていた。


「カズマさんの島に行けば、どんな困難も乗り越えられる」


噂は大陸中に広がり、冒険者たちが次々と訪れるようになった。

俺は彼らに住居を提供し、食事を振る舞い、困ったことがあれば手助けした。


ある日、ギルドマスターのジジイが島にやってきた。


「カズマ……すまなかった」


ジジイは深々と頭を下げた。


「お前を追放したのは、私の間違いだった。

戦うことだけが強さじゃない。お前はそれを証明した」


「別に恨んでないよ。おかげでいい生活ができてるし」


「頼む。ギルドに戻ってきてくれ。お前の力が必要なんだ」


だが俺は首を横に振った。


「悪いけど、俺はここでの生活が気に入ってる。ギルドには戻らない」


ジジイは悲しそうな顔をしたが、納得してくれた。


「そうか……なら、せめてこの島をギルド公認の拠点として認めさせてくれ。

『カズマの島』として、正式に登録する」


「好きにしていいよ」


こうして俺の島は、正式な冒険者の拠点となった。


その夜、リナが俺の隣に座った。


「カズマさん、ギルドに戻らなくてよかったんですか?」


「ああ。ここでの生活が、俺には合ってる」


「私も……ずっとここにいたいです」


リナは頬を赤らめて俯いた。

俺の胸が少しドキッとする。


「ずっといていいぞ。お前も、ユウキも、みんな」


「ありがとうございます……」


彼女は嬉しそうに微笑んだ。


それから数ヶ月後、島にはさらに多くの仲間が集まっていた。

冒険者だけでなく、商人や職人、学者までやってくるようになった。

俺の島は、ちょっとした村のようになっていた。


「カズマ様、ありがとうございます!」


「英雄カズマ万歳!」


みんなが俺を慕ってくれる。

正直、ちょっと照れくさい。


だがある朝、俺はふと思った。


「……ちょっと賑やかすぎるな」


島の奥地に、新しいログハウスを建てることにした。

そこは俺だけの隠れ家。静かに釣りをして、のんびり過ごすための場所だ。


「カズマさん、どこ行くんですか?」


リナが心配そうに訊いてくる。


「ちょっと散歩。すぐ戻るよ」


俺は隠れ家に向かい、ハンモックに寝転んだ。

波の音、鳥のさえずり、風の匂い。


「……やっぱり、これが一番だな」


英雄なんて柄じゃない。俺はただ、ひとりで静かに暮らしたいだけなんだ。


でも、リナやユウキ、仲間たちとの生活も悪くない。

むしろ、かけがえのないものになっていた。


夕暮れ時、リナが隠れ家を見つけてやってきた。


「ここにいたんですね」


「見つかっちゃったか」


「一緒に夕日、見ませんか?」


「……ああ、いいな」


二人で並んで、沈む夕日を眺める。

彼女の横顔が、オレンジ色に染まって綺麗だった。


「カズマさん」


「ん?」


「私、ずっとここにいてもいいですか?」


「当たり前だろ」


リナは嬉しそうに笑った。


こうして俺の無人島スローライフは、少しずつ賑やかで、少しずつ温かいものになっていった。

英雄と呼ばれるようになっても、俺の本質は変わらない。


ただ、のんびり暮らしたいだけ。


でも、大切な仲間がいるなら——それもまた、悪くない人生だ。


島の夜は静かで、星空が美しかった。


明日もまた、いい一日になりますように。


そう願いながら、俺は目を閉じた。

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