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第二十四章

「遂にですね。では、これを持ってその姿を見せて来なさい」

「ギョイ~♪」


念願の探し人は、温暖な地帯へと変化した大陸の入り口にある小さな農村に腰を据えたようだった。


周囲には色とりどりの熱帯植物が生い茂り、光に照らされて葉が柔らかく揺れている。


ハルは里の上空をゆっくり旋回し、高く澄んだ声で喜びを表すように鳴いた。私もイリスの背に乗ったままその場で気配を探り、デベスだと認識した。


今の姿を直接視界で確認することは、彼が別れ際に発した言葉を裏切る行為になるため避けた。


あらかじめ土産として用意した、ハルのワイバーン時代の鱗と、現在の風竜の鱗を並べた木工細工の箱を、ハルの飛翔鞍に結ぶ。魔道具ではなく、眺める目的だけのものだ。


デベスなら大切にしてくれるだろう。師匠としての最後の贈り物である。


ハルの報告が終わるまで、村を離れた遠くの森でイリスたちと遊びながら待つ。ドベルが狩りをしている光景を観察し、時間を潰す。


「んんん」

「はい、これはドベルの獲物だね」

「ん」


マッドドッグは中型だが中位ではない。浅い森に棲む魔物であり、私たちが森から離れ留守中に仕留める相手も、森に潜むイリスたちの気配に鈍感な小型か中型までだ。


イリスやハルのように死闘を経験させてくれる相手や、苦戦する戦闘経験はほとんどない。


それでなくとも普段のドベルを見ていると、イリスたちのように試練として死地に追いやることは、見る者としても心が痛む。


常にイリスの玩具となり、ここ最近は機嫌を直すために自らの身を差し出すドベル。

健気な彼をこれ以上酷な試練に晒したくないという親心が芽生える。


「これからも応援するので頑張ってください」

「んん」


熱帯植物を採取しながら、蝶のように美しい蛾の群れと戯れるドベルを眺めるうちに、数時間が過ぎた。


―やがてハルが飛翔鞍に大量の土産を乗せて帰ってきた。その他に文も添えられている。


「読んで欲しい? わかりました」


ハルが念を飛ばして訴えたため、私は声に出して読み始める。イリスもドベルも、デベスのことをよく知るため興味津々で見守る。


文を広げると、そこにはこうあった。



---


「師匠、あざっす。立派になったハルは最高です。ハルはこれからイリスな…」



---


続きはイリスが拗らせるため省略し、読める部分から再開する。



---


「―俺は単なる俺としてやりたくて、俺のことなんか知らない土地を見つけるために冒険を始めた。だから今の村になった。


持たせた土産の実は近くの森から俺が見つけて種から育て、農園まで成長させました。そりゃあ苦労したけど、毎日が楽しくて、今では里の名物だ。


―きっと師匠のことだ、ハルだけじゃなく着いて来ているだろうと思います。約束通り、俺は最高に楽しい冒険を毎日送っていますから、師匠も俺に負けないようにな。果実の他にも苗も良いのを持たせました。


師匠ならあの森でも育てられそうなので、大事にしてください。私が試行錯誤して最高に旨い実をつける苗木なので、枯らさないようにしてくれると信じてます。


そして貰ったハルの鱗は大事にし、家宝にします。


ありがとうございました、ネアム師匠。生涯負け知らずの弟子デベス」



---


「デベスらしいですね」


文を読み終わり、私がしんみりと顔を上げると、旨い実という言葉を聞き逃さなかったイリスが早速、土産の詰まった木箱を見つめ、涎を垂らして待っていた。


「イリス…なんか台無しです」


それよりも蓋を開けてほしいとせがむイリス。無心で眺めるハルとドベル。飛竜の力で無理に開けると中身が壊れるため、慎重に木箱の蓋を外した。


「マンゴーですね」

「んー?」


涎を垂らすイリスに早速味見として種を抜いて口に入れてやる。魔力はなく普通の果実だが、三体とも大変気に入った様子だった。


「ここ最近は庭も森も荒れてますから、整えて苗と種からマンゴー畑でも作りますかね」

「ギョイ~♪」


旨い果実を実らせた光景が脳裏に浮かぶ。ハルは当然として、イリスとドベルも暴れずマンゴー畑を守るだろう。


念や鳴き声で賛成を示す三体の中でも、最も大きな声はハルだった。


味見だけでは足りず、残り三個は私の分として確保し、それ以外の大量のマンゴーはその場で三体の口に吸い込まれていった。


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