地獄の映画館3
【でも、この映画の佐々木ってヒロインは、本物の佐々木君に比べて男を惑わす魔性のビッチ要素が足りないわ】
そんなわけないだろう!ビッチって何だよ。
俺は、男と付き合ったことなんて一回もねぇよ!!!
【そうよ。佐々木君は、もっとビッチなのよ!!!委員長に色目を使ったり、村田君といちゃついたり、水野君に気のあるそぶりを見せたり……。だから、佐々木君という存在は、BL界における幻のポケモンみたいに、無限の可能性が広がっているんだわ。きっと、陸とも恋愛フラグを打ち立ててくれるはず。期待しているわ。あなたなら、世界一のスポーツ選手よりも偉業を成し遂げられると。きっとBL界の王子様になれるわ】
誰だよ、それ……。幻のポケモン?
何で俺は、そんなに期待されているんだ?家族ですら、そこまで俺に期待していないぞ。
【『俺は、あなたのキスだけでは足りません。俺はあなたの恋の奴隷です』とついにヒートを起こし発情期を迎える佐々木君。『哀れなメス豚め。そんなに欲しいなら、貴様の尻にゴーヤを突っ込んでやろう』と高圧的に迫る陸。『ありがとうございます』と涙と涎を流しながら喜ぶ佐々木君。これが、シンデレラを超えるハッピーエンドの完成ね。私って、アインシュタイン以上の天才なんじゃないかしら】
お前、アインシュタインに全裸で土下座して謝れよ!!!
もうやめて……。俺のライフは、ゼロだ……。
そして、隣からは、命の危険を感じる殺気がビシバシ漂ってくる。
【さっきの佐々木の奴、姉さんの隣を狙っていやがった。やはり、奴は、姉さんに気があるのか。くそっ。俺の姉さんを好きになるなんて……。姉さんに手を出したら、殺してやる。姉さんと同じ空気を吸っているだけで殺したくなる。殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す…………】
カオスだ……。
おうちに帰りたい……。助けて、ママ……。
映画が終わるころ、俺は、ほんのり涙目になっていた。
「あら、佐々木君。泣いたのね」
「……ちょっと映画に感動してしまって」
「そうね。素敵な映画だったわね」
【涙目になっている佐々木君も素敵。でも、陸に無理やり襲われアンアン泣き叫ぶ佐々木君はもっと素敵でしょう】
俺は、自分がかわいそうすぎて、もっと泣きたい気分になった。