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下校2

 佐々木君は、たわいもない日常会話をし始めた。それに相づちをうちながらも、まだ私の中で解決できない疑問が渦巻いていた。

 学校一のモテ男が私と帰りたいとは、どういうつもりなんだろう。はっ。まさか好きな男に、モブ女と一緒に帰るところを見せつけてやきもちをやかせたいとか。それとも、実は私の弟目当てなの!私と仲良くなって、私の弟と距離を縮める作戦なんだわ。まあ、なんという策士でしょう。

「あ、ああ。そういえば、山田さんは、兄弟とかいるの?」

 あれ?私に弟がいることを知らなかったのだろうか。おかしいな。いや、これは、フェイクだ。佐々木君は、私に弟がいることを知っていながら、わざと私に質問をして、自分が私の弟に興味ないという嘘をアピールしているのだ。ここで、騙されてはいけない。ついでに、弟の個人情報もしゃべっておこう。

「私の弟は、中学二年生でバスケ部に所属していて」

「あ、そういえば、山田さんの今日の髪型、素敵だね」

「あ、ありがとう」

 佐々木君は、私の弟の話を遮るようにそう言ってきた。私の弟に本当に興味がないのかしら。だったら、私はこれから二人の間を取り持つ恋のキューピットになるようにがんばらないと。

「俺、髪の長い女の子がタイプなんだよね」

「へー」

 ということは、佐々木君がこれから新宿2丁目にいるオカマと恋に落ちる可能性も高いな。

「あれ?佐々木君、何だかけわしい顔をしているけれど、どうしたの?」

「じ、実は、社会の教科書を学校に忘れてきてしまったことを思い出して」

「じゃあ、取りに行って来たら」

 そこで、出会う学校の男教師。そうして、佐々木君は夕日に照らされる彼に一目惚れをしてしまう。

『先生、好きになってもいい?』

 先生は、禁断の愛と知りながらも佐々木君に惹かれてしまう。

『ああ、いいとも。君は地上に舞い降りたエンジェル。俺は、君を愛さずにはいられない』

 そうして、誰もいない教室で抱き合う。そんな二人を夕日だけが見ていた。

「いや、いいよ。山田さんと一緒に帰りたいし」

 何故かめちゃくちゃ手を振りながら、遠慮してきた。佐々木君の恋愛フラグを立てられなくて非常に残念だ。

「そういえば、佐々木君は、今度のGWはどこかに行くの?」

「東京に行く予定なんだ」

「へー。誰かと一緒なの?」

「いや、一人だよ。一人だからね」

と見せかけて、水野君と一緒に東京へと駆け落ちをする佐々木君。そして、愛の逃避行の末、一緒にスカイツリーに行く佐々木君。

『スカイツリーって綺麗だね』という水野君に対して、『お前のスカイツリーの方が綺麗だよ』と囁く佐々木君。まあ、何というロマンティックな展開でしょう。きっと神様も感動して、腐男子になってしまうに違いないわ。

「……山田さん。今、何を考えていたの?」

「何でもない。ちょっとぼうっとしていただけだよ」

 私は、慌てて作り笑いを浮かべた。

「俺、帰りに山田さんの家に寄ってもいい?」

「へ?」

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