表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星降る世界で君にキス  作者: コダーマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/30

ないしょのはなし(3)

 立て続けに五つ。

 星型のビーズを見つけると、行人は今度は紙箱から糸を取りだす。

 器用にビーズを糸に通すと、糸端同士を結わえてみせた。


 直径七センチくらいの輪に連ねられた白い星。

 揺れるたびにサラサラと楽器のような音色を奏でる。


「ほら、星歌」


 とびきりの笑顔で義弟がそれを空に掲げた。


「見せて、見せてっ!」


 彼の腕の中に入り込むようにして白の輝きを目で追うと、ニセモノの星はあたかも救いのように空に浮かんで見える。


「ここから見ると、お空って別の世界みたいだね!」


 弾むような星歌のことば。


「お星さまにお願いしたら、どこにでも連れてってくれそうだね!」


「うん、星歌。別の世界があったらいっしょに行こうね」


 背中があたたかい。

 いつしか彼女は義弟の腕の中で、彼にもたれるようにして空と「星」を眺めていた。


 不思議だ。

 靄に包まれていた空に、こうして星が輝いている。

 同時に、星歌のささくれた心も愛しさの海に充たされる。


 さして身長が違わないふたり。

 至近距離で目が合うと、照れたように笑みを交わす。

 こそばゆい……けれども、このまま離れたくないような。


 そのときだ。

 隣家との路地を通って勢いを増した冷たい風が、ふたりに向かって襲いかかった。


「さむっ!」


 身を震わせ、顔をそむける星歌。

 同時に行人も寒さに上体を縮めた。

 ふたりが突然動いたものだから、その顔が思わぬ形で近付く。

 やわらかな感触が唇に、一瞬。


「!」


 焦ってその場を飛びのくふたり。

 顔を赤らめてパクパクと口を動かす互いの姿を眺めるのみ。


「行人くん、星歌、ごはん冷めるわよ」


 母の声に、星歌は我に返る。

 義弟に向かってクイクイと顎で玄関を指し示した。


「お母さんにはナイショだよ!」


 行人の生母の裁縫箱のことか、今のキスのことかは、自分でもよく分かっていない。

 星歌は鼻息荒く、もう一度「ナイショ!」と大きく声をあげた。


 こくり。


 頷く行人は、彼女の勢いに呑まれている様子。

 仕方のないヤツだなと呟いて、星歌は義弟の手をとった。


 ──今日から仲良しになったと言ってやろう。お母さんもお義父さんも喜ぶだろう。


 そう思うと、くすぐったいような気持ちに心が華やぐ。

 この先、何もかも上手くいく──このときは、そう思った。


 どこへも行かなくても、星歌の世界は優しかった。

 幼いあの日の、内緒の思い出。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ