第60話 たんぽぽ会 3
王太子ヘンリーはリバリア王国から手紙を受け取った。
たんぽぽ会にポールが欠席、代理で国王が出席すると記してあった。
意味する所をヘンリーはいろいろ考えた。あのドラゴンはリバリア王国かアズマ法皇国が関わっていると思っていたが、状況的にはリバリア王国?
情報はこの手紙だけ、考えても無駄だがヘンリーはあれこれ考えた。
そこにリバリア王国のギルドで働いているパーシーから、連絡が来た。
想像したより、酷かった。
一匹目のドラゴンが現れた同時期、王家の別荘で事故が起きた。若い男女十人程が亡くなったそうだ。王家の別荘に入り込んで遊んでいて事故で死亡と発表されている。
パーシーが調べた所、全員がポールと同じ日に生まれたらしい。
次のドラゴンが現れた頃も王家の別荘で事故がありポールも亡くなった。この時も同じ日に生まれた男女二十人が亡くなったらしいが、その事実は公表されていない。公式にはポールは療養している事になっている。
ポール・・・・俺を犬呼ばわりしたやつ・・・とヘンリーはポールを悼んだ。
決心がついた。
今回のたんぽぽ会の帰りに、リンゴンの実を奪わせてやろう。
三ヵ国ともだ・・・・・ポールへの餞だ。
たんぽぽ会はいつも通りなごやかだった。ここでヘンリーは
「わたしはいつもお招きばかり、皆様の国へうかがってみたいです。エルプーン様。お邪魔していいですか?」
「えぇえっぇわたくしの一存ではなんとも」とエルプーンが言葉を濁すと
「お二方はどう思いますか?」とヘンリーが笑うと
「・・・・いいですね。国境を接しているのに、行ったことがないのは残念です」とツーチャンが答えると
リバリア国王は
「長い旅路になりますが、それも楽しいかと」と答えた。
っとベルがなった。
四人は向かい合い頭を下げた。
しばらくして、薔薇が綺麗だと聞いたヘンリーは妻二人を誘って見に行った。
二人ともあの園遊会で見初めた。一人は誰よりも高く飛び上がっていた令嬢。一人は影響を受けなかった令嬢で気丈にも他の令嬢をなだめてまわっていたうちの一人だ。
ともに賢く、表立って波風を立てない賢さがありがたい。
子供はたくさん欲しい。能力ある世継ぎを得る事がこの国の存続に関わってくる。自分はどの子も平等に愛することは出来ないだろう。だが、平等だと思わせるように努力しよう。
そして、子の能力をしっかりと見つけよう。その子はたった一人で・・・いや、わたしに与えられたジルをその子が見つける手助けをしよう・・・
妻のうち一人と今晩の約束をした。
寝物語にいつもの愚痴をこぼしていた。
「ジルがさぁ」
「ヘンリー当たり前ですわ。公爵位なんてジルフォード様にもティーナ様にも価値はありませんわ」
「だけど・・・・だいたい結婚できたのは俺が王命を出したからなのに・・・」
「そんなのなくても、あの二人は結婚しましたわ。ジルフォードはあのすました顔のまま全部をけちらしてね」
「確かにはそうだね」
「そうですわ。王命なんて・・・・くそくらえですわ」
そう言った妻の瞳は空にバビューンと飛んで行ったあの日と同じだった。
ヘンリーは妻に口付けた。妻が舌を絡めてきた。ヘンリーは妻を抱く手に力を込めた。
誤字、脱字を教えていただきありがとうございます。
とても助かっております。
これで完結です。読んでくださいまして、ありがとうございました。




