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第46話 リンゴンに纏わる話 ティーナ目線

最近、ご近所さんとか、その知り合いとか、さらにその知り合いがうちの台所を見に来る。


必ずサリーさんが一緒に来てくれるので安心だ。



今日、見学に来た方が、隅に置いた籠のなかにいれてある、リンゴンの実を見て、


「まぁ懐かしいわ、この町でこれを見るとは」と言い始めた。


「これ、リンゴンを知ってるんですか?ここに来る途中で買ったんですが、どうやればいいのかわからなくて」


「そうでしょうね、皮と言うか、殻が固いものね」


「えぇさわると痛いし。どうやってすりおろすのか」


「ふふ、簡単なのよ。茹でればいいの」


「茹でる?」


「そう、ほら、そこのお鍋だと二個入るかしらね。リンゴンを入れて水を入れて火にかける。沸騰してしばらくするとトゲも皮も柔らかくなるから、取り出して手で皮を剥くの。それから実をすりおろしてフライパンで焼くの。パンのようになるのよ」


お話の途中で、鍋に二個いれて水を入れて火にかけた。


サリーさんが、


「おろし金がないわね。うちのを持ってくるわ」と出て行った。


すりおろすのは二人がやってくれた。わたしがやるのは危なくて見ていられないとか・・・・


焼くのはわたしがやったが、二人がはらはらしてしていた。


できあがりは、不格好だったが・・・・引っくり返すのに失敗したから・・・お皿にいれるとそれなりになった。


味はパン。ただ、少しリンゴンの香りがして好きな味だ。




珍しいと聞いたので、セイレンさんの所に行くときにリンゴンの実を持って行った。


実を渡した時、セイレンさんはリンゴンの事を知っていて、喜んでくれた。


今日も食事をごちそうになったが、リンゴンのパンもあった。


お姉さんたちも美味しいと食べていた。



食後、セイレンさんの部屋に呼ばれた。


「今日、リンゴンを見て思い出したんだ。ティーナに言って置きたくてね」


「うん」


「ティーナは子供だったから知らないだろうけどね、十年前まではこの国は貧しくてね。田舎の庶民は飢え死にする者が多くいたんだよ。子供を売って食べ物を買ってなんとか生き延びたり・・・・」とセイレンさんは珍しく暗い顔をしていた。


「・・・・・」


「ティーナは孤児院に居たんだね。わたしに言わせりゃ、運がよかった。いい孤児院にいたんだよ。まぁ今はその話じゃないね」と優しきわたしを見ると


「リンゴンも皮を捨てずに皮を細かく刻んで混ぜて焼いたり、木の皮を混ぜたりね・・・・美味しいものだと今日初めてわかったよ」と言うと少し間を置いて


「それがある年から、急に小麦が出回るようになったんだよ。ティーナの言う金髪極道が政治に関わるようになってからなんだよ」


「その時あの極道って子供でしょ?関係ないよ」と言うと


「王家は子供じゃいられない」とセイレンさんが強く言った。


「あの王太子様は子供の頃から国の運営をやってるよ。お父様の国王様が病気がちでね・・・・十歳(とお)やそこらで国を背負ったんだよ。よくやって下さる。飢えなくなった。薬も手に入るようになった。


ティーナ、あんた、あのお人を極道と言ってただろう。確かにね、極道だよ。政治の道を極めてらっしゃる」と真剣にわたしの目を見た。


「・・・・・セイレンがそういうなら、こずるい顔だからって嫌わないようにするけど・・・・」と言うと


「あぁ、話してみるとわかるからね」といつものセイレンさんに戻った。


「うーーん、やってみる」と答えたわたしに


「王太子とか公爵とか言っても同じように馬鹿な男だから、ティーナが 理解(わかって)やるんだよ」


とすごくしみじみと言った。




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