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第29話 薬師長の悩み

知り合いの薬師から連絡があったのが最初だった。


「天才が手元にいる。託したい、守ってやってくれ」


理由(わけ)がわからなかった。天才ってなに?だけど彼の誠実な人柄から言って騙していることは、ないだろう。


王宮(うち)で下働きぐらいだったら、わたし個人で雇ってもいいかなと人助けのつもりで会いに来てもらった。


間違いなく天才だった。知り合いも彼女、ティーナを守るのは王宮しかないと思ったようで、わたしを頼ったようだ。



ティーナが部屋の隅でお菓子を食べながら本を読んでいる間、彼女の今までを教えて貰った。



ティーナは孤児院にいたらしい、まだこの国が大変だった頃、ティーナが五歳くらいの時、孤児たちが熱を出したそうだ。

満足に食べられなくて体力のない子供達は重体だったそうだ。


するとティーナが


「この草が熱を下げるって教わった」とか言って庭に植えてある薬草をちぎって鍋に入れ、水を空中に出すとそれも鍋にいれ、


「院長せんせ、火をつけて」と言ったそうだ。薬草だし害にはならんだろうと火をつけてやると


ティーナはしばらく鍋を見ていたが、よしって感じで鍋を火から降ろして


「これを飲ませて」と言ったらしい。


匂いはなんだか、ポーションらしいし、温かいものは体にいいだろうと飲ませたところ、熱が下がった。


院長はその事を近所に住んでいた彼に相談して、彼がティーナを引き取って薬草のことを教えたらしい。


「なぁ薬師って言うのは自分で水を出すのか?」と院長が不思議そうに聞いてきたそうだが、それはない、絶対に秘密にすると約束させたらしい。



彼が言うには少し教えたら、自分で薬草事典を読んで知識を吸収したらしく手がかからなかったそうだ。


知識は教えたが、それも最初だけ、後は全部、彼女の才能らしい。



ポーションはいくつかの薬草を使って作る。薬効のあるもの。薬効を高めるもの。材料から薬効をよりたくさん引き出すもの。


それをティーナは一つだけで作る。


師匠は、ポーションを作る時はひとりで、誰にも見せてはいけないと教えたらしい。


あいつは我が友ながら、賢くて先を見られて、その上、いい人間だ。




ティーナは王宮薬師として働き出した。王宮薬師はプライドが高く一般のポーションなんかは作りたがらない。なにやら研究をしたがる。


そのしわ寄せが薬師長のわたしに来て、わたしはポーション作りに追われていた。


それがティーナのおかげで解決した。それどころが王宮職員の仕事効率をあげる為や、福利厚生で売り出していたポーションが人気になって転売するものが出てきた程だ。

特に美肌ポーションはすぐに売り切れてしまう人気商品となった。


すると、あの王太子が乗り出してきた。いつものように、にまにま笑いながら、二つ三つ質問するとティーナを見に行った。



それからはあった言う間だった。結婚?誰と?逃げ出した?なぜ?


そう、託されたのに守りきれなかった。食堂に来なくなった時にもっと調べればよかった。公爵の所からお弁当を持たされていると思ったんだよ・・・・


今、わたしたちはポーション作りに忙しい・・・・品質が落ちたと苦情は来るし、研究がはかどらないと薬師長たるわたしを睨む薬師たち・・・・ティーナ・・・・戻って来て・・・

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