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開戦

アルカディア歴1834年11月27日

クレイモス王国国境ラバスト砦近郊



 翌朝。

 アルベルトは自身が率いる精鋭騎馬隊の先頭にたち、渓谷を進んだ。隣で馬を進めるのは赤毛の美女レミー・ベラルル。黄金のビキニアーマーに白いマントを羽織っている。

 反対隣には聖騎士副団長で今回の作戦参謀たるダルシアン・ロデッツ。肩までの黒髪に眼鏡をかけた怜悧な美青年。レディウスに次ぐ、ニーアのお気に入り。

 彼らの後ろには聖騎士たち。誰も彼も容姿が整っているのはニーアが選んでいるからだ。当然、彼らはニーアの寵愛を受けており、彼女を神のように崇拝している。


 アルベルトにしてみれば、聖騎士たちが自分とともに危険な先鋒を引き受けたのは好都合だった。彼らを減らすことができれば、それだけニーアの力を削ぐことができる。いつか彼女の打倒を志す者が現れた時、役に立つだろう。


 両側にそそり立つ岸壁は20メートル近く。厄介なことにフレア教王国側は絶壁となっており、少数で上るならともかく、とても大人数で上ることはできない。

 対して、クレイモス側は緩やかな傾斜になっており、崖上に上ることが容易。まさに天然の要害である。


 当然、クレイモス王国軍では崖上に弓兵ほか、魔術師や加護技スキル使いなど、遠距離攻撃部隊を配置。

 攻め手が渓谷半ばに達したところで崖上から一斉攻撃をかける。

 通常の矢のほか、光の矢や火球、見えない風の刃、衝撃波、それらを雨あられと降らせる。

 情け容赦のない攻撃。


 だが、もちろん、攻め手であるアルベルト率いる部隊はそれを予想していた。降ってくる矢や魔術が彼らの頭上に張られたガラスのような防壁に遮られ、弾かれ、消滅する。

 聖騎士副団長ダルシアン・ロデッツの加護技スキル『絶対防壁』。あらゆる攻撃を弾く壁を一定時間造り出せる。しかも、ダルシアンはニーアから大量の魔力を注がれた者。渓谷全体をカバーするほど長大な防御の天井を造ってのけのだ。


 誰もダルシアンがこんな秘密兵器を持っているとは知らなかったため、アルベルトは元より、隣のレミーも驚いた。彼らは敵の攻撃とともに、夢中で馬を駆けさせていた。


 ダルシアンだけはさすがに加護技スキルに集中していたために、ふたりに遅れたが、ほかの聖騎士たちはアルベルトのあとに続いて、突撃する。


 やがて渓谷の出口。そこを塞ぐように大盾を持った兵士たちが並んでいる。


 アルベルトは気合の声とともに腰の剣を抜いた。冒険者時代から使っている剣。柄の割には刀身は短剣ほどの長さしかない。そこに白い光が刀身の代わりとなって伸びる。アルベルトの加護技スキル『光の剣』だ。


 大盾の防御陣に近付いたところで、正面から魔術が飛んでくる。やはり『風の刃』や『光の矢』、『爆発球』など。

 レミーがアルベルトの前に出た。『無傷』

加護技スキルを持つレミーは、魔術の攻撃を身に受けても傷一つ追わない。もちろん、怯みもしない。とはいえ、乗り馬は無傷とはいかない。


 ついにレミーの乗り馬が倒れる。レミーは倒れる馬から飛び降りると、そのまま地を駆ける。体には紅蓮の炎をまとい、両手には炎の剣を握る。

 そのまま厚い防御をしく敵へと突撃。

 炎で無理やりこじ開けていく。


 その中にアルベルトも飛び込んだ。こちらはまだ乗り馬は無事だ。騎馬のまま炎の中に飛び込んで、光の剣を振り回し、敵を切り裂く。


 ふたりのあとにも聖騎士たちが続く。ニーアが寵愛を与えた者たちだ。それぞれが巨力な加護技スキルと膨大な魔力を秘めている。

 そのあまりの熾烈な攻勢にクレイモス軍が大きく下がり、ついには逃走を始める。


 追いかけるフレア教王国軍。

 アルベルトもレミーも戦の空気にのまれ、夢中だった。

 圧倒的な勝利。その美酒は戦に批判的だった両名すら酔わせてしまった。


 だが、その時。

 攻め手が進む大地が大きく陥没した。深さは3メートルほどだが範囲が広い。直径2百メートルほどの大穴だ。

 クレイモス王国軍の準備していた罠。

 あらかじめ掘った穴に、魔術で仮の床を作っておく。そして、敵軍が押し寄せた際に魔術を解除して、罠に落とす。

 特に画期的なものではなく、大昔から存在する罠だ。

 レミーにしても、アルベルトにしても戦闘経験は豊富だが、戦争経験はない。そもそも作戦参謀のダルシアンからして、戦術のせの字も知らないような男だ。


 対して、7年間、隣国からの侵略に怯えていたクレイモス王国に抜かりはなかった。いかにして、王国を守るかを指揮官たちは考え続けていたのだ。

 その差がこの結果を生んだ。


 クレイモスはさらに徹底していた。敵が穴に落ちた直後、大盾の兵たちに再び壁を作らせる。あらかじめ入り口の両脇に配置ておいた者たちだ。

 同時に穴に落ちた敵兵には魔術と矢の集中攻撃を見舞う。


 フレア教王国軍、アルベルトとレミー、それに聖騎士たちにとって致命的な事態にならなかったのは、ダルシアンが即座に穴の上部に加護技スキル『絶対防壁』によって蓋をしたためだ。彼の加護技スキルが僅かにでも遅れたら、アルベルトはもとより、多くの聖騎士が命を落としただろう。


 それでも加護技スキルを無限に使い続けられるわけではない。ダルシアンの加護技スキルが消滅した瞬間に、集中攻撃がかかるのは目に見えている。


「どうやら、私の加護技スキルの出番のようですね」

 聖騎士のひとり、ライオス・レアルが言った。焦げ茶色の短髪の青年で、まだ20歳前と年若い。


 ライオスがニーアから授かった加護技スキル『幻影』。幻の映像を造り出すというもの。実体はないものの、その効果範囲は広い。

 大穴を囲うクレイモス軍の中に、突如として、聖騎士たちが現れ、剣を振り回す。舞い散る血しぶき。


 当然、混乱が起こった。穴を塞いだ蓋が消えるのを待っていた弓兵や魔術師たちが怯む。


「『絶対防壁』を解除する。全員、最大の攻撃で、この窮地を突破せよ」

 ダルシアンが大声で叫ぶ。


 すでに、穴に落ちた衝撃で、馬たちは潰れている。それでも、この場にいる誰もが魔力で自身を強化する術を身に着けた者だちだ。3メートル程度の深さの穴など、ひと跳びで這い上がれる。


 今がその時ではないか?


 アルベルトの心にその考えが湧いた。

 血に酔ったような高揚はすでに冷め、当初の目的。自身の覚悟を思いだした。

 そっと加護技スキル解除のタイミングを図るダルシアンをうかがう。


 敵軍に集中している、今、この時ならば、ニーアの力を得ているダルシアンとて無防備。一刀の元に葬りされる。そうすれば虚をつかれた聖騎士たちに隙ができる。結界が解除され、上からは集中攻撃がかかるはず。


 わずかな躊躇。それは同国人。同胞たちを手に駆ける罪悪感。


「邪教をあがめる者たちなど、全員火あぶりにすべきです。女子供老人とて、容赦するべきではない」

 そんな言葉が頭に響く。

 道中にダルシアンがアルベルトに言った言葉だ。


 この者たちがクレイモスに侵攻すれば、虐殺が待っている。罪のない者たちが殺される。裏切ることがなんだ? 


「アルベルト様。誇りは自身で勝ち取るものですわ。そして、それはより困難なことを成した時にこそ、得られるものです。すぐに諦めていては、本物の誇りを得ることなどできませんわよ」


 いつかエレノア・ウィンデアに言われた言葉がよみがえる。


 そうだ。死ぬ瞬間まで、私は、ルゼス王国王太子アルベルト・アルクであり続ける。王太子として、成すべきことを成すまでだ。


 アルベルトは気合の声をあげると、今まさに加護技スキルを解除しようとしていたダルシアンに光の剣で斬りかかった。


 さすがにこれはダルシアンも予想だにしなかった。まさか総大将のアルベルトがこの窮地で自分に攻撃をしかけるなど、誰が想像しようか。

『絶対防壁』を新しく張るためには、一度、天井の結界を解除する必要がある。だが、間に合わない。


 血しぶきが起こった。聖騎士の体が斜めから二つに割れる。

 だが、それはダルシアンのものではない。

 聖騎士のひとり、加護技スキル『身代わり』を持つ者がそれを使用し、ダルシアンを守ったのだ。

 ダルシアンとその聖騎士は瞬間的に入れ替わった。『身代わり』を使った聖騎士は死に、ダルシアンは彼のいた場所に移動していた。


「リックフォード」

 ダルシアンが叫ぶ。

 そして、アルベルトを睨んだ。

「なにをなさる。王太子」


「私は私が信じる正義を貫く。それだけだ」

 アルベルトは怒鳴ると、10メートルほど距離が離れたダルシアンに向かって跳びかかる。


「裏切ったな。フレア教を。『聖女』様を」

 ダルシアンが剣を構える。

 加護技スキル『絶対防壁』を解除することはできなくなった。その前に、アルベルトを片付けなくてはならない。


「元より、『聖女』もどきの軍門にくだったつもりはない」


 アルベルトの振り下ろした光の剣がダルシアンの頭上に落ちる。ダルシアンはそれを横に跳んでかわし、振り向きざまに横なぎの剣を振るう。

 アルベルトはそれを読んでいた。身を低くしてそれをかわすと、そのまま一気に踏み込んで、斬り上げる。

 さすがは冒険者として魔物と戦ってきた男である。

 実戦をほとんど体験してこなかったダルシアンはとっさに剣でそれを受けようとしてしまった。ダルシアンの剣を光の剣が割る。その剣はさらに彼の体を斬り割いた。


 アルベルトは止まらない。そのままかたわらの聖騎士に斬りかかり、一刀の元に首をはねる。


 次。

 聖騎士たちが態勢を立て直す前に、できるだけ多くを倒す。聖騎士の数が減れば、それだけ神殿の力も弱まるはず。


 4人目の聖騎士を剣ごと唐竹割にしたところで、背中に衝撃を受け、吹き飛ばされた。何者かの魔術か、あるいは加護技スキルか。

 転がったアルベルトは、すぐに身を起こすが、そこに無数の光の矢が飛んできた。それはあまりにも数が多く、視界を白く染める。


 これで終わりか。

 まあ、いいさ。私にしては上手くやれたはずだ。そうだろう、クロウ……。

 アルベルトは光の中に黒い人影を見た気がした。



 レミーは迷っていた。

 つい、自身の目的を忘れて、戦いに夢中になった。おかげでクレイモス軍の計略のはまり、落とし穴に落ちてしまった。もちろん、『無傷』の加護技スキルを持つレミーにはかすり傷ひとつない。もともと徒歩でもあったので、損害は軽微にすんだ。


 ここで聖騎士たちを始末するべきではないか?

 それがレミーの迷いだ。

 聖騎士の数は百人程度。自分ならば、全員、殺すことが可能だろう。彼らをここで皆殺しにすれば、自分が裏切ったこともバレることはない。

 ただ、アルベルトだけはどうしようもない。


 あとで懐柔できるか? それが迷いの元だ。下手をすれば、主であるヴァミリアン伯爵までも責任を取らされる事態になる。

 高齢な身に鞭打って政務を続ける伯爵を思えば、軽挙は慎まなくてはならない。それでも……。


 聖騎士のひとりがなにか加護技スキルを使ったらしく、外の敵軍から混乱の音が聞こえる。

 ダルシアンが加護技スキルを解除しようとしている。

 もう時間がない。


 今回は諦めるか……。


 しかし、レミーには予想外の事態が起こった。アルベルトが突如、声をあげて、ダルシアンに斬りかかったのだ。

 飛び込みざまの一撃目はかわされるも、続く攻撃で見事にダルシアンを倒した。

 そのまま聖騎士たちを次々と斬る。


 想いは同じか、王太子。


 レミーの覚悟は決まった。心の中でヴァミリアン伯爵に謝罪する。万一の時は迷惑をかけることになるだろう。


 レミーは疾風のように駆けると、今まさに吹き飛ばされ、さらなる魔術の攻撃を受けようとしていたアルベルトの前に立った。

 何百という光の矢がレミーに当たる。

 だが、レミーには効かない。彼女の体はいかなる攻撃も弾く無敵の肉体。実戦で彼女を倒したことがあるのは、ただひとり、エレノア・ウィンデアだけなのだ。


「レミー・ベラルル……なぜ?」

 レミーの後ろでアルベルトが言った。

 腰までの美しい赤毛とほとんど裸体のようなその姿。見まがうはずがない、


「私もフレア教王国にはうんざりとしておりますので。その中心たる聖騎士団は片付けとうございます」

 振り返って言うレミーの体が炎に包まれた。

「要するに、アルベルト殿下。我らで、聖騎士たちを皆殺しに致しましょう」


 聖騎士たちがレミーに向かって、水系統の青色魔術や加護技スキルを撃ってくる。だが、レミーの灼熱の炎の前に、生半可な水魔術など意味がない。


 レミーは聖騎士たちの中に飛び込むと、炎の剣を振り回す。結界で防御する者もいるが、レミーの振るう炎は岩すらも燃やす獄炎。その熱に周囲が包まれれば、直接身を焼かずとも酸欠で意識が遠のく。そして結界が切れたあとは、炎にまかけれ灰になる。


 なんとか炎の元たるレミーを倒そうとするが、彼女に攻撃は一切通用しない。


 そこにアルベルトが加わる。彼が振るう光の剣は身の丈を遥かに越し、5メートル近く伸びた。それを振り回し、炎に気を取られる聖騎士たちを倒していく。

 こういった乱雑な戦いでこそ冒険者の経験が生きる。


 戦いながらも、アルベルトはここ数年ではなかった冴えを感じた。

 頭が冴える。心は静かで穏やか。

 周りの状況が良く見える。


 そう、冒険者時代。まだクロウがいた頃に時々、感じた感覚。


「うん、さっきの戦闘は良かった。状況を広く見てたし、終始、落ち着いていた。あの時の感じを忘れないでくれ」

 クロウにそんなことを言われた。


 当時のアルベルトはクロウに対して強い劣等感を感じていたため、ただただ反発した。せっかく、アルベルトを高めるための助言をしてくれたというのに。


 レミーとアルベルトの裏切りに、聖騎士たちはひとり、またひとりと倒れていく。なにより、副団長のダルシアンが倒れたのが痛かった。統率が取れず、各個撃破の的になる。


 そのダルシアンについて、レミーとアルベルトは違和感を感じていた。


 なぜ加護技スキルが解除されない?


 天井は未だ『絶対防壁』に塞がれたまま。幸い、防壁は空気を通すために窒息するようなことはないが、使用者が死したあとも加護技スキルが残ることなどあるのだろうか。


 先に気づいたのはアルベルトだ。

 ダルシアンの死体の様子がおかしい。二つに割れた体が、それぞれ異様に膨れているのだ。


 なんだ?

 なにが起こっている?


 様子を身に近付こうとしたとき、ダルシアンの体が一気に巨大化した。肉の球体のようになり、そこから赤い触手が無数に飛び出した。


 レミーも気づいた。

 目を丸くして、肉の球体を見る。

 なんだ、あれは?



 同時刻

 エフィレイア王国王都ウィンストン



 ちょうど同時刻。

 高級宿のテラスから、エルシュニーアが街を眺めていた。眼下では人々が悲鳴をあげて逃げ惑っている。

 なにから?

 屋根に届くほどの身長の巨人。それもぶよぶよとした肉の塊のような巨人だ。


 エフィレイア王都。馬車が行き交い、人々が練り歩く、そんな大通りに突如、肉の巨人が現れたのだ。


「みんな、必死に逃げてるなあ。頑張れー」

 笑顔でそんなことを言う。


 肉の巨人が現れたのは初めてではない。これでもう8回目である。


「では、そろそろ参ります」

 ニーアのすぐ後ろに立っていたレディウスが言った。シャツのボタンが外れたままなのは、つい先ほどまで、ふたりで愛し合っていたからだ。


「まだダメですよ。なんか、私、興奮してきちゃいました。ねえ、レディウス様。私を鎮めてくださいよ」

 言って、ニーアは窓に背を向けて、レディウスの首に腕を巻き付ける。


「ふふっ、今回も最高でしたね。恋人が怪物になるところを見て、リアラさんたら腰を抜かしちゃって。トニー君はわけがわからないまま、リアラさんを潰しちゃって。うふふっ。トニー君たら、リアラさんの死体をまだ握ったままなんですよ。よっぽど好きだったんですね」


「今回は以前よりも短時間の接触で芽を植え付けられたようですが」

 レディウスが愛おしそうにニーアの体を抱く。


「そうなんですよ。それに、意識も残すことができるようになったんですよ。すごいでしょう」


「はい。さすがはニーア様です。その御業みわざ、まさにこの世に顕現した神そのもの」


「もう、ダメですよ。聖騎士団長がそんなことを言ったら。でも、お肉ちゃんたちがたくさん暴れるおかげで、こっちの神殿もだいぶ懐柔できてきましたね。あと少しかな。あっ、そうだ。次はバザック神官長のお孫さんをお肉ちゃんにしちゃいましょうか。それで、大神殿の中で急に、変身。大暴れ」


「確かにバザック様はニーア様の偉大さを分からぬ愚か者。天罰を受けるべきです」


 それからふたりは長い口づけをかわす。

 窓の外からは阿鼻叫喚の声が聞こえてる。

 ニーアが遊びで魂を変化させた古道具屋のトニーが暴れているのだ。


 ふたりがエフィレイア王都に来て3ヵ月。依然、フランツ国王との謁見はかなわない。だが、ニーアは気にしなかった。

 エフィレイアの神殿で、この国の聖騎士たちを取り込んだり、有力者を取り込んだり、たまに、こうして肉遊びを楽しんでいるのだから。


 もともと、この肉遊び。聖騎士たちをより強力にしようと実験を重ねて生み出したもものだ。副団長のダルシアンほか、お気に入りの何人かにはすでに処置をほどこしている。

 魂を徹底的に歪め、造り変える。ある一定まで魂が歪むと、肉体に異変が起こり、肉化する。そのため、魂をおおう被膜を作ってやる。

 時間をかけて、しっかりと作り込んだ聖騎士たちは彼らが死ぬまで肉化することはないだろう。それどころか、肉化した後、元に戻ることができる。

 ただ肉化している間は意識が無いのが課題だった。例外的にダルシアンだけは、肉化の最中、いやそれどころか死ぬ瞬間も死んだ直後も、意識を保ち続けていたが。

 それはやはり、ニーアがそれだけ手をかけたからだったのだろう。


 噂では、しびれを切らしたアレキサンデル教王がついにクレイモスを攻めたらしい。

 ひょっとしたら、聖騎士たちが戦場で肉化しているかもしれない。


「ふふっ、みんなビックリしちゃったかな」

 ベッドでレディウスの上におおいかぶさり、ニーアは言った。


 外からは未だに、悲鳴や怒声が聞こえてくる。

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