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ドラゴンとの戦い

 翌日、早朝、討伐軍の出発となった際、ちょっとした騒動が起こった。

 街の男が自分たちも戦うと、農具やナタを手にして騎士団に申し出たのだ。


「俺の家族はみんなドラゴンに焼かれちまた。小さな妹もだ。お願いです、あいつを倒す手伝いをさせてください」

 少年のひとりが言った。


「俺んところもだよ。生き残ったのは俺ひとりだけ。一瞬で、みんな殺された。俺の家族がなにをしたってんだ」

 別の男が言った。


 ほかの者たちも口々に、ドラゴンに殺された家族のかたきをとりたいと訴えた。


「皆の気持ちはよくわかった。だが、同行は許さん。この討伐軍は全員が戦闘経験者だ。お前たちのような素人ではない。武具もないお前たちがついてきたところで、足手まといになる。どうか私を信じて朗報を待っていてくれ。必ずやかたきのドラゴンを打ち取ってこよう」

 シルヴィオ伯爵カイルが自ら説得。

 義勇軍を解散させた。


 エレノアは男たちの怒りと悲しみに打たれ、その想いを汲みながらも総大将としての判断を優先するシルヴィオ伯爵の言葉に、感銘を受けた。涙を流して、うなずく男たち。

 それを唇を噛んで眺めるシルヴィオ伯爵。


 そんな感動的な場面が隣から発された言葉で台無しになった。

「使えるものは使えばいいと思いませんか? 囮くらいにはなったかもしれないのに」とアレックス。


 ぶん殴って差し上げましょうか、と本気で拳を握りかけた。

 本当にどうしようもないドラ息子である。



 ドラゴンの巣穴へと向かう道中、いくつかの村を通った。いや、元村であった場所と言った方が良いだろう。焼かれ、大半が焦土と化し、いくつかの家屋が残っているだけの場所。周囲には草木も残っておらず、ただただ何もない。


「なぜ、ここまで……。レッドドラゴンは人間がお嫌いですの?」

 エレノアは思わずそんな言葉を口にしてしまった。


「そりゃあ、ドラゴンも魔物ですからね。魔物は魔王の手下だから人間を殺すのは当然ですよ」

 アレックスがすかさず言った。

 彼はとにかくエレノアと絡みたがるのだ。


「魔王? 邪神シャドーのことですの?」

 エレノアが言った。


「ああ、フレア教では邪神でしたね。フレア神と対立する邪神シャドー。だけど、まあ、魔物の王、魔王の方がわかりやすいでしょう? 平民の間じゃあ、そっちで通ってますよ」


「ですが、魔物たちが統率されているようには思えませんわ」


「まあ、所詮魔物ですからね。頭が悪いんですよ」


 そんなふたりのやりとりを、クロウは苦笑いとともに聞いていた。

 闇の神シャドーと契約している身としては、魔王や邪神という名がいかにも不公平な見方のような気がするのだ。

 光の神フレアと闇の神シャドーは対になった神。いや、ひょっとしたらひとつの神の別の面を見ているだけのような気さえする。


 なんにしても、シャドーに対してはエレノアやアレックスのような見解が一般的。だからこそ、クロウはパーティを追い出されたのだし、今も力を隠しているのだ。


「まあ、ドラゴンの気持ちはドラゴンにしか分かりませんよ」とクロウ。


「その通りだな。とにかく倒せばいい」

 アレックスが言って笑った。



 アレックス・シルヴィオは、なんとしてもドラゴンを自分の手で倒したいと考えていた。

 幼い頃から、武人気質の父に憧れていた彼は、自分の加護技スキルが戦闘用であることを知り、大いに喜んだ(加護技は人の願いの数だけあるといわれている。遅く得られた加護技ほどより限定的なものとなる傾向がある)。

 頭を使うことは苦手だったので、半ば逃げるように、ひたすら武芸に励んできた。


 恵まれた加護技スキルのおかげで、12歳になる頃には、指南役の騎士すら倒せるようになった。単純なアックスは調子に乗った。

 いずれは国内最強、いや、ミッド大陸最強の戦士になってみせる。そんな大望を抱いた。

 もちろん、領主の長子としての役割を知らないわけではない。だが、アレックスにしてみれば、領主などという退屈そうな仕事はごめんであった。


 早いところ武功をたてて箔をつけ、冒険者になりたい、というのがアックスの希望である。

 領主にはふたりの弟のどちらかがなれば良い。


 そんな折りにドラゴンの騒動である。これこそ、俺の求めていた武功をあげるチャンス。そう思った。

 なんとしても討伐軍についていく。

 そう決意して父を説得に当たった。そうこうするうちにアロアーにドラゴンが襲来。

 さらには重傷人の治療に当たっていた、エレノア・ウィンデアがセクプトで『紅騎士くれないきし』を破った強者だという。父カイルは、これぞ好機ととらえた。

 アックスはそこに便乗した。次期領主として、なんとしても武功をたてたい。領民たちからの支持を得たい。そんな思ってもいないことを言った。


 父カイルはアレックスが冒険者となることを諦め、次期領主としての自覚が芽生えたのだと喜び、同行を許可した。


 アレックスは歓喜した。エレノアの側について学ぶようにと言われ、なんやかんやと絡み続けた。

 いかにも気が強そうな顔立ちは、アレックスの好みではなかったが、美人は美人。せっかくなのでものにしてしまおう、などと浅はかに考えていた。


 ともかく、アレックス・シルヴィオという男は頭の中身が軽い。そして自分を高く評価しすぎていた。

 シルヴィオ伯爵カイルは、領主として常に領民のことを考える慈悲い男で、面白みはないが真面目で堅実な性格は王宮からの覚えも良かった。

 ただ、身内にいささか甘すぎるというところがあり、そのせいでアックスを甘やかし過ぎた。


 昨日の作戦会議で、騎士団とともに洞窟の外で待機する役目となったアックスは、はなはだ不満であった。会議が終わったあとも、父に文句を言い続けた。


 だが、いくら息子に甘いシルヴィオ伯爵というえど、さすがに一度、決定したことをくつがえすことはしなかった。


 こうなったら、何が何でも突入部隊についていってやる。

 アレックスの中では、自分がドラゴンを簡単に仕留められるだろうことは疑ってもみなかった。その他大勢の攻撃の中にまみれるのではなく、ドラゴンの頭に剣を突き立て、誰が見ても分かるほどの武功を立てる。

そうでなくてはならない。


 アレックスは密かにBランク冒険者パーティのメンバーに接触。ぜひとも自分も同行させて欲しいと頼んだ。その戦士の男とは背格好も同じくらい。好都合なことに、男は終始、フルフェイスの兜をかぶっている。入れ替わりは簡単だ。


 大金を積むと戦士はあっさりと入れ替わりを了承。彼としても今回の依頼は危険度が高く、あまり気が進まなかったのだ。

 自分の代わりに戦ってくれるのならば、好都合。

 彼自身は、入れ替わったら、そのままどこかへ逃げるつもりだった。


 アルカディア歴1824年5月16日。

 討伐軍はドラゴンの巣穴の洞窟の前まで来た。

 さすがにドラゴンが出入りするだけあり、口の大きな穴。直径5メートル近くある横穴だ。


「では、よろしく頼みましたぞ」

 シルヴィオ伯爵カイルが冒険者たちに頭を下げる。


「お任せください」と『ウォー・フレイム』リーダー、ガウゼス。

 同じくAランクパーティ『マルス・マリス』のリーダー、エリカとうなずき合うと、冒険者たちを率いて洞窟へと入っていった。


 この際、誰もアレックスの存在を気にしていなかった。シルヴィオ伯爵カイルは騎士団たちとの打ち合わせで忙しかったし、エレノアもさすがに緊張していた。


 唯一、ロディだけが、アレックスの姿が見えないことに気づいたが、特に注意は向けなかった。



 洞窟に突入した冒険者たちは、32人。大所帯である。その中には当然、魔術師も多い。攻撃魔術師ウィザード汎用魔術師メイジ治癒魔術師ヒーラーが何人もいる。

 すでに、道中で、それぞれAランクパーティの者が中心となって役割を決めている。


 まずは最重要なのはドラゴンの翼を攻撃すること。飛行能力を奪うことだ。

 そうすれば、例え、洞窟の外に出られたとしても、予定通り騎士団と前後から挟撃できる。


 中心となるのは攻撃魔術師ウィザードたちによる一斉攻撃。戦士は次の攻撃までの間の時間稼ぎ。

 汎用魔術師メイジ治癒魔術師ヒーラーはそれをサポート。

 そして、また攻撃魔術師ウィザードの一斉攻撃。

 これが大まかな作戦。


 魔術すら操るという長老種エルダーならともかく、ただのレッドドラゴンなら、これで倒せるはず。

『ウォー・フレイム』のガウゼスも、『マルス・マリス』のエリカも、洞窟内でドラゴンを仕留めるつもりだった。

竜殺ドラゴンスレイヤーし』の称号はぜひとも手に入れたいものである。


 洞窟は、進めば進むほどその直径が広くなっていた。自然にできたものとは思えないほどに、天井が高く、そして壁が滑らかだった。


 やがて外へ出たか、と思うほど、開けた場所に出た。巨大なホール。ドーム状になった天井。

 冒険者たちの照らす明かりに、暗闇が払われ、ホールの中央にある大きな赤い物体をあらわにした。

 レッドドラゴンは眠っていた。


 つややかな鱗が光を反射し、金属のようにきらめいている。肉食獣とトカゲを合わせたような凶悪な頭部は地についていて、その目は閉じられている。


 冒険者たちは静かに戦闘を開始した。

 ドラゴンが目を覚ます前に出来る限りのダメージを与えたい。

 攻撃魔術師ウィザードたちは、長い呪文詠唱が必要な強力な魔術を準備する。

 汎用魔術師メイジたちは、戦士や射手に攻撃補助や防御の魔術をかけていく。


 そんな中、いきなりBランクパーティ『パワー』の戦士が飛びだした。

 雄たけびをあげながら、ひとり、ドラゴンに向かっていく。


 全員が呆気にとられた。

 だが、そこは歴戦の冒険者たちだ。

 ガウゼスが飛びだして戦士の男を捕らえる。


「貴様、なんのつもりだ」

 ガウゼスは静かに怒鳴った。


「それはこっちのセリフだ。なぜ邪魔をする」

 Bランクパーティの戦士に扮したアレックスが怒鳴る。


「大声を出すな。作戦に従え」


「うるさい、放せ。ドラゴンを倒すのは俺だ」

 言って暴れるアレックス。だが、彼を捕まえているのはAランク冒険者の戦士である。振りほどけるはずもない。


 アレックスにしてみれば自分の剣がドラゴンの頭部に突き刺さり、『凍結攻撃』の加護技スキルで見事に倒す未来図を頭に描いていたところを邪魔されたのだ。怒りのあまり、暴挙に出た。


「放せと言っている。『凍結攻撃』」


 アレックスは自身を羽交い絞めにしているガウゼスのすねを蹴った。その蹴りに彼の加護技『凍結攻撃』を乗せた。ただの弱い蹴りに凍結効果が付与される。


 ガウゼスの右足が凍り付いた。

 彼の身に着けている脚絆は魔法金属の白色金属ミスリル。魔術耐性に特化した黄色金属オリハルコンほどではないが、青色金属アダマンタイトよりもさらに魔術への耐性がある。だが、神から与えられた加護技スキルは、あらゆる抵抗を無視する。加護技スキルによる攻撃を防ぐには、加護技スキルを使うしかないのだ。


 さすがのガウゼスもひるんだ。アレックスを捕まえていた手を放す。

 縛めをとかれたアレックスは、ドラゴンに向かって一直線に走った。

 剣を抜き、大きく振りかぶり、勢いを乗せたままドラゴンの脳天めがけて振り下ろす。

 

「凍れ」

 剣が当たる瞬間に叫ぶ。


 ドラゴンの真っ赤な頭部が、白く変わった。瞬時に霜が張り付き、血肉が固まる。

 確かにアックスの攻撃はドラゴンにダメージを与えた。

 レッドドラゴンの頭部はその左半分が凍り付いたのだ。


 だが、それで死ぬほど、ドラゴンはやわではない。

 ドラゴンが動いた。

 口を大きく開き、真っ赤な炎を吐き出す。

 

 灼熱の炎を間近で受けたアレックスは、灰も残さずに消滅した。

 死の瞬間まで自分が『竜殺ドラゴンスレイヤーし』となることを疑いもしなかった。


 アレックスにとっては自業自得だが、冒険者たちにはたまったものではなかった。

 まず、『ウォー・フレイム』のリーダー、ガウゼス。アレックスの加護技スキルにより、凍り付いた足のせいで回避ができなかった。

 彼のパーティの汎用魔術師メイジが防御魔術を飛ばそうとするも、間に合わなかった。

 アレックスを飲み込んだ炎を身に受け、同じく焼死。


 魔術師たちが魔力で障壁を作り、なんとか炎の勢いは弱めたものの、その代償は大きかった。

 まず、魔法陣も使わずに魔力を直接放射したことで汎用魔術師メイジ治癒魔術師ヒーラーたちが、一時的に無力になった。魔力症。思考能力が無くなり、記憶が飛ぶ。通常なら、2、3分で直るものだが、戦闘時の数分は、致命的だ。


 さらに、強力な攻撃魔術を準備していた攻撃魔術師ウィザードたち。

 せっかく完成しかけていた魔術が、炎のせいで中断することになった。魔力障壁にり弱められたとはいえ、炎に包まれれば、集中も切れる。

 彼らにしてみれば、集中していたところ、いきなり炎に包まれたのだ。驚き、動揺もする。

 おかげで、すぐに次の行動へ移れない。


 とっさに攻撃に移れたのは戦士や射手、探査師スカウトのみ。

 特に『マルス・マリス』のエリカは、瞬時に大きく跳んで、炎を回避。同時に3本の矢を弓につがえ、放つ。

 高ランクの射手は強力な加護技スキルを持つ者が多い。矢に加護技スキルを乗せれば、凄まじい威力の飛び道具を使うことができるからだ。

 アレックスが戦士ではなく、射手の道を選んでいれば、将来Bランク以上にはなれたことだろう。


 このエリカもその例に漏れず、有効な加護技スキルを持っていた。

『爆発攻撃』。攻撃当たった箇所が爆発するという単純なもの。矢に加護技スキルを付与すれば、たちどころに必殺の矢に変わる。


 エリカの放った3本の矢がドラゴンの頭部に命中。固い鱗におおわれた頭部が爆発する。

 ただ、エリカには誤算だったのはアレックスの残した『凍結攻撃』だ。これがドラゴンの左半分を凍らせており、爆発のダメージを弾いた。はからずも加護技スキルによる防御となったのだ。

 それでも大きく開いていた口腔に突き刺さった矢と右目に突き刺さった矢は、ともにドラゴンの肉を弾けさせた。少なからぬダメージである。


 並みの魔物ならばこれで勝負はついていただろう。

 だが、相手は最強の魔物と名高いドラゴン。想像以上のタフネス。

 緑色の血を流しながらも咆哮する。

『竜の雄叫おたけび』。ドラゴンが持つ攻撃の一つで、聞く者を威圧。力の弱い者ならば、それだけで気を失い、半日は目を覚まさないだろう。


 それもただの雄叫おたけびではない。凄まじい怒りのこもった雄叫おたけびである。

 殺意、憎悪、凶悪な意志による怒りの咆哮は、歴戦の冒険者たちを硬直状態にした。

 エリカですらその例に漏れず、次の攻撃のため矢をつがえていた手が止まる。


 ドラゴンが突撃する。エリカに向けて突進。エリカは自分を飲み込むうと開かれたあぎとを回避したが、その直後に振り下ろされた前足は避けきれなかった。Aランク冒険者のエリカは潰されて死んだ。


 それぞれのリーダーを失ったAランク冒険者パーティ『ウォー・フレイム』と『マルス・マリス』。それでも、崩れずになんとか体制を立て直そうと、残った者が果敢に攻める。


 戦士はドラゴンの注意を引くように、一団とは別方向から攻撃をしかける。探査師スカウトは気配を消して、ドラゴンに接近する。射手はやはり注意を引くために、動き回りながら矢を放つ。


 冒険者たちにとって致命的であったのが、汎用魔術師メイジ治癒魔術師ヒーラーの魔力症だ。作戦通り彼らの援護があれば、ドラゴン相手といえど見事な立ち回りができたことだろう。


 さらに、ガウゼス、エリカ両名の早々な戦線離脱。作戦ではガウゼスが正面から、エリカが背後に回り込み、それぞれドラゴンの注意を引き付ける手筈だった。

 その間に、『ウォー・フレイム』の攻撃魔術師ウィザードミネルヴィが、加護技スキルを乗せた高威力の攻撃魔術で大ダメージを与える。ミネルヴィの加護技スキルは『攻撃強化』。元来の威力の10倍の攻撃を与えることができる。だが、この加護技スキルがなにより有効なのは、あらゆる攻撃に効果を乗せることができることだろう。加護技スキルによる防御や回避以外を無にする、加護技スキルの乗った攻撃魔術。

 魔法耐性を無視した一撃である。

 タフなレッドドラゴンとはいえ、ミネルヴィの最強魔術『内なる刃』(体内に無数の刃が発生し、体を切り裂く)を受ければ、致命傷を負ったはず。


 そのミネルヴィは恋人のガウゼスの死により、自失してしまっていた。恋人を殺した相手に対して、怒りが沸く前に、ドラゴンの炎が再び魔術師を襲う。


 ドラゴンがその両目を失っていたことが、彼を自暴自棄に暴れさせる結果となったのだ。ミネルヴィと何人かの魔術師が炎にまかれて死んだ。


 レッドドラゴンは恐慌状態にあった。頭部を攻撃され、両目を失い、命の危険を感じていた。

 だから力の限り暴れた。自身の命を削るように炎を連続して吐き出し、洞窟内にも関わらず飛ぼうと翼をはためかせる。

 おかげで、炎は風に乗って広がり、暴風が洞窟を吹き荒れる。

 さらにドラゴンが天井に衝突したおかげで崩落。


 もはや冒険者たちに戦闘を続けることは不可能だった。なんとかして、この死地を脱出する。それしか考えらなかった。

 もちろん、それが容易ではないのだが。


 なんとか洞窟内から脱出をはかった冒険者たち。その背後に暴走するドラゴンがせまる。飛行を諦め、翼は畳んでいるが、速い。

 ドラゴンが恐れらているのは、その頑強な肉体や飛行能力もさることながら、巨体に似合わぬ俊敏性のためだ。大きな体躯を軽やかに動かすのだ。

 

 炎を吐きながら暴走するドラゴンに、潰され、あるいは炎に飲まれ、冒険者たちは死んでいった。かろうじて生き残ったのは、大ホールに踏みとどまり、なおも戦おうとした数人のみ。

 それも体には大やけどを負い、瀕死だった。


 彼らは激痛に身をさいなまれ、遠ざかる意識の中、再び、ドラゴンの咆哮を聞いた。

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