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ナナの結婚(7)

 ナナは、この件に関し、責任を感じ。知らなかったとはいえ、自分のせいでこんな現象が起きてしまった。みんな納得しているのか、このことを受け入れて喜んでいるのか。確かに、ミミは喜んでいたが、飼い主に何か伝えたいことがあっても伝えられない。そのもどかしさがストレスになったりしないか。診察室で、そのことが気になっていると。ふと鈴の相変わらず無駄のない動きと手先の器用さを見て、何か思いつき。そのことを鈴に話すと、その手があるのかとちょっと驚き、やってみる価値があると思った。


 午前9時50分を過ぎると、いつもようにナナと田中先生は、K事務室で本日のカウセリング予約内容を確認する。しかし、今日は長谷川とタマ、ミミが見学に来ている。

 見学をしたいと言い出したのはタマの方で、だったら私も見学したいと、ミミと長谷川も言い。そして、タマはどうしてもナナに聞きたいことがあった。

 本日の予約1件目は、午前10時30分からということで、ナナとタマを2人だけにしてあげようと、田中先生たちは席を外そうとすると。タマは、みんなにも聞いて欲しいと言い。畳1畳の上には、ナナとタマとミミが座り、田中先生と長谷川はソファーに座った。

 タマは、いったいナナに何を聞きたいのか。実は、あのボヤ騒ぎ件があった日から、なぜナナは人間の言葉を喋れるのか聞きたかった。しかし、なぜか聞けなかった。でも、どうしても聞きたくなり、というより知りたい。


 このことは、特定の人間だけしか知らない。田中先生はもちろん長谷川も知っていた。そのことを知りたくタマは思い切ってナナに聞いた。


 ナナは平然とした態度で、あの思い出したくない、欠落した記憶をここで取り戻したことを話し。その壮絶な過去を話し、タマは黙って聞いていたが。

「ナナ、お前は凄いな、俺にはできない芸当だな。すまなかった、思い出させて……俺はそいつを絶対に許さない。しかし、なぜそんなに前を向ける? 複雑だな、そいつを許した訳でもないのに、そっか、だから前を向けるのか、やっぱ、凄いなお前は……」

「別に、凄くはないけど、皮肉よね。だって、私、世界一頭のいい猫だから」

「確かに、そうだけど、普通、自分で言うか?」

「言うよ、もしかして、惚れちゃった?」

「バカ言うな、調子に乗りすぎだぞ!?」

「いいの、調子に乗っても、私、院長の妹だから」

「はぁ!? それは、院長に失礼だろう!? まぁ、院長だったら調子に乗ってもいいか」

「それは、ダメでしょう?」

「なんでだ?」

 なんか訳のわからない話が始まり。ナナの過去に何も言えないミミだったが、この光景を見ていると。

「あのー、私をほったらかしにしないでくれる? ナナの1番の親友は、私なんかだからね」

「ミミ、そこにいたの……? 冗談よ、冗談、ありがとね、ミミ、私も同じ気持ちだから」

「なら、いいけど……でも、まさか、猫犬兼用の手話とは、考えたわね。さすが、私の親友ね」

「問題は、人間のように指が使えないことだけど、ミミもタマも一緒に考えよう?」


 ナナは、鈴の手先の器用さを見て、この件に関して何も言えない猫や犬たちが、飼い主に何かを伝えたい場合、人間が使っている手話を猫や犬たち応用できないかと考えた。


 このあと、タマたちはナナの仕事ぶりを見て、やはりナナは凄いなと改めて思った。

 

 この3匹は、いや、この3人は、ナナの仕事の休憩時間を利用したり、ナナの休みを利用したりして、猫犬兼用の手話を一緒なって作っていた。


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