3つの超能力(3)
鈴の自宅を出てから、角野教授の運転する車は、神奈川県の山奥にある自宅に着き。車内の時計は午後8時30分を過ぎていた。
辺りは真っ暗闇だが、夜空は満天の星。角野教授たちは車から降りると、駐車場用のセンサー付きライト点き、玄関用センサー付きライトも点き。角野教授は玄関を開け、シロとナナの娘リンの足を吹き。2人は、玄関口でちょこんと座り。
角野教授は、車に積んでいたナナの娘リンの身の回りの物、特製パソコン一式、寝床、ちょっと大きめな卓上用のデジタル時計、当分の食料などをすべて床の間に運び。シロの寝床の近くに置いた。
すると、ナナの娘リンは、仏壇の前に行き。人間が手を合わせるように、立って前足を合わせ。「これからこの家でお世話になりますリンです。改めて、よろしくお願いします」、と頭を下げた。
その光景にシロは、まるで人間だなと、いつになくちょっと羨ましく思っていた。でも、リンちゃんは猫、私は犬、人間になりたいのか、そうじゃない、私たちは家族だよね。
瞬間移動能力に目覚め、初めて角野教授の家に泊まり、初めての夜を迎え、ナナの娘リンは、スヤスヤと眠っている。こんな状況なのに、なんとも可愛い寝顔で眠っている、この神経はどこから来るのか。
シロは、ちょっとあきれている様子だが、なんという度胸なのかと思い。
瞬間移動したらそのときはそのとき、と言いたいけど、言いたくないよね、やっぱり怖いよね、制御できないのは。でも、とにかく寝る、寝ないと何も始まらないって、リンちゃんは言ったけど。私に、そんな度胸があるのか。寝ててもいいよって言ったけど、さすがに寝られないよね。
10時過ぎか。お父さんは、書斎で瞬間移動訓練のスケジュール表を作成するって言ってたけど、他にも超能力があるとか、検証することがたくさんありすぎてワクワクするって、こんな状況なのに普通言うかな。魔法だったら、ワクワクっていうのはわかるけど。
そんなことより、2人は大丈夫かな。瞬間移動の訓練の中に、一緒に瞬間移動できるのか検証するって言って、ワクワクしてたけど。なんかあったらどうするの、心配だな。
シロにとって角野教授は、大切な父親。
角野教授の妻は、田舎暮らしに憧れ、7年前にこの古民家を見つけ、リフォームし、移住した。その2年後に、病気で亡くなり。その1年後に、子犬のシロが玄関先で倒れていた。そして、4年が経ち、今に至るが。
角野教授には、息子2人に孫もいる。息子2人は、角野教授と同じ獣医師になり。あの東京第一動物病院の獣医師として働き。最近、こちらで暮らさないかと息子2人に言われ。角野教授は、できるだけここにいたいと言っていた。
角野教授は、ノートパソコンを立ち上げ、画面を見ていると、ふと何かを思い。
私にはリンちゃんがいる、どこへでも行ける、孫にも会いに行ける。これじゃ、リンちゃんはタクシー代わりか、決してそうじゃない。
そうだ、いっそのことここで、3人で暮らせばいいんじゃないの。あの家にしがみつく必要はない、リンちゃんだって立派な大人だ、って言っても本人の気持ちはどうなんだろう。そもそも、院長が許してくれるのか、じゃないな、ナナたち家族に相談。まてよ、結局、私のわがまま、私の身勝手なのか。
リンちゃんと一緒に瞬間移動できなかったらどうする。それは、ちょっと悲しいけど、それでもリンちゃんとシロと3人で暮らしたい、なんでそう思うだろう。やっぱり超能力者の憧れがそうさせているのか。ないとはいいきれないが、3人で暮らしたい。
とにかく、今はリンちゃんの瞬間移動をなんとか制御できるように、瞬間移動訓練のスケジュール表を作成しないと。
角野教授は、ノートパソコンに向かい、瞬間移動訓練のスケジュール表の作成を始めた。




