3つの超能力(1)
ナナの娘リンは、瞬間移動能力を極めけば、その先に自分の進む道が見えてくると思っている。なぜそう思うのか、本当のところは、自分でもよくわかっていない。
私だけ進路が決まっていない、妹たちは決まっている。カウンセラーの仕事が嫌という訳ではないけど。ただ、私にはもっと別な何かが、私にしかできない何がきっとあるはず。よくわかんないけど、「これだ!」、というものに出合いたい。
角野教授の計画とはなんなのか。そして、ナナの娘リンの思いつきとはなんなのか。
角野教授の計画とは、ナナの娘リンの瞬間移動能力を自由に操れるようにする訓練計画。
その内容は、瞬間移動能力を自由に操れるようになるまで、角野教授の自宅で暮らすこと。
瞬間移動が発動すると、最終的に角野教授の書斎に戻ってくる。その確率は非常に高いと思われる。そして、この能力がどの程度ものなのか検証する必要がある。
例えば、1日に瞬間移動ができる回数。体にどれだけの負担がかかるのか、疲労具合を調べる。
例えば、瞬間移動する際に、触れたものは、一緒に瞬間移動することができるのか。例えば、人間とか。触れずにものだけを瞬間移動できるのか。
検証することはいろいろあるが、1番重要なことは、思った場所に行けるようになること。そうすれば、無意識に瞬間移動してしまう可能性があっても家に帰ることができればなんの問題もない。と言いたいところだが、空中に移動、海中に移動、月に移動、なんてこともないとはいえない。特に厄介なことは、眠っている時に瞬間移動する可能性もあること。命に係わる危険性がある。メリットもあればデメリットある。問題は、訓練でどれだけ瞬間移動能力を制御できるのか。
どのみち瞬間移動能力を制御できるようになる必要がある。ただ、確かに、メリットは大きい、そのポテンシャルも高い。本人は、そのことしか考えていないようだが。あんな怖い思いをしたはずなのに、まるで帰る場所があるから大丈夫とでも言っているようで。
そして、ナナの娘リンには、他にも超能力か備わっている可能性がある。それを確かめなければならない。この計画を話している時、ナナの娘リンはあることを思いついたことを話した。
ナナの娘リンの思いつきとは、3姉妹で超能力を極めること。
「さくら、さくらがもし倒木を事前に予知できていれば、遅刻することはなかった」
「何、いきなり!? 確かに、それはそうだけど、じゃあの人はどうでもよかったの?」
「誰もそんなことは言ってないでしょ!? 私ただ、超能力を極めれば、この先必ず役に立つと思ったから……」
「お姉ちゃんは、私たちを巻き込むつもりなの? 言っとくけど、私たちにそんな時間はないからね!? 1日でも早く、お母さんみたいな動物カウンセラーになりたいから……前にも聞いたけど、なんでお姉ちゃんは一緒じゃないの!?」
「……」
「ダメなんだね……お姉ちゃんは、お姉ちゃんの道を極めればいいんじゃないの!? 私たちまで巻き込む必要はないと思うけど……」
ナナの娘リンは、これ以上何も言えず。ただ、家族を守れる強い味方になると思っただけだった。




