3姉妹は超能力者(8)
午前11時40分を過ぎた頃、角野教授の運転する車はナナの娘リン宅に着き。車3台停められるがら空きの駐車場に車を停め。角野教授は、左手にはキャリーバッグを持ち、ナナの娘リンの家の玄関チャイムを鳴らし、玄関を開けると。タマが玄関口で待っていた。
「リン、大丈夫か? 体は大丈夫なのか!?」
「体!? 大丈夫だけど」
「瞬間移動して、なんともないだな? 体によくないんじゃないのか?」
「えっ!? そうなの? 瞬間移動って体によくないの?」
「違うのか?」
「……わかんない……。あっ、そうだ、教授、瞬間移動って体によくないの?」
「しまった、私としたことが……そうか、その可能性は否定できないないよな……」
角野教授は、あの計画のことで頭がいっぱいだった。そのことでナナたち家族に相談する予定だった。
結局、ナナの娘リンは、念のために鈴の所で検査を受けることになり。そのことを伝えるために、ちょうどキッチンで昼食の準備ができあがったばかりの長谷川の母親を呼び、事情をはなすと。あとの2人も診察する必要があると言い出し。角野教授たちが、車の中で噂していたことが現実になっていた。
2週前に鈴の父親がゴルフコンペでもらった最下位の景品、スクラッチくじ10枚を、「どうせ当たる訳がない」と思い。机の引き出し中に入れ、そのままになっている。このことは誰も知らない。いつもは、6人中2位の成績だった。ただ、最下位だったことは、ナナも、ナナの娘さくらも聞いて知っていた。
今朝、ナナの娘さくらが起きると、ナナに向かって妙なことを言い出した。
これは夢なの、よくわかんないと言い。鈴の父親がゴルフコンペでもらったスクラッチくじが当たっていると言う。それも1等、300万円が当たっていると。そして、よくわからないが、それを自分が言い当てた夢、妄想、その景色が頭に浮かんだと。
ナナは、その話を聞き、いたって真面目に返答した。
「もしかしたら、それって予知夢かも。或いは、予知能力っていうやつかもね。その話、あとで言ってみればいいんじゃないの? その方が、さくらもすっきりするでしょ?」
「そうだね、わかった、言ってみるね」
このあと、いつものように長谷川は、ナナたち家族と一緒に車に乗り込み。鈴の自宅に向かい、ナナたち家族を降ろしてから大学へ向かう。この時、そこにはナナの娘リンとタマはいない。
長谷川の運転する車は、いつも通う道を走らせていると。突然目の前で街路樹が倒れてきて、だめだ、間に合わないと思い、急ブレーキを踏んだ。しかし、なんの衝撃も受けていない。すぐに後ろを振り向き、「みんな、大丈夫!?」と声をかけると。「えっ!? 何が!?」と聞かれ。なんのことだがわからないようで。ただ、ナナの娘愛だけは、後部席の真ん中から、街路樹が倒れてきた光景を目の当たりにし、何か透明なものが見え、それがこの車を守ったと言う。
街路樹にぶつかるはずの車がふつからなかった。この車には、運転支援機能はついていない。
いったい何が起こったのか。長谷川は車を降り、車の前に行き、街路樹がぶつかっていないか確認すると。街路樹と長谷川の車の距離は、約50センチのところで停まっていた。
すると、長谷川の車のすぐ後ろの車に乗っていた女性が車から降り、長谷川に駆け寄り、怪我はないかと聞き、いきなりあの透明な球体は何にと聞かれ。この女性も、だめだ、間に合わない追突すると思い、急ブレーキを踏んだ。しかし、なんの衝撃も受けていない。この車にも運転支援機能はついていない。この女性の車と長谷川の車の距離は、約50センチのところで停まっていた。
困惑する2人だが、片側1車線の道路を倒木がふさぎ、後続の車は次々とその場をUタウンして行く。長谷川は、とりあえず警察に街路樹の倒木のことを連絡し、被害状況を伝えると。ドライブレコーダーの映像データ、SDカードの任意提出を求められ。それに素直に応じ、長谷川だけがその場に残ることになり。もう1人女性は、車に乗り込み、迂回して会社へ向かった。
警察が到着する時間は約20分。その間に、長谷川は鈴に連絡を入れ事情を話し、1時間は遅れると告げ。急いでナナたち家族をキャリーバッグに入れ、運転席に座り。ドライブレコーダーのSDカードを、大学で使うノートパソコンにコピーし、スマホを見ると、あと約10分で警察が到着する。
長谷川は、あの女性が言っていた透明な球体とはなんなのか気になり、SDカードの中身を確認にすると。そんな映像は映っていない、そんな痕跡も見つからない、いったいどいうことなのか。そのことをナナの娘愛に話すと、確かに透明な球体がこの車を包んだと言う。
なぜ映像が映っていなかったのか、いろいろと疑問は残るが。長谷川は、あの時、「木にぶつかる」、そのことで何も見えていなかった、そういうことなのかと思い。とりあえずドライブレコーダーに車内撮影機能がついてなくてよかったとホッとしていた。




