ナナたち、墓参りに行く(6)
午前10時30分、天気は快晴、外気温は20度。ナナの家族と鈴の家族は、鈴が運転する車に乗り込み。初めてナナの子供たちは車に乗る。
ナナの娘のリンは、ドライブボックスの中でちょっとワクワクしていた。
お母さんは夢の中でリン先輩に会い、お墓の前で話をしたと言ったけど。もしかしたら、今度は私と話しができたりして。名前を受け継いだ私としては、できることならリン先輩に会って話をしてみたい。なかなかの根性の持ち主だと聞くけど、ストレスに弱いとは。リン先輩、相当悔し想いだったんだろうな。
一方、ナナは仏壇の前で亡くなったリンに謝ってはいたが、お墓の前でもう一度謝るつもりでいる。それと、もし亡くなったリンが化けて出て来たら、ひたすら謝る。そして、角野教授が持ってきたお供え物を切り札に使う。ナナはそのことに感謝しているけど、ちょっと卑怯な気もするが、亡くなったリンが物につられるタイプではないと思っていた。
鈴の運転する車は、自宅を出てから15分が経ち。お寺の駐車場に着き、辺りを見渡すと、車は数台しか停まっていない。ナナたち家族は車酔いもせずに、キャリーバッグの中にそれぞれ入り。鈴は住職に挨拶をしに行き。鈴の両親たちは、先祖の墓のある場所に行き。辺りを見渡すと、人の気配はなく。鈴の両親は、キャリーバッグを3つ地面に置くと。ちょっと窮屈そうな3姉妹は、なんか楽しげにしていた、1人を除いては。
「リン姉ちゃん、リン先輩の気配感じる?」
「……気配は感じないね、さくらは感じる?」
「感じるよ、って言ったら、それってホラーだよね。冗談だよ、リン先輩はホラーじゃないし」
「お姉ちゃんたちやめてくれる? 私が怖い話嫌いだって知ってるでしょ?」
ナナの娘愛だけは、そういった話は大嫌いだった。ただ、鈴を守りたかったリン先輩は尊敬している。
その10分後、鈴の両親が墓の手入れが終わる頃、鈴が墓の前に来ると。墓は綺麗になり、花を飾り。鈴の手には、ナナのお供え物が。
「ナナ、これ、覚えてる……? まさかこれが1番好きな猫缶だったとはね。限定スペシャルミックスの猫缶……。これで、今回の件は許してね」
鈴は、限定スペシャルミックスの猫缶を墓に供えた。
命日を忘れたナナのことを果たして、本人はどう思うのか。そんなことは、本人に聞かないとわからないが。おそらく、命日を忘れても、誕生日を忘れるのは嫌だが、自分のことを忘れていなければそれでいい。そう思っているかもしれない。
この限定スペシャルミックスの猫缶は、17年前に1ヶ月間だけ製造された限定品。今は製造されてないが、レシピは保管されていた。当時の価格は1万円。亡くなったリンの十七回忌法要と知っていた鈴のファンクラブたちは、3ヶ月前から、復刻版ができないかメーカー側にかけ合い。その熱意に押された社長は、特別に30缶、復刻版を作ることを決めた。但し、このことは口外しないこと。
結局、亡くなったリンの声を聞くことはなく。みんな墓の前で手を合わせ、十七回忌法要は終わり。この日の夕方、長谷川の家族も鈴の自宅に集まり、ナナの誕生日会が始まると。ナナへの誕生日プレゼントは、限定スペシャルミックスの猫缶30缶と、みんなの想いだった。
誕生日会が終わると。ナナの家族は、半年ぶりに長谷川の自宅に帰る。そして、ナナの子供たちは、初めて自宅に帰ることに、なんの不安もなかった。ただ、鈴と鈴の両親と会えなくなるのが、ちょっと寂しく感じていた。




