ナナたち、墓参りに行く(5)
ナナが鈴の家に来て1年と3日が過ぎ。10月10日、今日はナナの2歳の誕生日を迎え。人間の年齢でいえば23歳。ナナは、子育てに夢中で自分の誕生日をすっかり忘れていた。
午前6時30分を過ぎ。床の間では、ナナたち親子は、猫用の座布団の上でまだ寝ている。しばらくすると、1番にナナが目を覚まし起きると。日課である仏壇の前でちょこんと座り、前足を合わせ、「リンちゃん、おはよう」と声をかけ、リビングに行くと。鈴の母親が朝食の準備をしている。
「ナナ、誕生日おめでとう」
「誕生日……!?」
ナナは、亡くなったリンの命日をすっかり忘れていたことに気づき、急いで仏壇の前に行き、ちょこんと座り、前足を合わせ。
「リンちゃん、ごめんなさい……。私、命日のことすっかり忘れてた……」
この時、目が覚めて起きていた娘のリンは、初めて見たあんな哀しげな母親の後姿に。
「お母さん、大丈夫?」
「……」
娘のリンは、母親のそばに行き、声をかけ。
「許してあげる、ってさ、リン先輩ならそう言うと思うよ」
「……そうかな、なんで忘れたんだろう?」
「それより、お母さん、誕生日おめでとう」
「誕生日!? そうだったね、ありがとう」
このあと、ナナたち家族はリビングに行き。ナナは、亡くなったリンの命日をすっかり忘れていたことを鈴と鈴の両親に話し謝ると。鈴は冗談を言っていた。
「じゃ、忘れた罰として、誕生会はなしということで」
「えっ!? 誕生日会!? わかった、罰はお受けします」
「じゃ、許してあげる、ってさ、リンならそう言うと思うよ。ということで誕生会はやります。でも、サプライズだったのに、2つも忘れるとは、やっぱり猫だね」
「はぁ!? それどういう意味? 猫は記憶力がいいんだからね」
「知ってるよ、それくらい、特にあんたはね。口出しはしないけど、もう少し私たちを頼ってもいいんじゃないの?」
「……そうか、そういうことか。わかった、これからは気をつける」
「さすが、私の妹ね」
亡くなったリンの墓参りは毎年、決まった時間に鈴だけが墓参りに行く。しかし、前回はナナも一緒に墓参りに行き。今回は、ナナの家族と鈴の家族みんなで行くことになり。そうしたいと言い出したのは、ナナの娘リンだった。
鈴は、仕事を午前中休み。午前10時30分に自宅を出ると、お寺が管理する墓までは車で15分かかる。
午前9時50分を過ぎ。鈴は、自宅の駐車場で墓参りの準備をしていると。2週間ぶりに角野教授が鈴の自宅に訪れ、鈴に気がつき。
「院長、ナナさんの誕生日おめでとうごいます。これ、ファンクラブからナナさへの誕生日プレゼントと、リンちゃんへのお供え物です」
「お供え物……!?」
角野教授は、右手に持っていた手提げの紙袋を鈴に渡し、ナナに会わずに帰って行き。最近、角野教授は、ナナの育児を邪魔するような気がして、ナナたちに会わずにいた。
鈴は、亡くなったリンのお供え物が気になっている。今まで、鈴のファンクラブたちから自分への誕生日プレゼントをもらうことがあっても、こういった物を受け取ったことがない。気になり、紙袋を開けて見ると驚いた。
「……どうして、こんな物が……たまにあるのよねー、こういった奇跡が。あの人がいると」
鈴は、思わず目頭が熱くなっていた。




