ナナたち、墓参りに行く(3)
周囲の飼い主たちに、何か悟られないように気をつけながら、ナナたち5人の健康診断が始まって1時間30分が過ぎ。
3姉妹は、わりとおとなしく健康診断を受け、それぞれの健康診断が終わり。診断結果が出るまで1時間くらいかかるため、長谷川と一緒にナナたち5人は、とりあえずK事務室で待つことに。
ナナは、3ヶ月と5日ぶりにK事務室に入り、なんか懐かしいなと思いながら、畳1畳の上にちょこんと座ると。その隣にナナの娘さくらと愛も一緒にちょこんと座り。ナナの娘リンだけは、辺りを探索するようにちょこちょこ歩き周り。長谷川とタマは、ソファー座っていた。
ただ、3姉妹を除いて、ナナたちは、どんな診断結果が出るのかちょっと不安でもあったが。ここには、お姉ちゃんがいると思えば、大丈夫と思えてくる。昔、鈴はこう言っていた「私、失敗しないので」と。どこかで聞いたセリフを真似していたような。
一方、診察室では、鈴と角野教授が診断結果を確認している。タマは、年齢のわりにはいたって健康状態は良く問題はない。3姉妹は、ナナの遺伝子を受け継ぎ、人間の並みの脳を持ち、喋ることもでき、健康状態もすこぶる良好、問題はない。ナナの健康状態もすこぶる良好、問題はない。
ただ、人間が作り出した猫ということもあって、日本で最大規模の東京第一動物病院の元院長の原西は、極秘でナナの遺伝子解析を行っていた。その目的は、ナナの寿命について。もちろん、ナナと鈴の同意を得ている。
原西の次男が逮捕され、数ヶ月が経ち。東京第一動物病院は、被害者としてこの事件には関わっていないということで、今も原西の長男、原西院長が頑張っている。しかし、原西としては、うちの次男がとんでもない事件を起こし負い目を感じている。
そんな原西に、ナナは負い目を感じる必要はないと言い。今まで通り、鈴の父親の親友でいて欲しいと言う。しかし、あの逮捕後、一度もナナたちの目の前には現れていない。ただ、ナナたちと繋がっていたものは、ナナの命の重さだけだった。
そして、先ほど原西から鈴へ連絡があり。ナナの寿命は、おそらく猫の平均寿命15歳を遥かに超え、猫の最高齢38歳以上生きられる可能性があると言う。それもかなり高い確率だと。
ナナは、心のどこかで自分の寿命は短いかもしれないと思っていた。しかし、角野教授は、ひょっとするとナナの寿命は、猫の平均寿命15歳の2倍はあるかもしれないと、獣医師の勘が言っていると言っていた。
このことで、ナナの娘たちにもその可能性があると言う。ナナは、これで一安心すると、ナナが仕事で使っているパソコンから、原西へメールを送った。
そこには、原西への感謝の言葉と。あなたは、あの事件とは関係ない。私をあの事件から解放してください。そのために、あの日、お父さんと一緒に行けなかったゴルフをまた一緒に行ってください。お父さんもそれを望んでいます。こんなことで、お父さんの親友を失いたくはありません。私の切なる願いを聞いてください、どうかお願いします。
すると、その数分後、原西からメールの返信が届き。わかりました。来週にでもゴルフの続き、ご連絡します。その時、ナナさんにお会いしたいのですが、よろしいでしょうか。また、いつものように、あいつと話せますか。
その返信にナナは、「大丈夫です」、と一言書いてあった。
それから一週間後、原西は、鈴の自宅の床の間に座り。その前には、鈴の父親とナナが座り。
「ナナさん、幸一、本当に申し訳なかった……。もう一度あの日からやり直したい。よろしくお願いします」
原西は、深々と頭を下げ。
「貴志、相変わらずだな、お前は!? けじめは受け取った、許してやる。だよな、ナナ?」「お父さん、そのセリフ、私が言うやつじゃないの。けじめはけじめね、許してあげます」「ありがとうございます……。おそくなりましたが、ナナさん、結婚、出産おめでとうございます……。この小切手に好きな金額を書いてくだい」
畳の上に、差し出された小切手が1枚。
「じゃ、1億でお願いします?」
「ナナ、調子に乗り過ぎ!?」
「だって、見たいじゃないの、1億円を!?」
「確かにそうだな、じゃ、1億で」
「……なんかいいですね。羨ましいなー……じゃ、これ、少ないですけどお祝いです」
原西は小切手をひっこめ、ご祝儀袋を差し出し。鈴の父親は、よかったと思い、たまにこいつの冗談はわからない。ナナは、ちょっと期待していたが、ご祝儀袋の厚みを見て、遠慮なくいただいた。
このあと、2人はいつものようにゴルフに行き。100万のご祝儀に、鈴の父親も遠慮なくいただいた。




