ナナとタマの新しい生活(3)
休憩をはさみながら、鈴たちを乗せた送迎用のバス2台は、午前11時40分に結婚式場の鎌倉の別荘のすぐ近くの駐車場に到着し。みんな静かにさりげなく結婚式場へ歩いて移動すると。いかにもテレビドラマで見たような広い庭のお屋敷が現れ、庭には桜が満開を迎え。辺りを見渡すと木々たちに囲まれ、森の中の一軒家と言う感じで、この庭で結婚式を挙げてもナナの存在がバレることはないと思うが、一応、パーティーという名目になっている。
本当は別荘の中で結婚式を挙げる予定だったが、ナナの要望で結婚式を挙げるならこの庭でとなり。お昼を過ぎ、ナナとタマは結婚式用の特注の服装に着替え。2人は、ちょっとお行儀が悪いが、白の丸テーブルの上にちょこんと座り。2人の前に鈴が立ち、誓いの言葉を交わした。
「2人とも末永く幸せになりなさい。そして、私の両親を見本にしなさい、わかった?」
「わかった」
「ナナ、タマ、結婚おめでとう……! 婚姻届はいらないわよね、人間じゃないし」
「大丈夫、タマは私を絶対に裏切らないし、私もタマを絶対に裏切らない。そうだよね、タマ?」
「なんだ、そのくだらない質問は? あたりまえのことを聞くな!?」
「そうだよね。私、今以上に幸せなってみせるからね、タマと一緒に、あっ、そうそう、お姉ちゃんもね」
「私は、ついでか? いいんじゃないの」
「タマは、どうなの?」
「そうだな、俺は猫だけど、どうやらナナに染まったようだな、今以上の幸せか、いいんじゃないの」
「じゃ、決まりね……。皆さん、私たち今以上に幸せなるので、これからもよろしくお願いします!」
この時、というか、長谷川は複雑な心境だった。なんか彼氏に振られたような、そういうのではないけど、2人には幸せになって欲しいけど。タマたち、私のことをほったらかしにしないでよねと、ちょっとだけすねていた。
ナナとタマは、深々と頭を下げ。「結婚おめでとう!」と、割れんぱかりの祝福の拍手が起こり、結婚式が終わり。続いて披露宴が始まった。
各テーブルには、さすが上流階級というような料理がテーブルに並び。ナナとタマのテーブルにも特注のスペシャル猫缶が皿に盛りつけられ、2人は美味しそうに食べ始め。
「ナナ、このご飯凄いな、毎日こんなご飯を食べてるのか?」
「まさか、今回だけだよ」
「俺は、カリカリ派だけど、猫缶も美味しいな……」
「でしょう? 私は、猫缶派だけど、お姉ちゃんがたまに言うのよ、歯が弱くなるって、食事はバランスよくだって」
「バランスが大事か、確かにそうだな、さすが院長だな」
「まぁ、そうなんだけどね、たまにうるさいのよね」
ナナは、辺りをキョロキョロと見渡し。近くにお姉ちゃんがいなくてよかったと思い、昼食を食べ終わると。鈴のファンクラブの一人、会員ナンバー1番の元リーダーが、ナナのところに来ていた。
「ナナちゃん、お願いがあるんだけど、いいかな?」
「何、お願いって、あっ、もしかして、お姉ちゃんの写真を撮りたいとか?」
「ナナちゃん、どうしてわかったの? お願いできないかなー」
「そういうのは、本人に……仕方ないなー、今回だけだよ……」
このあと、今回はおめでたい席ということで、特別ということになり、アイドル並みの写真撮影会が始まり。他の家族たちは、いったい何を私たちは見させられているのかと思いながら写真撮影会を見ていた。
本来ならナナとタマの写真撮影会だが、もしスマホでナナの写真を撮り、その写真を誰かに見られる訳には行かない。ナナを守るたには、ナナの存在を隠し続けるしかない。
結果的には、ナナとタマにとっては、記録に残らない結婚式と披露宴だったが、2人の記憶には残っている。そして、ここにいるみんなの記憶にも。




