実戦は実力差を嫌と言う程浮き彫りにさせるよね
ズヴィッチに連れられフィールドに出た。
学校の実習で何度か出た事はあるけれど、本格的に外に出るのは生まれて初めてだった。
「危ない! 下がってなさい!」
僕がボーっと周囲を眺めていると、ズヴィッチの鋭い声がした。
驚いてのそのそと振り返ると、彼女は剣に付着した血を拭っている途中だった。
「ほら、足元。
大蜥蜴よ。
マヒ性の毒を持ってるから気を付けてね。」
よく見ると草むらに首を切り落とされた1メートルほどのトカゲが転がっていた。
ん?
この一瞬で斬ったのか?
「ああ、大蜥蜴は先手さえ取られなければ大したモンスターじゃないわ。
私が駆除するから、見つけたら教えて頂戴。」
ズヴィッチは器用に大蜥蜴の胸ヒレを切り分けると僕に渡す。
「それギルドに持って行けば討伐報酬が5000ウェン貰えるわ。
但し、私達は登録していなから受け付けて貰えないかもね。」
『ズヴィッチは僕と違って強いんだから、冒険者ギルドに登録すればいいのに。』
「やーよ。
私、冒険者は嫌いなの。
あんな連中と一緒にされるくらいなら死んだ方がマシよ。
これはザコップが持ってなさい。」
そう言いながらも、ズヴィッチは周囲をキョロキョロ見渡している。
昔からこの子は何を考えているのかよくわからない。
ただ、僕とは真逆で何でも一人で出来てしまうのは相変わらずである。
「ザコップ。
こっちへ来て。」
大蜥蜴の死体に夢中になっていた僕がふと気が付くと
ズヴィッチは、ずっと先に移動していた。
僕はノロノロと追いかける。
「単独行動中のスライムを発見したわ。
見ててあげるから倒しなさい。」
ズヴィッチが指した方向には中型犬サイズのゼリーの塊がウネウネ動いている。
教科書では何度も教わったが、近くで見ると結構デカいな。
僕はヒノキの棒を振りかぶってスライムを狙おうとするが、気配を読まれたのか逃げられてしまう。
僕なりに急いで追いかけるが中々、追いつけずに他の冒険者グループと鉢合わせてしまった。
「ん?
君も冒険者?
このスライムを追いかけてるの?」
冒険者と言っても、僕より数年先輩くらい雰囲気である。
『あ、はい。
今日が初フィールドなんで。』
「ああ、それでスライムを狙ってるんだね。
確かに最初期のレベリングなら単独行動中のスライムが無難だろうね。」
お兄さんたちは、そう言ってスライムの逃げ道を塞いでから
「ほら、早く仕留めな。」
と促してくれる。
よーし、頑張るぞ!
『えい! (ペチッ)』
全力でヒノキの棒を振り下ろしたが、スライムの動きに変化がない。
お兄さんたちが
「え? スライムって一撃で倒せない事とかあるの!?」
と絶句している。
どうやら仕留め損なって良い相手ではないらしい。
『なら、もう一度だ!』
気を取り直した僕がヒノキの棒を振りかぶると、プルプル痙攣していたスライムが突然僕の腹に体当たりして来た
ドスン!
『ぐはっ!』
鈍い音がして世界が不意に暗転する。
ズヴィッチやお兄さん達の怒号が聞こえたような気もするが覚えていない。
僕の意識は暗い闇の中に沈んでいった。
【ステータス】
名前:「ザップ」(本名:ザコプット・ザグトベルト・ザレガノアス)
レベル1
HP 5 (10)
MP 3 (6)
腕力 3 (6)
魔力 2 (4)
器用 5 (10)
知性 5 (10)
速度 4 (8)
幸運 6 (12)
スキル:5割引き
効果:常時全ステータスが50%に半減するデバフが掛かる
このデバフは取得経験値や成長率、社会的評価にも適応される。
所持金:1万6000ウェン
債務 :40万円 (亡母と自身の人頭税として)
※月末までに未納の場合は鉱山奴隷落ち)
装備 ヒノキの棒・ポーション
名前:「ズヴィッチ」
レベル12
HP 156
MP 099
腕力 078
魔力 054
器用 098
知性 068
速度 121
幸運 017
スキル 「なし」